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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第一章 二人旅編
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6、羽休め

氷柱ラ・フロル


ヴァーテが詠唱する。

リーラの目の前には氷の塊が十本ある。くる。


火の渦ル・ワーム!」


氷は全て溶けて、蒸発した。いやまだ、一本生きてる。


「ぐぁっ」


鈍い音と共に一本の氷柱はリーラの肩を貫通した。

ぼたぼたと血の塊が肩から流れる。


「まだ、遊べるでしょ?」


ヴァーテはリーラを見つめて、動かない。

その間にリーラは一歩下がる。ヴァーテはその間に新しい魔術を生み出している。


「悪い、遅れた」


ベルが横から現れた。

ローブが汚れ、少し傷を負っているようだ。


治癒ラ・レイ

「サンキュ」


リーラがかけた治癒は二人ともに作用し、完全に傷を癒した。

その流れのまま剣を抜き、ベルはヴァーテに向かって、走り出した。

詠唱を止めれられれば、勝てる。

斬りかかろうとしたその瞬間、


水の結界ラ・シム


剣から火花が散る。軋む音がする。球状の結界だ。硬い。しかし、ヒビが入っている。

多分、水の設定をいじって固さを変えているのだろう。

ベルは思わず笑いが漏れた。


「それはズルだろうが」

「褒め言葉かね」


不敵そうに笑ったヴァーテは結界の内側で手を開いた。

まずい、くると感じたベルは咄嗟に後ろに下がった。


水の光線ラ・レラ


ヴァーテは手のひらから先ほどのビームが放たれる。

それはベルが先ほどまでいた隣の木をへし折る勢いだった。

ヴァーテは結界に囲まれたまま、宙に浮かぶ。


「なんで内側からは撃てるんだよ!」

光線ラ・ルーシャ


肩を抑えながら、リーラの放ったそれは、ヴァーテの結界に反射し、地面に着弾した。


「ダメだこりゃ」


リーラも何故か笑ってしまった。

Bランクいや、それ以上の実力だこいつは。ルーキーが挑んでいい相手じゃない。


「次はどうする?」


水の結界の中で宙に浮かぶヴァーテは、いつでも水ビームが出せるように手のひらを向けていた。


「退くぞ!」


ベルは叫び、リーラは片手でヴァーテへ杖を向ける。


炎の渦ル・ワーム

水の光線ラ・ルラ


リーラが放った炎をすぐにヴァーテが消火する。

しかし、もうそこに姿はない、いや見えない。湯気で何も見えないのだ。

もう一度水光線で視界を晴らすが、もういない。


「退却ねぇ」


周りに気配がなくなったあと、結界を解きヴァーテは笑った。


「また会えるといいけど」


一方その頃、ベルたちは少し遠くの木の下で休憩をとっていた。


「リーラ生きてる?」

「うん、まだ」


二人は震えながら、影のより暗いところに行こうとする。

光線が掠ったベルの腕を治癒して、リーラは震える足を落ち着かせた。


「早く、近くの村を探そう。あんなのにまたあったら、死ぬよ」


体の震えがまだ止まらず、思わずカタコトになってしまっている。

ヴァーテは手加減をしていた。肩を撃ち抜かれたリーラを追撃しなかったし、ベルを殺す気で水光線を打たなかった。

両者の間にあるのは、圧倒的な実力と経験。あんな高度な魔術を今までに見たことはない。

先ほどまでヴァーテがいたところを見つめるが、あの凶悪なまでに多い魔力は感じられなかった。

どこかへ、去ったのだろう。いや、逃がされたのだ。

ローブの汚れを払ったベルはリーラに言った。


「…よし、行こう」


二人はしばらく辺りを警戒しながら進んでいたが、林を抜けた先は少し気が抜け、会話し合いながら、草原をただ歩んで行った。

結局日が暮れる前に村にたどり着けた。


この村の名前はラレア村というらしい。衛兵が教えてくれた。


「これ、人に声をかけた方がいいよね」

「多分ね」


二人はオドオドしながら畑の近くにいた、小太りの中年のおじさんに語りかけた。


「あの」

「んん、なんだいお二人さん。冒険者かい?」

「えぇ、まぁ」

「だいぶやつれた格好してるじゃないか、どうしたんだいそれ」


そう言われ、二人は自分の格好を見渡す。

初めて二人は自分がヴァーテとの戦闘で汚くなっていたことを認識した。


「さっきここら辺の魔獣を退治しましたからね。その時のかも」

「ふーむ、まぁ、そんなこたいい。こんな時間だからね、腹も減ったろう、どうだ?俺の家に夕飯食いにこないか?」

「え?いやいや、いいですよ、ここら辺の宿がどこか教えて欲しくて…」

「それなら、尚更我が家に来なさい。ゆっくりしながら聞くほうが、耳に入るってもんよ」


推しても引いてもこの農夫はどうしてもこの二人を家に入れたいそうだ。

数分の格闘の末、二人はおとなしくお邪魔することにした。

農夫の家への道を歩きながら、


「本当に、すみません…」

「何、俺が無理やり誘ったんだ。おとなしく奢られてくれ」

「奢るって…」


どうやら、無理やりという自覚はあるらしい。

この村は田畑が多く、住宅地までの距離が少しあるので、この村について色々尋ねることにした。


「この村の周りって、魔獣とかいるんですか」

「いるも何も、この村はこの地域で一番魔物による被害が大きいところだよ」

「へぇ、討伐の依頼とかはありますか?」

「金に困ってんのかい?いくらでもあるよそりゃ」

「じゃあ、明日からぜひ僕らにください」

「商売上手だねぇ」


ケラケラと笑う農夫はとても楽しそうだ。

なんとなく、この人はいい人だなと思った。


「お、着いたよい」


農夫が指差す先には、丘の上に聳え立つ、少し立派な家があった。

農夫改め、村長の家の扉が開かれる。


「帰ったぞー」

「おかえりなさーい」


女の声と二人ほどの子供の声がした。


その日は食事をいただき、宿へ移動し、二人別々の寝室で眠りについた。


二人とも長らくベッドに寝転んでいなかったので、その日は死んだように眠った。


〈裏話〉

•魔族の飛行

魔族は人間と違い、魔術を使わずに飛行することができる。原理は不明。

どちらかというと、飛行より空中歩行の方が似合っているかもしれない。

階段のように、どこまでも空へ登ることができる。魔人はこれをできない。


•ヴァーテ

ヴァーテは魔族の中でも決して弱くない部類であり、なんなら上位レベルにある。

魔族にとって水魔術は最も想像の限界の域を超えない平凡な属性と言われているが、ヴァーテはその常識を覆したそう。


結論:ヴァーテはすごい!

コーヒー苦手。

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