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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第三章 魔族と魔人編
44/63

41、魔族の魔術

リレア観光から、7日が経過した。


2人は、束の間の休息を楽しみまくり、あっという間に残金が200ヘルトになった。

10,000ヘルトから、200ヘルトにまで。


主に、ベルが使いまくっていた。

浪費家の宿命である。


「次は、どこの国に行こうか」

「なるべくあったかいとこがいいな」


リーラが少し白くなった息を吐いて、言う。


この大陸の冬は寒い。

11月に入った気温は既に冬に達していて、2人は上に着る冬用のローブを買い、所持金を引きだすためにもう一度冒険者ギルドに訪れた。


「いくら引き出しますか?」

「はい、5,000ヘルトお願いしまーす」


リーラが受け付けと話している間、ベルはクエストの掲示板を見ていた。


「………」


目欲しいクエストはなかった。

顔を右に向けて、リーラのところに向かおうとしたその時、隣の掲示板が目に入った。


一枚の記事だった。


どうやら、ここ最近の記事が貼っているようだった。

そこには、カルネル遠征のある程度名前のある死亡者が載っていた。


…そう言えば、レンテの軍勢もその遠征に参加していた。

念の為、見ておこう。


「…は?」


その記事を眺めてから10秒後、ベルの顔が凍りついた。


その目線の先には、こう書いてあった。


下級騎士オール家

当主、アラエル・オール

長男、アネル・オール


ベルの、父と兄の名だった。


そうだ。

こんな大きな遠征で騎士が赴かないわけない。

その記事の見出しには、遠征軍が全滅いたと言う。


そうなれば、アラエルとアネルが死んでいてもおかしくはない。


そっか、死んだのか…


唇を震わせてベルはつぶやいた。


「早く…帰らないと」


その口からは、白い息が滲んでいった。

踵を返し、金の引き出しを終えたリーラに話しかける。


「どうした?ベル…」

「家族が、親父が、兄貴が死んだ」

「え?」


ベルが5メートルほど遠くにある先ほどまで見つめていた記事に指差す。


その手は寒さでなのか、震えていた。


「…カルネルの、遠征にいってたんだ。親父たちは」

「…全滅だっけか?」

「うん、早く、レンテに戻らないと」

「…わかった、すぐに出よう」


2人はギルドの扉を開き、早歩きで進む。


ここ、リレアからレンテは、2か月弱かかる。

早くても、帰れるのは年明け近くだろう。

この大陸に正月なんてものは存在しないが。


城門を出て、リエルネールは再び長い旅に出た。


ーー


ここは、ベルとリーラが水の魔族、ヴァーテを討伐した国、ライレ。


「ふぅ…」


首都から少し離れたところにある森林に元リエルネールのメンバー、レノフはいた。


「…疲れた」


ベルとリーラに買ってもらった杖を下に下げてその場に座り込む。


その目の前には、光線で首を貫かれ、絶命している男の魔族がいた。


風の魔族だった。


先ほど、レノフがたまたま歩いていたら、こいつに出会った。

1時間に及ぶ戦闘の末、レノフは勝利した。


魔術をたくさん使い、微弱になった魔力を微かに感じる。


ベルたちに出会ってすぐの頃は少しだけ魔力が多いただの子供だったが、今に至っては魔法学校でも上位だったリーラの魔力量と並ぶぐらいにはある。


本当に、すごい進歩だ。

魔力の量は基本的に魔術の使用量に比例するので、この半年弱の期間でそこまで伸びたのだろう。


レノフ自身も成長を実感して、悦に浸っている。


座りながら、杖を両手で握りしめて、レノフはつぶやいた。


「リーセ…」

「それは、誰の名前だ?」


不意に、後ろから魔力を感じた。

魔族の魔力だ。


「…っ!」


素早く振り向くレノフ。

そこには、男の魔族がいる。真後ろだ。

この位置に来るまで魔力を感じなかった。


冷や汗を流し、叫ぶ。


「誰だ!お前は」


いや、この魔力は知っている。

カルネル城付近で感じた、あの強大で恐ろし

い魔力だ。


ネルフェスはふっと微笑み、レノフに話しかける。


「君が、見えない魔術(シャ・ラーム)の使い手か?」

「なんで、それを知っている」


さらに、一歩下がる。

それを知っているのは、ベルとリーラと、リーセだけだ。

他の人は知らないはずだ。


じゃあ、なんで。


「私が聞きたいさ、それは魔族の魔術だ。しかも、700年前の」

「700年前?お前は、誰だ?」


700年前。

あの、魔族・魔獣侵攻の付近のことだ。


その時代の魔族の魔術なのか?見えない魔術(これ)は。


「私は、魔王ネルフェスだ。アラグラテルの後継者だ」

「はぁ?」


アラグラテル?

なんだ、それは。

誰だ、それは。


え、魔王?

カルネルにいるんじゃないのか?

なんで、俺に会いに来たのか?


そうか、魔族の魔術を使える人間なんて、消すに決まっている。


この魔王は、ここで俺を殺す気だ。


レノフは、杖を構える。

一歩、引き下がった足を前に進める。

深呼吸をして、息を整える。


「こい」

「ん?何か、誤解をして…」


杖に、もうほとんどない魔力を込める。

そして、詠唱する。


それは1番嫌いな魔術で、1番信頼している魔術だった。


見えない魔術(シャ・ラーム)

「ほぉ」


ネルフェスは、後ろに飛んで下がる。

それはもう、ひとっ飛びで5メートルは下がった。

見えない魔術の範囲外に行って、右手を顎に置く。


魔術を解析するように、じっとをそれを見つめる。


「私と全く同じ魔術ではないな。人間の魔力がベースで作られている」

「……っくそが」


レノフは、魔力切れで音を立てて草むらに倒れ込む。

木漏れ日が、レノフの体をところどころ照らす。


俺、もう死ぬのかな。

リーセに、2人に申し訳ないな。


「大丈夫だ、お前は殺さない」


レノフの顔を覗き込み、ネルフェスは言った。


「元々今日は、視察に来ただけだ。想像以上に若かったしな」

「…そうかよ」


苦しそうな声をあげて、レノフが言った。


それを無視し、ネルフェスは視界の端で飛ぶ体勢をとる。


「では、さらばだ」


そう言って、魔王は飛び去ってしまった。


あまりの出来事に、魔族を初めて倒した感動が薄れたレノフ。

5分ほどで魔力がある程度もどり、立ち上がる。


最近、と言うかリエルネールと一緒に過ごしてからはずっとこんな感じだ。

すぐピンチになって、なんだかんだ生き残る。


レノフは杖を手に取り、よれたローブを正す。


「これが、外の世界か。大変だな」


そう、独り言を呟いてレノフはまた草を踏み締め、歩き出した。


〈裏話〉

・見えない魔術

これは、古代魔族の魔術だ。

なんでレノフが使えるんだ?


・月日の流れ

この話で時間が経つの遅いと思う。

早く終わらせたい

今朝麻婆茄子食べた。

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