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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第三章 魔族と魔人編
34/63

31、三度旅立つ

王都カルネルが魔王ネルフェスに占拠されてから、一週間がたった。

難民問題や、魔族の問題など色々な問題があったが、その中でも特に大きかったのは物価が上がったことだった。


王都であるのとともに、大陸随一の貿易国であるカルネルは、隣国以外にも様々な国へと輸出を行ってきた。


その貿易国が壊滅したのだ。

詰まるところ、隣国の物価が超上昇した。

それは、王都の隣国の一つ、レンテという大きな街を含んだリロフ国もそうだった。


そのレンテに居座るベルとリーラ。

市場の前で、リエルネールは唸っていた。


「うーん…」


パン一斤が、400ヘルト。

流石におかしい。小麦の原産地のほとんどがカルネルということを加味した上でも、高すぎる。

400ヘルトといえばだ。超格安宿に三日泊まることができる値段だ。ただし辺境に限るが。


それが、パン一斤である。

流石におかしい。


「これ、もうちょい安くなんないすか?」

「無理だよ、ほら、買わんならさっさとどっか行きなさい!」


パン屋に値段交渉したが、あっさり蹴られた。


二人は、トボトボ宿に帰る。


「ここの宿代変わらないよね?」

「大丈夫、影響があるのは貿易品だけだよ。他は大丈夫だ」


宿のおばちゃんがそういうが、貿易品と言ってもほとんどの輸入をカルネルに頼っているレンテは、大体の衣服と食品とそれらの材料が物価高騰していた。


「…そろそろ、ここを旅立たないと厳しいね」

「向かうとしたら、カルネルとは反対方向じゃないとね」


二人は少し考え、リーラが発案をする。


「…アレアにしようか。あそこは貿易国でもあるし、ある程度は豊かだよ」

「なるほど、頭いいじゃんリーラ」

「だろ」


アレアとは、大陸内でちょうど真ん中に位置する、レンテを含むリロフのちょうど真上。

そこにある国だ。

はっきり言おう。田舎だ。

だけど、そんなことは関係ない。少しでも物価が安そうなとこに行くのがリエルネールである。


「んじゃ、食料はギルドからおろした金でなんとかするとして、俺は剣の修復に行ってくるから、リーラは自由にしてて」

「わかった」


先の戦いで、ベルの剣は刃こぼれしまくっていた。

リーラはすることがないので、衣服屋を彷徨くことにした。


「…魔族の王か…」


リーラは、独り言を呟いた。

今考えると、とんでもなく歴史的な瞬間に居合わせたんだと思い、複雑な感情になった。


くるりと、踵を返すリーラ。

今はなんか、ゆっくりしたい気分だった。

宿に帰り、しばらくベッドの中に丸まり、考え事をしていた。


「…何が理由だ?」


魔族だって、何の理由もなく魔族の拠点を作るわけではない。


今頃には先代の勇者パーティーが元王都へ向かっているだろう。

たくさんの襲撃を受けたら、いくら魔族の集団だって、5体満足とまではいかないだろう。


各国の領主は、次々と王都に軍勢を送っていると聞いている。

しかも、そのせいで国内は犯罪が多発しているらしい。


狂っている。魔族も、人間も狂っている。

先に、歯車を壊したのは魔族だ。

じゃあ、制裁を加えるべきは魔族になるのか。

それより先に、魔族を化け物として迫害した人間なのか。


わからない。

わからない。


「わからないなぁ…」


そのまま、リーラは少し眠ってしまっていた。


起きる。リーラは今何分寝ていたかを計算する。

この腹の減り具合は、二時間寝てたか寝てないかぐらいだろう。

ベルももう待っているだろうか。


立ち上がる。


宿のベッドから跳ね起きたリーラは、トタトタと杖を手に取り、荷物を持って、部屋の扉からでる。

外を出ると、ちょうどベルがいた。


「んじゃ、行こうか」

「アーリエにお別れしてきた?」

「そりゃ、もうね…」


ベルの顔が赤い。

なんか、あったみたいだ。


ニヤリと笑ったリーラ。


「よし、行こうか」

「あ、ちょ待って」


二人が北の城門を潜るために歩いていく。

その時、


「ちょっとごめんよ!」

「あ、はい」


いくつかの人が走りながら二人とすれ違っていった。


その遠ざかってく背中を見つめながら、ベルが言った。


「なんだろね、あれ」

「さぁ…」


二人は潜り、アレアに向かう旅に出た。

今度は、二人旅である。



ーー



30分ぐらい、遡る。


ワンピースをきた風の魔族、フェリオンは魔術協会の本部塔へ向かっていた。


「ここで問題起こせば、あの魔術師ちゃん来てくれないかなぁ」


魔術師ちゃんというのは、リーラのことである。

リーラはフェリオンに気に入られてしまったのだ。


その入り口へと近づいたその時、


「…おい、誰だお前は」


本部塔の前の衛兵二人がフェリオンに尋ねる。


「ちょっとね、ここに用事があって。通してくれる?」

「…そんな易々と通すわけないだろ」


2本の槍が、フェリオンに向けられる。

それを見て冷めた表情をした風の魔族。

地面に手を当て、詠唱する。


竜巻ア・カルフル

「なっ!?」


衛兵二人は、突如出現した竜巻に巻き込まれ、上空へと消え去ってしまった。

それを見届けずにフェリオンは笑った。

その視線の先には、本部塔のてっぺんがある。


「久しぶりの、城攻めだぁ!」


城ではない。


入り口を抜け、塔に入ろうとするフェリオン。


ドタドタと、塔の内側で音がする。

魔力を感じ、塔の中から新たな人間が現れた。魔術師3人だった。


魔術師はフェリオンの目が黒いのを視認する。


「お前!魔族か!?」


魔術師の一人が尋ねる。


「そうだよ、私はね、フェリオンって言って…」

火龍ル・セラム!」


フェリオンの回答を待たずに、魔術師の一人が魔術を放つ。

それは、炎の光線だった。ヴィアルムの焔龍の、劣化版である。


しかし、無詠唱の竜巻がそれを拒む。

その魔術は少しも魔族の体に触れず、炎が巻き上がり、魔力が霧散して消えてゆく。


「ぐっ…」

「ダメでしょ、挨拶中に魔術を放ったら」

氷の吹雪スカ・ラリル!」

土の雨シ・レラム!」


残りの二人の魔術師も、フェリオンに向け魔術を放つ。

お互いに小さな塊を降らす魔術だった。極端に、竜巻と相性が悪い。


「こりゃ、だめだ」


それらの魔術を竜巻で巻き上げ、塔にぶつけていく。


「なんかもう、飽きちゃったな」


その言葉とともにフェリオンは塔に手を向ける。

次の瞬間。


「はぁ!?」


魔術師の一人が塔を振り返り、嘆く。


轟音と共に塔は跡形もなく消え去ってしまった。

とてつもなく大きい竜巻が、塔を丸ごと襲ったのだった。


レンガがあたりに飛び散る。

たくさんの人々が上空から落下し、死んでいく。


あまりの驚きとフェリオンの魔力で、立ちすくんでる魔術師たちを尻目に、フェリオンは方向転換をして言う。


「じゃ、私は帰るね。さっきの酒場のお酒、美味しいんだ」


その後ろ姿には、とてつもなく大きい魔力が舞っていた。

そのことを知らないリエルネールの二人旅。


第三章が始まるよ!


〈裏話〉

•なぜ魔術協会を破壊したのか

特に理由はないけど、悪は罰されてほしいよねと言う思いを込めた。

腹いせというやつである。


•魔族とお酒

魔族はお酒が大好物。

普段は何も食べなくても生きていけるが、100年ぐらい酒を飲んでいなかったフェリオンはとても上機嫌だった。


来世は鳥がいいですね。できれば、渡り鳥。

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