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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第4章 魔族の思惑編
56/63

52、アリラ籠城-不運-

一方、リエルネール。


治癒(ラ・レイ)


レノフが自身の脇腹の傷を治癒で治す。

そして二人の前には、ギリギリ地面に風の渦を展開し、生き残ったベルとリーラがいた。


「ふぅーっ」


ベルが深くため息をついて口を開く。


「あぶねー、なんだあれ」

「魔力からして、多分魔族だよ」

「え、魔族?」


リーラが頷く。

魔力は回復しているものの、精神的な疲労で既に疲れている。



てか、なんでアリラに魔族がいるんだ?

だからアリラは籠城しているのか?


てかこんな状況、前にもあったな。


「魔王かな」

「え?」

「二人目の魔王が誕生しているかもしれない。多分、他にも魔族がいる」


ベルはリーラの顔を見て、嘘ではないことを理解する。

何を思ったのか、顔をあげて空を仰ぐ。


「…また魔族?」

「だね、お母さんが心配。先に住宅街に行こ」

「わかった師匠」


リーラが立ち上がるのを見て、ベルとレノフも立ち上がる。


多分、魔族は三人が死んでると思っている。

行くなら、今しかない。


ベルが腕を伸ばして、歩き出す。


「んじゃ、行きますか」

「ん」


リーラとレノフも杖を持って静かに住宅街へ向かった。


ーー


カルネル魔王城にて、


火の魔族ヴィアルムが壁にもたれかかりながらベットの上の、寝起きの魔王ネルフェスに語りかけていた。


「そういや、ディレンはリレーシャの辺りで街を占領したらしいよ」

「…何故だ?」


ネルフェスは右目の目尻を擦りながら、問う。

まぁ、大体理由はわかるが。


「多分、お前を殺すために魔族を集めてんだと思う。リレーシャだから、多分キラクトも居る」

「そうか」


ネルフェスは自室のベットから立ち上がり、出口の扉に向けて歩き出す。


「なんで、あいつは俺を殺したいんだろうな。一回負けたろうに」

「…多分、そういうとこだろ」

「ん?」


この二人、上司と部下の関係だが、なんだか人間の、友達のようである。


廊下に出たネルフェスをヴィアルムは追いかける。


「そう言えば、フェリオンはどこに行った?最近見ないが」

「さぁ、どっかの部屋に篭ってんじゃないか?」


二人は縦並びで歩きながら、外へ向かっていた。


ーー


一方、リエルネール。

アリラの街を魔力をなるべく隠蔽しながら歩く。


いろんな家を見回ったがどこにも人気がない。

「にんき」ではなく、「ひとけ」である。


「…どういう事?街の外に人はいないんでしょ?」

「じゃあ、街の中にいるはずだけどな…」


壁をつたりながら辺りを見渡す3人。


「師匠。ギルドにも、人は居なそうだった。ていうか潰されていた」

「潰されてた?」

「うん、土の塊だ。あれば魔族の魔力だ」


二人と別方向を見ていたレノフがリーラにそう告げる。


土の魔族か。

土の魔族。


「魔力からして多分、3年前のカルネルにいたやつだ」

「…あー、あのめっちゃ強いやつ?」

「うん」


ディレンのことだ。

3年前にカルネルでこの3人は大敗している。


じゃあ、あの魔族が首謀者だろうか。

確かにあいつの実力だったらアリラを占領することも可能だろう。


てか、だとしたら狙撃してきた水の魔族も別でいるから、少なくとも二人組か。


てか、あの水の魔族も多分強い。


結構距離はあったと思う。

その距離を正確に命中させる技術を持っているのはかなり洗礼された魔術だ。


「アリラの住民、どこにいると思う?ベル」

「んー」


リーラがベルに尋ねる。

ベルが顎に手を当ててその場にしゃがみ込む。


「多分、みんな同じ場所にいると思うから、領主の館とか教会とか、かな」

「おお、天才」

「だろ」


ベルが自慢げに胸を張る。


教会とは、エラネス教の建物だ。

地方の神官と聖女は主にここで働いている。


リーラが杖を下ろして、二人に提案をする。


「じゃあ、剣士と魔術師組で分かれていこう」

「え、3人で一つずつ回れば良くない?」

「ダメダメ」


ベルの反対を聞き入れないリーラ。

レノフもリーラの意見に賛成のようだ。


「ただでさえ、魔族がいるんだよ。あまり時間がかかっちゃってたら見つかるよ」

「じゃあ、余計俺一人はまずいじゃん」

「大丈夫、剣士なら多分即死はしない」

「ほんと?それ」


例えば、水剣の魔族キラクトの撃った水の光線を5メートル辺りの距離から撃たれても、リーラとレノフは死ぬが多分ベルは反射神経がいいので避けれる。


剣士と魔術師の組み合わせはこの場合よくない。

剣士にとって、反射神経が悪い魔術師は接近戦によって足手纏いである。


現在、確認できる魔族は土の魔族と水の魔族。

両方とも接近戦に強い属性だ。

他にも魔族がいるかもしれない。


ただそれでも、剣士にとって魔術師はとても優秀な援護係だった。


ベルがこんなに嫌がるのもわかる。


「やだよ行きたくないよ」

「はいはい文句言わないの」

「やってること子供だぞ、ベル」


リーラがベルのローブを掴み、必死に宥める。ベルが駄々こねる。

それをレノフが冷ややかな視線を浴びせる。


リーラはベルの背中を叩き、杖を構えてレノフに目線を送る。レノフも頷く。


「じゃあ、頑張れベル」

「んー、わかった…」


ベルが立ち上がり、ローブを正し、抜き身の剣を構える。


「じゃ、俺は館に行くよ。誰もいなかったら教会に行く」

「了解、教会で待ってる」


そういうと、ベルは低い姿勢で、足音を立てずに剣士の速度で脇道を歩いていった。


その姿を見ると、改めてベルが剣士なんだなと実感する。


リーラはベルの姿を見届け、レノフに話しかける。


「じゃあ、私たちも行くか」

「わかった」


二人はベルとは真逆の方向へ歩いていった。


ーー


土の魔族ディレンは領主の館の外の、屋根の上にいた。

今はただぼーっとしていた。



アリラを占領してから魔族も新たに3人集まった。

その大体がネルフェスに忠誠を見せない魔族だった。


さらに、アリラの領民もついこの前教会に移動させた。

ギルドを魔術で潰し、反逆を企むのを不可能にさせた。


ここまで、ここまでは完璧な状態だ。


領民もそろそろアリラの外に出していいだろう。

領主もついでに出そう。


ていうか、なんで領民閉じ込めてたんだろ。


最初から追い出して良かったけど。


あそうだ。

元カルネル出身の人間共が現在の魔王城を襲うという話はよく聞く。


それを未然に防ぐためだ。

ということにしておこう。


そんなことを考えていた時、不意に辺りを見渡すディレン。


「…キラクトがいないな」


キラクトの、あの魔力を感じない。

先ほどまで屋根にいたはずだが、どこにいったのだろうか。


ていうか、俺が外に出た頃には既にいなかった。


新たな侵入者でも現れたのだろうか。

まぁ、そこらの人間がキラクトを殺せるとは思えない。


そんな心配することもないだろう。


静かに、空を見上げため息をつくディレン。



カタリ。



物音。

反射的に、ディレンは片腕を音の方向に向ける。


詠唱。

それと同時に腕を振る。


岩壁(エ・ラーネ)


圧倒的質量。

それしかいう言葉がない。


ディレンの腕から放たれた岩壁の波は、物音がした方向の建物をあっさりと砕き、窓ガラスが破裂する。


轟音。


レンガが粉々に砕かれ、空中に舞い土煙を起こす。


「………」


ディレンは、土煙が起きた方向を静かに見つめる。

その目は、狩人の目をしていた。


「…誰だ?」


魔力を感じない。

きっと、剣士とかそこら辺の役職だ。


「………」


もう一度、片腕を構える。


「あー」


土煙の中から声が聞こえる。


「くっそ、ハズレ引いた」


レンガの瓦礫の中から男が出てきた。

緑のローブに、黒と茶色を混ぜたみたいな髪。


どこかで、見たことがあるな。


瓦礫から飛び降り、その男は剣を構える。


剣士だ。

その男はベルだった。


ディレンは腕を下ろし、目を見張る。


「お前、リエルネールだな?」

「二分の一、ミスったなぁ」


ベルは姿勢を低くして走り出す。


そして次の瞬間、アリラにもう一度轟音が鳴り響いた。


〈裏話〉

・治安警備隊の設定

この設定いまだによくわかんないから、カルネルとライレと、物語には存在しないけど、カルネルの南東にある国の、オーリオだけということにする。


・リーラの母

リーラのお母さんは他の住人とともに教会にいる。

最近本当に眠い。なんでやろ。

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