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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第4章 魔族の思惑編
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46、カルネル襲撃 後編

ディレンの前に対峙するネルフェスは床の上着地し、話しかける。


「ディレン、何をしている?」

「お前を、殺しにきた」

「そうか」


2人は、右手を掲げる。


岩壁(エ・ラーネ)!」


詠唱と共に、土壁がネルフェスを襲う。

その距離、残り10センチになった時、魔王は動いた。


見えない魔術(シャ・ラーム)


一言、詠唱をする。


それは古代の魔族の魔術だった。


何とたとえたらいいのだろうか。

まぁ、簡単に言うとその空間が消えた。


土の魔術は、魔術を使用するために突き出したディレンの右腕ごと消え失せた。


「もう一度、尋ねる」

「……っ」


凄まじい殺気。

ディレンはそれに耐えながら、必死に右腕の再生を進める。


ネルフェスは右腕をディレンの顔に向ける。


「お前は何をしにきた、ここに」

「…岩壁(エ・ラーネ)


それは、ディレンの足元から伸びた。


ディレンの身体は宙に放り上げられ、そのまま飛行で高度を維持する。


そのまま、ネルフェスにもう一度回復した右腕を向ける。


岩壁(エ・ラーネ)

追尾する魔術(シャ・ローズ)


その魔術は、黒かった。

三本の黒い矢のようなものが現れ、ネルフェスを囲う。


ディレンの魔術は三本の岩壁が次々枝分かれをしながらネルフェスを襲う。


「いけ」


黒い矢はまるで見えているかのように土の魔術を避けながら、それぞれディレンに向かっていく。


速い。

ディレンは飛行しながら少し遠ざかる。


「…まずいな」


この黒い矢からは、見えない魔術と同じ魔力を感じる。


直撃したら、大怪我してしまうだろう。


いや、大怪我ならまだいい。

致命傷を喰らったら飛行制御が出来なくなって、落下死してしまう。


「…逃げるか」


ディレンは飛行を解除する。


自由落下をしながら、魔術を展開していく。

その後を追尾する魔術が追う。


枝分かれをするディレンの岩壁を回避しながら、黒い矢がディレンに向かっていく。


その様子を見守る魔王。


「ヴィアルム、フェリオン。そこで休んでろ」


怪我を負った2人にそう言って、ネルフェスも城の上から飛び降り、ディレンの真上についた。


空中で回転し、頭が地面の方向に向く。

その顔には、少しの怒りが垣間見えた。


「もしかして私は、舐められていたのか?」


空中で加速。

逆向きに、飛行をしている。


地面につく前に追いつかれる。


それを見たディレン。

状況がまずい事を見て思わず笑みを漏らす。


「こいつがバケモンだろ」


ネルフェスの加速に伴い、黒の矢も加速する。


地面まで、残り10メートル。

ディレンは覚悟を決めた。


「一か八かぁ!」


一瞬、飛行を展開するディレン。

その身体は宙に固定される。


黒の矢のディレンの顔の距離が10センチにせまっていた。


岩壁(エ・ラーネ)!」


ディレンの横から、岩壁が伸びて自身の体に衝突する。


「そうきたか」


髪を風でかき上げたネルフェスがふっと笑う。


ディレンの体は惨い音を立てながら遠くにたまに着地しながら跳ね飛ばされる。


例えるなら、水面に投げた平たい石の跳びざまだった。


黒の矢はその勢いのまま伸びた岩壁に衝突し、岩壁がえぐれる。

ネルフェスは空中で減速をして綺麗に着地した。


服が擦り切れまくったディレン。

肋骨と脚の骨が折れた状態で小さく血を吐いた。


ゆっくりと、顔を上げる。

その目の前には、無表情の最強の魔族ネルフェスがいた。


ディレンは賭けに勝った。

しかし、ここで運が尽きた。


「お前は、もう少し賢明な男だと思ってたよ、ディレン」

「そうか、俺もだ」


息切れをしながら右腕をネルフェスに向ける。


その、目の前の敵の姿は霞んで見える。

魔力は無限にあるのに、勝てる気がしない。


だめだ、これは。

負けてしまう。死んでしまう。


光線(ラ・ルーシャ)


一閃。


それは、ネルフェスの右腕を貫通し、地面に落とさせた。


その魔術の出てきた方向をむく。

そこには、金髪ロングの女の魔人がいた。


「フラル!」

「もしかして、まずいですか?今」


ネルフェスの腕が一瞬で生え変わる様を見て、フラルが言った。


「お前は魔人か、光属性の」

「えぇ、あなたが魔王ですか」


ネルフェスの四方八方に防護が展開される。

これは遠隔で光線を出すものだ。


いくら魔王でも、即死させれば回復しない。

フラルは、そう誤算していた。


両腕に魔力を込める。


「死ね!ネルフェス!」

見えない魔術(シャ・ラーム)


それは、その防護は光線が出される前に消え失せた。


「え?」


あまりに一瞬の出来事にフラルの思考が一瞬固まる。


防護が破壊されるなんて、聞いたことがない。

生まれてから200年。こんなことは一度もなかった。


「小細工は無駄だ」

「逃げろ!フラル!」


ディレンは、叫ぶ。

しかし間に合わない。


見えない魔術(シャ・ラーム)


ネルフェスのそれは、フラルの頭を貫通する。

声を上げる間もなく、フラルの小柄な体は大通りに倒れる。


「フラル…」


魔人の死亡条件は心臓の破壊だ。


死んではいないが、自力で逃げるのには時間がかかる。

フラルは、負けた。


一瞬、ディレンは大きく目を見開く。


「くっそがっ!」


ディレンは叫びながら自分の足元に岩壁を作り出し、自身の体を斜め上に飛ばす。


行き先は、王都カルネルの外だった。


一刻も早く、ここを逃げなければ死んでしまう。

飛行をして、城壁の外を目指す。


それをネルフェスは逃がさない。


追尾する魔術(シャ・ローゼ)

岩壁(エ・ラーネ)!」


空間を破壊する黒の矢が再び召喚される。

今回は10本近くある。


それらは空中を曲線を描いてディレンを狙い撃つ。


それをディレンの岩壁が遮る。

枝分かれを繰り返すそれは、黒の矢にかわし続ける。


ネルフェスはもうディレンに興味がないように顔を背け、その目線をフラルに向けている。


しかし、黒の矢はうねりながらディレンに向かって飛んでいく。


どうやらこの黒の矢、自動追跡の機能があるらしい。


「バカだろ、これ」


ディレンは小さく呟く。両手を左右に勢いよく振って、それを避けきれずに2本の黒の矢は破裂する。


残りの8本、ディレンはそれを視認して、魔術で破壊する事を諦め、飛行の速度をさらに加速させる。


前に振り向くと、目の前には石のレンガでできた城壁があった。

それを見て、ディレンは何を思ったのか、ボソリとつぶやいた。


「俺も、バカか」


右腕から一筋の岩壁を生成し、石レンガを突き破っていく。


派手な音を立て、飛び散ったレンガの破片に残りの黒の矢が衝突して消え去る。


土煙を立てながら、ディレンはカルネルからの脱出に成功したのだった。


ディレンは擦り傷だらけで地面に静かに墜落する。


草むらに着地し、その勢いのままゴロゴロ回転をした。


「がっ…」


そして、カルネルの近くにある、森の中で息を潜めながら、ディレンはつぶやいた。


「やるんじゃなかった、こんな事」


4月14日。

土の魔族ディレン、光の魔人フラルによるカルネル襲撃が行われ、魔王ネルフェスのみに敗北を喫す。


ディレン、逃亡。

フラル、生死不明。


〈裏話〉

・ヴィアルムとフェリオン

傷が時間経過で全快した2人はネルフェスの戦闘を陰ながら見守ってた


・追尾する魔術

古代の魔術の一つ。

黒の矢が相手を襲い、衝突した部分に見えない魔術を展開し、破壊する。

遠距離向け。


・魔族、魔人の強さランキング変動

一位、魔王ネルフェス

二位、土の魔族ディレン

三位、光の魔人フラル 生死不明

四位、水の魔族ヴァーテ 討伐済

五位、火の魔族ヴィアルム

六位、風の魔族フェリオン

七位、火剣の魔族アライム 討伐済

八位、土の魔族イラオネ 討伐済


剣を扱う魔族をその属性+剣と呼ぶことにした。

イラオネは、カルネル襲撃時にあっさり殺されたあの魔族のことだ。

性別は女にしとく。

今、舌が腫れててめっちゃ痛い。

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