間話①-魔女の相場
ある老婆は、のどかな田舎で暮らしていた。
レンテの外れの村にある、小さな民家だった。
お湯を沸かし、ティーカップに紅茶を注ぐ。
「ふぅ…」
椅子に座り、それを啜って、一息ついた。
静かな、とてもいいひと時だった。
そんな中、扉をノックする音がした。
「はい、いるよ」
そう返事すると老人が入ってきた。
老人は入ってくるなり、親しげに、よぉ、と言ってきた。
「なんだ、お前か」
「来て悪いか」
紅茶をテーブルに置いて、その老人に顔を向ける。
髪の毛は白く、しわも深かった。
歳をとったな、と老婆は内心笑って、言った。
「いや、勇者様がなんでこんなとこにいるんだって思っただけよ」
「俺は、勇者の成り損ないだよ、いい加減そのいじりやめろ」
よいしょ、と言って老人はそこら辺の椅子に座り込む。
老婆が尋ねる。
「どうだ?奥さんはまだ元気にしてるか?」
「あぁ、俺も家内も、まだまだ長生きするさ」
「ならいいさ」
「…だけどなぁ…」
老人は窓の外へ顔を向けた。
「お前は独り身だろう、最期の時にはどうするんだい。俺も生きてるかわからんぞ」
かっかっかと笑った老婆。
シワシワの手で紅茶を手に取った。
「大丈夫だよ」
紅茶をもう一回啜って、老婆は言う。
「魔女ってのはね、長生きするって相場が決まってんだよ」
何を思ったのか、老人はその言葉を聞き、静かに笑っていた。
なんだ?今回の話…?
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