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リエルネールの二人旅  作者: せきち
第二章 黒のローブと賢者編
19/63

17、素直な弟子と忘れた師匠

黒のローブの男の名前は、レノフと言った。

職業は魔術師。


なんだかんだあり、リエルネールに入ることにした。

早くもタイトル名が揺らぐ。


試しに、とハイウォルフのクエストを申し込んだ。

城門を抜け、指定の森林へ移動する。


「レノフ」

「なんだ、ベル」

「戦闘経験は?」

「ない。だけど、俺は強いぞ」


その言葉が怪しいベルはリーラの方向へ振り返る。

リーラはブンブンと顔を上下に振っていた。

基本的に、魔力の量は魔術を使った回数だ。

こいつからは、リーラよりもすごい魔力を感じる。

強いけど、未熟な魔力だ。この感じ、リーラよりも若い。


「…レノフって何歳?」

「13歳」


少し間があり、


「「13歳!?」」


二人は叫んだ。

13歳なんて、まだ学生だ。


「学校は!?」

「言ってない。俺は孤児院出身だ」

「なんで冒険者になれたの!?」

「年齢を詐称した」


まずい。このパーティー、犯罪者が一人混じっている。

なんとなく、レノフが置かれていた状況が理解できた。

こいつは、きっと小さな頃から修羅場に囲まれて暮らしたのだろう。


「レノフの適性って何がある?」

「五つ」

「………」


リーラは言葉を失った。

五つというのは、全部である。

嘘か本当かもわからない淡々とした口調でいうレノフに、リーラは眩暈がした。

もし、それが本当だとしたら。こんな逸材、国が見逃すわけがない。

賢者だって目指せる。


「それは…強いんだねぇ」

「それはない、お前の方がずっと強い」

「リーラな」

「…リーラは俺よりずっと魔力が濃い。きっと、とんでもなく応用が効くんだろう」


そーっと、リーラはベルに耳打ちした。


「このガキ、賢いわ」

「あっそ」


そんな話をしあいながら、30分ぐらい歩き、三人は指定の森林へ辿り着いた。


「きたぞ」


三人が草木に隠れてしゃがむ。

その向こうには5体のハイウォルフがいた。


「じゃあ、私は何もしないから。レノフがやってみて」

「わかった」

「んじゃ、行くぞ」


と言ってベルが飛び出す。


ベル、速い。

ハイウォルフが反応する前に、ベルの一閃が魔獣の首を落とす。


「あいつ、強いんだな」

「ほら、ぼーっとしないで!」


レノフは素手で、魔術を繰り出した。


火の矢ル・セーラ


炎魔術の遠隔技だ。炎の軌道がそのあとを追う。

命中。だが浅い。


「じゃあ、次は実体がある土魔術!」

「わかった」


レノフは口調が偉そうだが、聞き分けのいい子供だった。

すぐさま、空中に土を固めた。


風の渦リ・ラームで威力をあげて!」

土の棘シム・ラーム


レノフはさらに詠唱を重ねる。


風の渦リ・ラーム


放たれた土の棘は風魔術により推進力を上げて勢いよくハイウォルフの顔面にぶつかる。

そのまま、ハイウォルフは倒れた。


「ナイス、レノフ!残り4体!」

「はい!」


いつの間にか敬語になっていたレノフは同じ魔術で2体のハイウォルフを倒し、残りをベルが切り伏せた。


「おっけーナイス!終わったよ!」


ベルが二人に向かって叫んでいる。満面の笑みだ。

リーラは少し下を向いて、レノフにいった。


「頑張ったな、レノフ」

「あぁ、師匠」


いつも通りの無表情でレノフは爆弾を投下した。

リーラはその言葉に再び固まった。

ついでにその話を聞いていたベルも固まった。


「ん?師匠?」

「俺はリーラに今までで初めて魔術のことを教えられた。だから師匠だ」

「…師匠、ねぇ」


響きは悪くない。

それどころか、少し嬉しい。

今まで教わることしかされなかったリーラも、教えることに快感を覚えていた。

二人の利害関係は今、一致した。


「よろしい、弟子よ」

「はい師匠」


二人の中で何かが解決したと見たベルは、二人に話しかける。


「よし、今日は初の討伐記念に飲みに行くぞ」

「ベル、俺は酒が飲めない」

「大丈夫、このパーティー全員未成年だ」


ギルドで換金して、夕方に三人は打ち上げを始める。

魔術師の二人は今まで周りにいなかった光魔術について話し合っている。


「そういや、レノフ。光線ラ・ルーシャって使える?」

「あぁ」

「おぉ!あれは魔獣との戦いで重宝されるから、光線の技術を上げていこう」

「わかった、師匠」


二人が魔術トークで盛り上がっているのを見て、寂しいベル。


「ベルせんぱーい」


そんな中、アーリエがやってきた。


「え、なんでここに?」

「こっちにベル先輩の気配を感じたんで」

「あ、へぇ」


相変わらず、愛が重いというか、怖い。

ベルの隣に座り、さりげなく距離を詰める。


「お酒飲みますか?」

「お前、俺の年齢知ってるだろ」

「いや、酔って乱れてるベル先輩を見たくてですね」

「何を言ってるんだお前は」


そんな中、レノフはアーリエに目を向ける。


「誰だ、こいつは。師匠」

「あぁ、レノフ。こいつはベルの彼女のアーリエだよ」


リーラがさりげなく説明する。

アーリエはぺこりと頭を下げる。


「こんちわ。誰ですかこの子」

「こいつは新しいメンバーだよ」

「少し、若すぎませんか?」

「…大丈夫だよ、大丈夫」


ベルはリーラの鋭い言葉を交わし、誤魔化すために水を飲んだ。

レノフが言った。


「俺はてっきり、師匠とベルが付き合ってるんだと思ってた」

「…あんまそういうこと彼女の前で言わないほうがいいと思うよ?君」

「そうか、すまん」


根は素直なのだ。

こうして、四人での飲み会は夜通し続いた。


この時すでに、リーラは忘れていた。

最初に会った時レノフのローブについていた、血のことを。


〈裏話〉

•レノフ

身長、151センチ。今までの登場人物の中で一番背が低い。

親が小さい頃からおらず、孤児院で過ごす。

5歳の頃に魔術の才能に目覚め、魔術師として将来に期待されていた。


期待されていた、のだ。


•チャームポイント

レノフのチャームポイントは、軽いくせ毛なのとジトっとした、怖い目。

流石のショタコンもこれにはニッコリ。

二人旅とは…?

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