間話②-当たり前だろ
女は、ある山の頂点にいた。
それは、とてもとても高い山だった。
草木の一つもない、岩だけで構成された山だった。
女の隣には、男がいた。
二人は、魔族だった。
「どうしたんだ、早いじゃないか。ヴァーテ」
「いやぁ?そうでもないよ?」
雲が真下を通過する。
男は、女のことをヴァーテと呼んだ。
男の魔族はふっと笑う。
「お前はもうちょっと長いと思っていたよ」
「先に行ったお前に言われたくないけどねぇ」
少しの間があり、男の魔族がヴァーテに問う。
「…魔族に天国はあると信じるかい?」
「どうしたんだい?エラネス教にでも入信するの?」
「いやぁ、違うさ。なんでもない。結果、ここなんだ」
男は、少し頭を下げて被りを振る。
ヴァーテはその顔を覗き込む。
「…人間は、俺らの存在を罪というらしい。どう思う?ヴァーテ」
「許せない、とでも言って欲しいのかい?というかそれは昔の話だ。700年も前の」
「お前はどうであれ、俺は、そう思ってしまったんだ。だから、あんなことまでしてしまったんだろう」
ヴァーテは頬杖をつく。そして、俯く。
「…もう、それを言わないでくれないか…」
「…すまない」
「いや、お前が謝ることじゃないな。私が悪かった」
二人の会話は、人間よりも人間味があった。
ちらりと、男の魔族はヴァーテの方向を向いた。
「…お前は、俺を許さないのか?」
「…当たり前だろ」
二人は顔を見合わせ、お互いにくすくすと笑った。
そして、次の雲が通過した時、風のように姿を消した。
…誰だ?この男?
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