表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リエルネールの二人旅  作者: せきち
第4章 魔族の思惑編
52/63

48、バケモン

時は再び1週間前に戻り、

レンテの宿の中。


「レノフ、今まで何してたの?」

「色々村に泊まりながら、頑張ってた」

「よかったよかった」


リーラとレノフはカウンターの真横にあるテーブルに座り、話し込んでいた。


不意にレノフがあたりを見渡す。

その後、リーラに話しかける。


「ベルはどこだ?師匠」

「あぁ、今実家行ってる。レンテの中だよ」

「なるほどな」


レノフも、この三年間でいくらかレンテに来ているのだが、いい感じに会えなかったことがあった。


「聞いたぞ、Aランクパーティって」

「すげぇだろ」


こくりと頷くレノフ。


「うん、師匠も強くなってる」

「レノフもね」


レノフは、この三年間でとてつもなく成長した。特に、魔力が変わっている。


3年前よりも魔力量が、2.5倍になったレノフはまさに賢者の風格を持っていた。

現在、リーラよりも魔力が多い。


今なら見えない魔術を2回連射しても魔力が残る。

レノフは今や、リーラよりも強くなったのだ。


弟子の成長を感じ、大きく頷くリーラ。


きっとこいつなら、Aランク魔獣ぐらいは1人で殺せるだろう。


リーラがレノフの鼻あたりに指を刺し、問う。


「これから、どこ行く予定?」

「んー、特に予定ないな」


レノフはテーブルに顎を置き、ゔー、と呻いた。

リーラもそれを見て、顎を下げてレノフと目線を合わせる。


「んじゃあさ、私たちと一緒に来ない?」

「…そうだな。今なら年齢詐称してないしな」


レノフは、元犯罪者の顔をあげて、頷く。


「ん、わかった。もう一回、リエルネールに入らせてくれ」

「もちろん。よし、今からギルドに行こう!」


リーラは席からガタリと立ち上がりレノフの黒のローブの襟を掴む。


「え」

「ほら、いくぞ」


ひょいとレノフの体を持ち上げたリーラは少し引きずりながら、扉を開く。


「あ」

「うぁっ!」


そこには、買い出しから戻ってきた宿のおばちゃんがいた。

右腕には、買ったものでいっぱいになっている籠があった。


リーラは左手をあげて、軽く会釈をする。


「すいません、ちょっと開けます」

「あ、うん。わかった」

「ありがとざいます!」


生返事をしたおばちゃんに一文字足りない謝礼をして、リーラとレノフの2人はおばちゃんの右側を通り、ギルドへ駆けてった。


その後ろ姿をみて、呆然とした表情のおばちゃん。


「…なんか、懐かしい顔がいたねぇ」


ポツリと呟き、扉が音を立てて閉められた。


ーー


そして、夕方。

オール家の屋敷の玄関前、次男で後継ぎのレネルと三男のベルが別れの会話をしていた。


「んじゃ、兄貴。またここにきた時お邪魔するよ」

「おう、次はリーラちゃんも連れてきてな」

「…気が向いたらね」


さりげなくレネルの言葉を回避し、ベルは手を振り屋敷を去っていった。


春になって、少し陽気な風が吹く。

緑のローブが少し揺れる。


「はぁ」


暑いのが嫌いなベルは、これから夏を迎えることにため息をつく。


宿へ続く大通りへ曲がる。


「あ、ベル」


そこには、リーラとレノフがいた。

レノフの姿を視認し、少し目を見開いてフリーズするベル。


その沈黙を破ったのは、レノフの一言だった。


「えっと、久しぶりベル」

「あ、うん。久しぶりレノフ。元気?」

「もちろん」


ベルは再び体を動かして、2人に近づく。

3人は、横並びでベルの歩きに合わせ宿へ歩き出した。

しばらく、世間話をしていた最中、リーラはベルの顔を覗き込み、思い出したようにいった。


「あ、そうだベル」

「ん?」

「レノフね、またうちのパーティに入るって」


ベルは右にいるレノフの顔を見る。

ベルと目を合わせたレノフはこくりと頷き、どうだと言わんばかりのドヤ顔をする。


ベルは反応に困り、軽く頷く。


「へぇ、じゃあリレーシャに一緒にくる?」

「ん、そうさせてもらう」

「おー、久しぶりに戦闘が楽になる」


レノフを挟んで、ベルの反対側を歩くリーラも頷き、歩みを進める。


こうして、夜が明ける。


翌日、3人はリレーシャ目掛け再び歩き出した。

草原の中、リーラとレノフが会話をしていた。


「そういや、レノフ。飛行(リ・ラクト)覚えた?」

「そりゃ、もちろん」

「さすがぁ」


リーラがレノフを人差し指でツンツンつつく。 そしてレノフがその手を払いのける。


ベルも多少の疎外感を感じながらも頷いた。


飛行は、3年前リーラがレノフに課した課題だ。

次自分に会う時までに飛行は覚えとけというものだった。

レノフはこれを簡単にこなしてみせた。

さすが、秀才。


リーラが再び思いついたようにニヤリと嫌な笑いをする。


「じゃあさ、速さ勝負しようよ」

「勝負?」


レノフが少し興味が湧いたのか、チラリと目線を合わせて問う。


「うん、ベルは走りで私たちは飛行(リ・ラクト)であそこの木までね」


リーラが指を刺した先には、一本だけ生えている木が見えた。

レノフはベルに情けの目を向ける。


「大丈夫か?ベルは少し不利じゃないのか?」

「大丈夫、俺は勝つから」

「ほぉ」

「じゃあ、それぞれ何か賭けよ」


リーラが提案してすぐに言った。


「私は、…そうだな。私の裸体を見せてやるよ」

「却下」

「くたばりやがれ」


レノフからは否定、ベルからは誹謗中傷をくらい、その場で狼狽えるリーラ。


「え、ひどい」

「お前が悪い」


そんな事を言ってたら、ベルが思いついたように顔をあげて宣言する。


「じゃあ、俺は次の魔獣1人で討伐するよ。Bランク以上は無理」

「じゃあ、俺もそれ」


レノフもそれに便乗し、結局リーラもそれにすることにした。


「よーし、では始めますよ?」

「わかった」

「理解理解」


魔術師はそれぞれの杖を構え、ベルは剣をしまい走る体制に入る。


ベルの合図でスタートだ。


「よーい、スタート!」

「「飛行(リ・ラクト)」」


そして、決着は。


「ずるくないか」

「ずるくないから、引き受けたお前が悪い」

「自分を恨みやがれ」


もちろん、一位はベル。

リーラがタッチの差でレノフに勝ち、最下位はレノフということになった。


「許さん」

「自分を恨みやがれ」


もう一度、リーラがそういう。


そしてしばらく歩き、魔獣に遭遇した。

Cランク魔獣、ベリラントだ。

でっけぇクマみたいな身体のやつだ。


今回、5体。

その姿を見て、レノフが安堵の息を漏らす。


「…あれならいけるな」

「そうかい、ヤバかったら参戦するからな」

「ん?いや」


レノフは森の中の茂みから、一歩も動かない。

そのまま、杖を構える。


「ここから動かないぞ?」

「え」


反射的に、というか魔力を感じて旧メンバーは茂みから退く。


木々が揺れる。草木が、どよめく。


レノフの杖に魔力が集中していく。

そして、詠唱する。


見えない魔術(シャ・ラーム)


それは、全てを消し去る。

ベリラントの内、一体の身体が空間ごと破壊される。


それに伝染するように次々と魔獣たちが見えない魔術に巻き込まれ、最終的に誰もいなくなっていた。


「…なんだこれ」


ベルが、ボソリと呟く。


この魔術を忘れたわけじゃない。

今の魔術の軌道を見たことがないのだ。


何やら、渦を描いていた。

そして範囲も広かった。


20メートル先にある、ベリラント5体を跡形もなくぶちのめす。


そんなこと、少なくとも三年前にはできていなかった。


「風魔術だ」

「え」


ベルの隣のリーラがつぶやいた。

この軌道は、見たことがある。


風の渦を見えない魔術に応用したのだ。


「これは、かなりすごい」


リーラと全く同じ事を言うが、これは本当にすごい。


既存の魔術ならともかく、新種の魔術を他の魔術と組み合わせるということがどれほど難しいことなのか、それは魔術師であるリーラしかわからない。


まぁ、とにかくとてつもなくすごい。


全てを一瞬で討伐したレノフがドヤ顔で振り向く。


リーラはその顔を見て、軽く微笑む。

ベルも今更ながらレノフの成長を実感した。


ゾクリと、ベルは自分の中で何かが駆けるのを感じた。


「こりゃ、化けたな。バケモンに」

「だな」


リエルネールは、ゆっくりその場で羽ばたき出す。


〈裏話〉

・見えない魔術の混合魔術

レノフのしたこれは、英雄歴以来初の快挙である。


・公認カップル

この話の公認カップルは、


ベル&アーリエ

リーセ&ファルム

ヴィアルム&フェリオン


の三組である。

異論は認めない。


なんか、書くのがめんどくさいから本文を手抜きしてある。

評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ