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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第4章 魔族の思惑編
48/63

44、そういうこと

「はーい、報酬の50,000ヘルトでーす。こちらで預かっておきましょうか?」

「お願いしまーす」


伸ばし棒がやたらに多い受付嬢から、冒険者カードが返却され、ベルがそれを受け取る。


黒鱗竜を討伐したリエルネールは再びきた道を2週間かけて戻り、報酬を受け取り、記念すべき3体目のAランク魔獣討伐となった。


現在のリエルネール残金、30000プラス報酬の50000で80,000ヘルトである。


リーラがギルドを出てすぐ、安堵の息を漏らす。


「いやー、お疲れお疲れ」

「今夜は打ち上げだぁ」


ベルの声も、疲れているのかビブラート気味である。

リーラがベルの方をチラリと向く。


「アーリエも誘う?」

「んー、あいつのパーティ次第だね」


アーリエは2年前に騎士学校を卒業し、女3人で新しいパーティを結成した。

パーティ名は、アースクリエである。


意味は無いらしい。


なぜ、アーリエがリエルネールに入んなかったのかというと、彼女はベルと付き合っているのでリーラが気まずいのと、パーティ内で恋愛をしては色々判断が鈍るという、冒険者内のジレンマに乗っ取ってだった。


ベルが両腕を首の後ろに回す。


「ま、とりあえず夕方までは宿で寝てよ」

「ん」


宿に入った2人。

受付のおばちゃんがベルとリーラに話しかける。


「聞いたよ、またAランク魔獣倒したんだって?すごいねぇ」

「でしょー」


リーラが、自慢げに返事をして、お金を700ヘルトだす。

おばちゃんがそれを受け取る。


「二部屋お願いしまーす」

「あいよ」


2人は階段を登り、それぞれの部屋の前で会話をする。


「んじゃ、また夜に」

「おやすみー」


それぞれ扉が勢いよく閉められ、2人はすぐさま眠りについた。


そして夜。

2人はアーリエを誘うことに成功し、3人は酒場で飲み食いをしていた。


アーリエは誕生日が七月の、現在18歳。

以前肩あたりまで伸びてたその髪は、後ろで結ばれた前髪パッツンスタイルになった。


ベル曰く、魅力が以前の五割増しだそう。

気持ち悪い。


故に、3人とも酒が飲める。

この世界の酒が飲める年齢は18歳なので。


リーラがテーブルで向かい合いのアーリエに尋ねる。


「アーリエ、最近パーティどう?」

「んー、まぁ、Cランク魔獣は倒せるようになってきたよ」

「いいじゃんいいじゃん」


この数年間でリーラとアーリエも仲良くなり、今度はベルが蚊帳の外という状況になった。


「2人はすごいね。レンテの中で、最速でAランクパーティになったって、この前聞いたよ」

「まぁね」


ふふん、と少し酔いが回り頬が赤くなったリーラが鼻を鳴らす。


リーラはお酒に割と弱い体質そうだ。

まだ酒の一杯の半分しか飲んでないのにこの酔いようだ。


一方、割と酒に強いベル。

2人の会話を聞きながらクピクピ酒を飲んでいた。

アーリエは明日、朝イチでクエストがあるらしいので酒は飲まない。


リーラが再び酒を飲み始めたところを見て、アーリエに尋ねる。


「アーリエ、クエストで遠征してる時、魔族に会ったことある?」

「いやぁ、ないですねぇ」

「んー、そっか」


やっぱり、2年前まで多かった魔族の出現情報も、最近パッタリとなくなってしまった。


「…何でだろねぇ」

「どういう意味?」


アーリエが隣にいるベルに擦り寄り、顔を近づける。


ベルがその分顔を引く。

そして、そのまま弁解をする。


「いや、何でも」

「…そうすか」


アーリエが顔を引く。

それに合わせ、ベルも顔を引く。


と思ったら、アーリエは再び顔を突き出し、ベルと唇が合わさる。


リーラは、咄嗟に顔をテーブルに下げて、寝たふりをする。


フリーズしているベルと唇を離し、その固まった顔を見てアーリエはニヤリと笑う。


「引っかかったぁ」

「…ずるい」


ボソリとベルが呟き、恥ずかしさを紛らすために酒を手に取り、一気に喉に流し込む。


これは、いつもの夫婦漫才だ。

リーラはそう思って目を瞑ったままため息をつく。


ーー


その日の、昼頃のことだった。

カルネル城にて。


「どうしたんだ、ディレン。こんなとこまで来て」

「いやなに、久々の帰省って感じだ」

「実家じゃねえぞ、ここは」


火の魔族、ヴィアルムが土の魔族、ディレンに話しかける。

来客用のソファに座ってもらい、紅茶の入ったティーカップを目の前のテーブルに置く。


ディレンは口を開く。


「…そういや、ネルフェスはどこだ?」

「んー、知らんな。多分寝室で寝てんじゃないか?」

「魔族は寝なくてもいいのに、変なやつだな」

「今更今更」


自分の主人にひどい言い草である。


そんな会話をしていた時、2人がいる部屋の扉が開いた。


「お、ディレン。久しぶり」

「フェリオンか、お前もここに住んでんのか?」

「まぁね」


風の魔族、フェリオンだった。

軽くひらひらと手を振り、ディレンの隣の、来客用のソファに座る。


ヴィアルムがフェリオンに指を刺す。


「おい、お前ニートしてるんだから下座に座れ」

「やだよ、こっちの方が質がいい」

「黙れ」


ヴィアルムはフェリオンの肩を掴み、ズルズルとソファからずれ落とす。

うあー、と棒読みの悲鳴を上げるフェリオン。


その2人を見て、ディレンは話しかけた。


「…三年前、俺のところに魔人が訪れたんだ」

「え?あ、魔人?珍しいな」

「あぁ」


ディレンはソファから立ち上がり、話を続ける。


「その、光の魔人は私にネルフェスを殺すために共謀してくれと言っていたんだ」


ヴィアルムとフェリオンの動きが止まる。

ヴィアルムが口を開く。


「…それで、お前はどうしたんだ?」

「………」


空気が止まる。


一瞬、ディレンの片手に魔力が集まったと思ったら、その片手から無数の土壁が飛んで2人の腹に突き刺さる。


「あぁ!?」


その勢いのまま、2人の魔族は壁に衝突する。

轟音と共に壁に亀裂が走る。


そして、土の壁の一つ二つが窓を突き破り外にはみ出る。


体をだらんとぶら下げたヴィアルムが小さい悲鳴を上げる。


「かはっ…」

「…何のつもり?ディレン」


痛みで少し掠れ声のフェリオンの問いに、無表情のディレンは答える。


「まぁ、そういうことだ」


部屋がしずまりかえる。


ーー


場面は変わり、元王都カルネルの東門。

そこの入り口には光の魔人、フラルがいた。


カルネル城の外側に、ディレンの土の魔術が突き出ているのを見かけ、思わず覗き込む。


ふふっと微笑むフラル。


「おぉ、やってますねぇ」


フラルは視線を目の前にずらし、両手を上に伸ばし、んー、といって伸びる。


そして、腕を勢いよく降ろして目の前を見る。


その目線の先には、飛行をしている、それぞれの属性を扱う魔族7人がいた。


魔王ネルフェスから、侵入者を殺すように仕事が与えられている魔族たち。

詰まるところ、衛兵だ。


それらを確認し、一つため息をついたフラルは両手をプラプラさせながら呟く。


「んじゃ、ぼちぼちやりますか」


次の瞬間、フラルの光線と魔族たちのそれぞれの魔術が衝突し、爆発と轟音が響く。


〈裏話〉

・ディレンが何故引き受けたのか

理由は単純で、暇だったからだ。


・たくさんの魔族

現在、カルネル城にいる魔族の数は25体である。

それぞれ、北門、南門、西門、東門を守っている。

しりとりでマリトッツォって言ったら、100%勝てるんじゃないかと一日中考えていた男。

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