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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第一章 二人旅編
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5、関所と不意打ち

「右に10体!前方に7体!」

「了解!」


リーラが剣を抜いたベルに叫ぶ。自身も杖を構える。

目の前にはハイウォルフが17、いや


「あ、後方に3体!」


20体いる。


光線ラ・ルーシャ!」


リーラの杖から光線が後方に放たれる。しかし、スピードは遅く、ハイウォルフ三体は手前で飛び上がった。

しかしそれを読んでいるリーラ。

風が起こり、風の渦リ・ラームが放たれる。

ハイウォルフに向けて放ったそれは、光線を巻き込み、光線は不規則な軌道になってハイウォルフ三体を連続で貫いた。

しかしこの程度ではハイウォルフは死なない。だが、怯んだ。


「っし!」


すでに勝利を確信したリーラは魔獣に杖を向け、火の渦ル・ワームが放つ。

炎に巻かれ、息たえたハイウォルフを見守り、すぐに振り向いた。


「ベル!」


状況はよくない。

ベルはハイウォルフを5体ぐらい斬り殺したが、まだ多い。ジリジリと後退している。


「リーラ!光線を!」


頷いたリーラは姿勢を低くし、間髪入れずに光線を繰り出し、杖を振る。ベルはもちろん、ハイウォルフはジャンプをしていて光線をモロに喰らわない、が。


「ナイス」


ジャンプの前に構えに入っていた剣士は逃げ場のない魔獣を次々と切り伏せた。

残りの4体も殺して、


「終わったー」

「うーナイスー」


地面に倒れ込んだリーラはちょっと息切れしている。

この症状は魔力切れである。こうなると水をかけられた菓子パン顔のヒーローの如く、力が出ないのである。

混合魔法は普通の魔術と違い、使う魔術の数も、一つ一つの魔術にこめる労力も全然違うので結果、魔力の消費が激しくなる。


こうなると、少し休憩しないとまともに走ることすらできなくなる。

リエルネールにおいて、リーラの魔力切れは全員休憩の合図なのだ。

まぁ二人だけど。


「リーラぁ、肩噛まれたから、治癒頼む…」

「鬼か貴様は」


ベルは上半身だけ立ち上がり、肩から出ている血を止血しながらリーラに言った。

関所に着くまでにこんな感じの戦いを何回もしてきた。

その中には、Dランク魔獣ブルーベルの集団もいた。こいつは顔だけフクロウの鷹のような姿をしている魔獣だった。

リーラが繰り出す光線や、風魔術をことごとく回避し、結果、暴風で叩き落としてベルが斬ると言う戦法に落ち着いた。


「冒険者カードを見せてください」


関所では冒険者カードを身分証として見せるらしい。Fランクということを驚かれたが、定住地が決まっていなかったので、強いパーティーだとみなされ、国境を越えることを許可してくれた。


「なんでこんな長いんですか?」


ベルが槍を持つ衛兵に尋ねる。長いというのは時間である。ポケットの中ならともかく、荷物まで確認され、30分弱で初めて通行を許可された。


「最近、ここら辺には盗賊が蔓延っているらしいからな、先週の話だが念のため、な。ほいこれ」

「はぁ」


気のない返事をしたのはリーラ。衛兵から冒険者カードを返してもらい、ようやく新天地、ライレに足を踏み入れた。

とは言っても景色は何も変わらず、村がある方角まで、ひたすら魔獣を倒しながら歩いて行った。

国境を超えてから3日が経った。

林の中に入り、日が西側に差し掛かった頃。


「っ!」


悪寒。ベルとリーラが同時に感じた。


「誰だ」


ベルがよく響く声で、冷静に言った。

なんだこれは。魔獣とは違う気配を感じた。

不気味に思ったベルはもう一度叫んだ。


「出てこい!」

「…すみません」


ベルは声が聞こえた横を見た。

女だ。そこには女がいた。黒い服をしている。

ベルは一歩下がる。こいつ気配がしなかった。


「道を訪ねたくて」


少しの間。


「俺らもここ、初めてきたんですよ、すみません」


口内にある唾を飲み込み、いつでも動けるようベルは、左足を一歩下げた。

だが、女も一歩引き下がった。


「そう…じゃあいいや」


不気味な女は林の奥へ踵を返し、去っていった。

さっきより長い沈黙。


「なんだったんだ、あい…」


ベルがあいつと言おうとした時、


「しゃがめ!」


リーラの叫ぶ声。

木々が折れる音。

あともう一つ、なんだこれ。水?


振り返った時には遅かった。


冷たいと思った次の瞬間、ベルは5メートルほど飛ばされていた。


痛い。

冷たい。

暗い。

地面だ。

擦り切れている。

なんだこれは。


「ベル!」


耳鳴りの中、リーラの叫ぶ声が聞こえる。

よかった、リーラは避けたみたいだ。


「受け身を取ったね、運動神経がいい」


さっきの女の声だった。

女の周りには水の塊がそこらじゅうに浮いている。


「私にはできないよ、羨ましい」

「誰だお前は!」


リーラが叫ぶ声がする。あと、女の笑う声。


「ん、私かい?」


目が霞む。立ち上がらなければ、早く!早く!


「私は魔族のヴァーテだよ。初めましてだ」


視界の端に映った女の目は黒に染まっていた。


〈裏話〉

•魔族

魔族は魔術が得意な、空を飛べる生き物。

群れることはほぼない。


•ヴァーテの魔術

ヴァーテがベルに使ったのは、「水の光線ラ・リラ

魔術の中に魔力を集中させて狙った方向に解き放つという、極めて高度な技で基本的に杖を使う人間には使えない。

リーラが使う「水の渦スト・ローム」の上位補完

この作品の魔術の詠唱めんどくさい!

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