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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第二章 黒のローブと賢者編
28/63

26、夜のパレード 前夜祭

それからしばらく経ち、パレード前日の夜。


警備隊が城壁のあたりを警備している中、カルネルの中のある一軒家に魔族たちはいた。

そこには、計画のために集められた、老若男女の魔族が揃っていた。


最も、歳を感じられる見た目ではないが。


その魔族の中でも、ヴィアルム、ディレン、フェリオンの3人から溢れるオーラは別格だった。

そして、家の端の少し離れたところにいる魔族も、強いオーラを持っていた。

全員、地べたに座り込み、何やら話していた。


「大丈夫なのか?もし近くに魔術師なんていたら、バレてしまうぞ?」

「多分、大丈夫。俺らは魔術を使ってないとほとんど魔力が溢れない」


ディレンの問いかけにヴィアルムは答える。

そのあと、退屈そうにゴロゴロ寝転がっているフェリオン。


「ねぇ、私市場回りたいんだけど、早く解散していい?」

「ダメだ」


ディレンが寝転がってるフェリオンを指差し、嘆いた。


「くそ、こいつ昔からヴァーテのいうことしか聞かないんだから本当に」

「ヴァーテはもういないからねぇ…、その敵討もしたいね、ディレン」

「俺は、いい。ヴァーテはいつも話が一方通行なやつだった」


ディレンは昔のことを思い出し、ため息をついた。

ヴァーテは良くも悪くも、慕われていた。


「まあ、いい。作戦としては、王都カルネルの占拠だ」

「…なるほど?」

「詳しい説明は?」


ヴィアルムの言葉に別の二人の魔族が問う。


「…それは、あの人から聞いとくれよ」


ヴィアルムが視線をやった先には、一人離れた場所で椅子に座っている、魔族だった。

他の魔族よりも、少し低い声だ。


「…この、作戦はだな…」


話の話題が自分に向いたと感じた男は、椅子から立ち上がり、集団に近づいていく。

そして、グーの手を上げた。

人差し指を上げる。


「現勇者、賢者の殺害」


中指を上げる。


「新国王の殺害、そして…」


薬指を上げる。


「カルネル城の占拠が絶対に必要な条件だ」


カルネル城は王都カルネルの中心部に位置する、とても大きな城のことだ。

警備が厳重だが、パレードをしている際にはそちら側に警備も集まる。


そこを、突く。


「では、これから各々の配置と作戦の詳細を確認する…」


男は、膝を曲げしゃがみ、13名の魔族をにらむ。


ーー


その後、なんだかんだで、1日が経ち、パレード開始まで、残り一時間となった。


「これは…すごい人だかりだな」


レノフが宿の窓の中から溢れかえる人を見て、とにかく驚いていた。

夏になり、日が出る時間が長くなったので、午後6時になっても、まだ空は少し明るい。


パレードまで残り十分になると、大通りの真ん中が開かれた。この道を凱旋するのだろう。

あまりに多い人を見て、近くで見る気が失せた3人は、宿の2階からパレードを見ることにした。


「おー!すごい!見てあそこあそこ!」


リーラが指差す先には、国王が乗った台車を扇動する、兵隊の姿があった。


「こりゃ、まぁ人が多いねぇ」


ベルが窓の外へ上半身全てを乗り出して、言った。


「ん?」


リーラの視線の先には、大通りの真ん中。兵隊が通る前の道に、一人の人間がいた。


「ねぇ、あれ、なんだろう?」

「…わかんない、迷惑客じゃない?」


レノフも身を乗り出し、道の真ん中にいる男をじーっと見つめた。

…白いローブ、黒い髪。


「おい!あいつ…」


レノフの叫びのすぐ後、魔族が魔力を放出する時特有の、悪寒が魔術師二人に生じた。


「…魔族だ!」


レノフが声を絞り出して叫んだ。


「魔族!?」


ベルがすぐさま、目線を大通りに移す。すると、その人間は炎を出していた。


焔龍フ・ラグトル


ヴィアルムの掌から炎の光線が放出される。

パレードの軍列が崩れる。

驚きは驚きを、不安は不安を呼び、パレードを見にきた人の群れが崩れていく。

みんな、四方八方に逃げてゆく。


「ベル!レノフと一緒に他の魔族がいないか探しにいって!」

「なんでだ?」

「三日前!魔族が複数体いたって言ってたろ!」


それは、警備隊が言っていた言葉だった。

何日の前のそれを、リーラは覚えていた。


「お前はどうするんだ!?」

「そりゃもちろん!」


リーラは杖を持ち、助走をつけて走り出す。目標は窓の外だった。


「止めに行くんだよ!あれを!」


魔術師は宙に浮かんだのと同時に飛行を使い、パレードの中心へ向かっていった。

リーラが小さくなっていくのを見届ける前に、ベルとレノフは互いに見つめあって、頷いた。


「行くぞレノフ!」

「おう」


二人も宿の扉を開き、外へ向かっていった。

既に真っ暗になった空の下、魔族の陰謀が動き出した。


ーー


時は少し前に遡り、パレードが始まる、30分前。

治安警備隊は、城外で忙しかったのか、城の中には誰もいなかった。

カツカツ、と靴の音があたりに響く。

ヴィアルムとあの人こと、男の魔族は、警備の薄いカルネル城の玉座の前にいた。


「…んで、結局何が目的なんだ?ネルフェス」


今回の作戦の指揮官の男はネルフェスといった。

ネルフェスは、不意にヴィアルムに尋ねた。


「…約700年前、初代の勇者と賢者によって、当時の魔族の総大将、アラグラテルが殺された。なぜだと思う?」

「なんでって、そりゃ実力の問題じゃ」

「違う、違うんだヴィアルム。アラグラテルには、魔獣を指揮する力はあっても、魔族を指揮する力がなかったんだ」

「…何が言いたい?」


ネルフェスは玉座の手すりに手を当てる。

それは暗闇をも反射する、黄金でできていた。


「アラグラテルに足りなかったのは、魔族の中での、権力と名声だった」


無言でネルフェスを見守る、ヴィアルム。


「圧倒的な権力と名声、人間の間でそれを持っていたのは、王という地位の人間だった」

「…なるほど?わかってきたぞ?つまり、お前は…」


ネルフェスは誰もいない玉座に腰掛け、足を組む。

一人だけがこの権力者を見守る中、ネルフェスは高々と宣言した。


「ヴィアルム。私は王になる。魔族の中の王、初代魔王になるぞ」


〈裏話〉

•ネルフェスの名前

こいつの名前をどうしようかずっと考えていた。

本当にずっと悩んでいた。語源は、どこかの言葉で緊張という意味のナーバスをもじったもの。


•前夜祭と後夜祭はわかるけど…

前夜祭と後夜祭はわかるけど、当日って、なんていうんだ!?

当夜祭か?

カタカナが多い!

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