34、「よろしくお願いします!」
「はい、魔族一体討伐してますね、オッケーでーす」
「はーい」
受付カウンターの前。
討伐履歴を見れる羽根ペン魔道具を使用したリーラ。
受付嬢が記入された紙の内容を確認して、頷く。
そして、2人に冒険者カードを返して、忠告をする。
「現在、3つのパーティがこの依頼に参加してます。合計9名ですね」
「へぇ」
「この依頼の集合地点は、2日後のこの街の城門前です。先導は雇った回復役がするので、お忘れないように」
「わかりました」
受付嬢の長い忠告に頷くベルとリーラ。
ちなみに、9名と言うのは、4人パーティと3人パーティとリエルネールの2人である。
冒険者ギルドをさり、2人は宿に向かっていた。
「なんか、9人もいると案外簡単かもね」
「油断はダメさね」
「だねえ」
宿につき、2人はこの二日間のお金について話し合う。
ギルドにおいて、他の依頼を受けているときに、新しい依頼を受けるのは違法なので、冒険者ギルドで稼ぐことは無理だ。
まあ、ここはある程度物価が低いので最悪どうにかなるだろう。
「冒険者ギルドから、お金引き出す?」
「いやぁ、あれはもしもの為のだから」
もう一度言うが、冒険者ギルドは銀行の役割も兼ねている。
現在のリエルネールの残高は、金貨二十枚。20,000ヘルトである。
では、やはり街の人々の個人依頼を受けるしかない。
2人は再び、宿を出てエナフの住宅街を回った。
しかし、すぐに後悔した。
個人依頼は直接依頼がないか聞きに行かないといけない。田舎とは違い、人も家も多い。
迷惑になりたくもないし、どうしようか。
とりあえず、そこらへんで遊んでいる子供達に話しかけることにした。
子供受けがいいベルがその4人の子供達に聞く。
ベルがしゃがみ、子供と視線を合わせる。
「ごめんね、ここら辺で冒険者の依頼を受けてくれそうな人知らない?」
「んー、知らない!」
「いや、アヤラのおばちゃんなら依頼受けてくれるよ!」
「アヤラのおばちゃんってね、とっても忙しそうにしてるの!」
「独り身なの!」
情報が一気に入ってきた。
アヤラのおばちゃんと言う人が、依頼を受けてくれるかもしれないらしい。
独り身だから、忙しいと言うことだろうか。
「…そのおばちゃんの家ってどこにあるか知ってる?」
「こっちこっち!」
「ついてきて!」
子供に急かされ、ベルが歩きその後ろをついていくリーラ。
レンガ造りの通りを歩き、5分が経つ。
「あれあれ!」
「あれ?」
子供たちが指を刺す先には、一軒の小さな家があった。
「じゃ、僕たち帰るね!」
「ばいばーい」
「はい、ばいばーい」
ベルが子供達に手を振り、正面にある扉に目を向ける。
ベルは右手を突き出し、扉をコンコン叩く。
「すみませーん、依頼ありませんか?」
「誰だい?」
声がする。おばちゃんと言うより、おばあちゃんの声だ。
扉が開かれる。ベルより少し身長が低い白髪のおばあちゃんがそこにはいた。
「依頼を受けさせてくれる人を探してまして」
「あぁ、ちょうどいい。いま薪割りしてくれる人を探してたんだよ。入ってくれ」
「お邪魔しまーす」
その部屋は、本や空のコップやらで散らかっていた。
おばあちゃんが微笑み、ベルに振り向く。
「すまんね、汚くて」
「ああ、いえ」
「じゃあ、裏庭にある薪を全部割ってくれ。5000ヘルト出すよ」
「わかりました」
報酬が多い。
木こりの斧を受け取り、にやけ顔でベルは裏庭へと消えていった。
それを見届けて、おばあちゃんはリーラに振り向く。
「さて、あんたにゃ何してもらおうかね」
「…この部屋掃除しましょうか?」
「おぉ、いいのかい?ありがとうねえ!」
それから1時間後。
ベルがへとへとで裏庭から帰ってきた。
本人曰く、毎日使ってても冬まで保つ量の薪を割っていたそうな。
リーラは雑巾でおばあちゃんと共に部屋をきれいにしていた。
今更だが、リーラは綺麗好きである。
「んじゃ、これが報酬だよ」
「ありがとう、アヤラおばあちゃん」
リーラが親しげにおばあちゃんに別れの挨拶をする。
掃除をしている中で仲良くなったそう。
金貨五枚を荷物にしまい、2人は宿に戻った。
「これで、あしたは依頼受けなくてよくなったな」
「子供達さまさまだね」
2人がニヤニヤ笑っている。
いつの時代も休みと言うのは至福の時間なのだ。
そして、2日後の朝。
2人は城門前にたどり着く。
少し、小走り。
ちょっと、遅刻してしまった。
そこには、自分たち以外に二組のパーティがいた。
そして、その真ん中には、金髪の女がいた。
この人が先導の回復役だろうか。
「さて、全員集まりましたかね」
長い金髪を揺らして、回復役の人はみんなを見回す。
「私の名前は、フラルです。今回の先導役ですね」
にっこりと女は笑う。
「今日は、よろしくお願いします!」
無駄に、元気がよかった。
〈裏話〉
・リーラ
リーラは可愛い顔がいいのか、かっこいい顔がいいのか、悩ましい。
・オール家
アネルは現在、カルネルに遠征しにいっている。
家にある観葉植物が俺より背が高い。
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