36、光の魔人
「お前、魔族だろ」
リーラがフラルにそう言い放った。
フラルは、光属性しか使えない。
これがそもそもおかしいのだ。
いくら光以外の属性が適性ではないとしても、使えないのはおかしい。
というか、適性1つだけなのもおかしい。
あと、魔力の中にちょっとだけ魔族のような魔力を感じた。本当に微弱だが。
「…いやいや、そんなわけ」
「光線」
杖を構えるのと同時に、リーラは詠唱する。
暗闇の中の一筋の光がフラルに向かう。
それを、フラルの防護が守る。
「…なんですか、これ?私は敵じゃ」
「人間はな、まだ防護の無詠唱の技術がないんだよ。治癒もだ」
少しの間。
「…じゃあ、わたしは人間じゃないことになりますね」
フラルは、ベルとリーラの方向に正面を向ける。
疑問を一つ、投げかける。
「魔人、というのは知ってますか?」
「うん、魔族が人の体乗っ取るやつだろ?」
「…少し、語弊がありますね」
フラルは、無を見つめていた。
「魔人とは、死にかけの人間に魔族の心臓を移植することで、その人間が魔族化することで生まれる生物です」
「心臓?」
「えぇ、自分の持つ属性を捨てて、人間の体に成り下がるなんて、愚の骨頂。ですが、光魔術だと、話は別です」
リーラは、杖を構える。
ベルも、剣を構える。
「魔族に治癒は効きません。だけど、人間には効く。人間との、コミュニケーションがとれる。人間との交友関係を作ることは素晴らしいことだと思うんです」
「…何が言いたい?」
「光魔術は、とっても都合がいいんです」
フラルは、後ろへ飛ぶ。
リーラは杖に魔力をこめる。
光の魔人は両手を合わせて、微笑む。
「だって、強いんですから」
フラルの手から、5本の光線が曲線となってベルとリーラに襲いかかる。
「はぁ!?」
リーラは素っ頓狂な声を上げる。
光線が曲がるなんて聞いたこともない。
きっと人間じゃ、一生できない技術だろう。
「防護」
大きい四角の防護を展開して、光線を防ぐ。
その隙に、ベルが襲いかかる。
距離を詰める。
「何をするんですか?」
「さぁ?」
ベルの姿勢が低くなる。
「あっ」
一閃。
フラルの両膝が切り崩される。
ベルの後ろには、リーラが杖を構えていた。
「光線」
リーラの杖から、フラルの頭に光線が走る。
断末魔を上げる暇もなく、フラルは殺された。
と、思った次の瞬間。
「いいですね」
鼻の上が抉れた状態でフラルは、口を動かした。
2人は、一瞬固まる。
次の瞬間、斬られたはずの両膝はつながり、頭は再生していた。
「治癒か!?」
「正解!」
フラルは、走る。
そのまま、ベルに突進した。
その手のひらは、ベルの腹に触れていた。
リーラが叫ぶ。
「あぶない!ベル!」
「遅い」
光線が、ベルの腹を貫通する。
ベルは声にならない悲鳴を上げる。
しかし、その剣先は、フラルの喉元を突き刺した。
「治癒」
すかさず、リーラがベルの怪我を治癒する。
そのまま、杖の先を魔人に向ける。
「土の渦」
土の塊たちがフラルを襲い、その後ろの廃墟の壁を突き破る。
フラルは、高く飛び上がり引き下がる。
そして、廃墟の外に出る。
「じゃあ、そろそろアライムの手助けに行かないと」
「アライム?」
口の中が血でいっぱいのベルが問う。
フラルはそれを無視し、廃墟の外側の各所に防護を設置する。
「何する気だ?」
「じゃあ、生きてたらまた会いましょうね」
フラルの手から、光線が放たれる。
光線は、防護にあたり、反射する。
これは、リーラも使っていた特殊な防護だ。
次々と反射する光線は廃墟を貫き、崩れていく。
「リーラ!」
「ベル!これ、どうする!?」
2人の周りにも光線が飛び交い、身動きが取らない状態だ。
リーラは何かを思いついたのか、杖を上に向ける。
「風の渦」
魔術を巻き取る渦だ。
光線は、風の渦に巻き取られながら魔力ご霧散して消えていった。
それを見届けた2人。
「うし、行くぞ!」
2人が向かう先は武闘派の火の魔族。
名はアライムだった。
〈裏話〉
・光の魔人
魔人は、最強の生物である。
人間と区別がつかないし、魔力も、魔族と同じで無限。
人間の間では光の魔術が五属性の中で最強なので、この二つが組み合わさったフラルは最強。
・なぜ、頭が無くても喋れてたのか
魔人は、そもそも生きていないので、心臓を撃てば殺せる。
なので心臓がある部位と抉られた部位が離れていなければ何処でも機能する。
人狼ゲーム苦手
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