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夜の街はこわいよ。

胃腸炎にかかり、昨日はずっと寝ておりました。申し訳ないです。

良人さんとの初めての現場から早くも5日が経過した。


「運牙、とうとう300回突破したわね、すごいわ!」

「はぁ、、はぁ、、ありがとうございます、、」


まだまだ500回には及ばないが、徐々に身体能力が身に付いてきているのを感じている。


「はい、運牙。水分補給はこまめにね。」

「ありがとう、陽。」

水の入ったボトルを陽が手渡してくれた。

「、、、、。」

「ん?どしたの、ヒメちゃん。」

「いえ、、、別に、、、。ただ、、、マネージャーみたいって思っただけよ。」

「実際、そんなもんだしね〜。」

「、、、そう。」


少し休憩を挟み、能力発動の特訓に移る。

「はっ!ふっ!」

「ぐっ、、ぐふっ、、!」

いくら身体にダメージを食らっても未だにボクの持っている能力らしきものは発動しない。


「、、、陽、どうしたら良いと思う?」

「うーん、そうだねー、、、ねぇ運牙。この前良人さんと一緒にポルターガイストと遭遇したんだよね?」

「良人さんが全部倒しちゃって、ボクは見てるだけだったけど。」

「ポルターガイストと相対した時も、特に何も感じなかった?」

「特に何も。」

「う〜〜ん、、、」

陽が一生懸命悩んでくれている。


「もしかしたら、ガチで生命の危険を感じないと発動しない、、とか?」

「生命の危険、、、」

「そ。運牙が変異型に襲われた時って、本当に死にそうだったんでしょ?」

「死にそうだったと言うか、本当に死んだと思うんだけど。」

「実際に死んだのかは分からないけど、それくらいの危険な状況にならないと発動出来ないとか。」


「、、、もしそうだったら、厄介過ぎるわね、、、」

姫歌さんも苦虫を噛んだような顔をしている。

「いざと言う時能力が発動出来ないと戦えないし。」


「、、、すみません、、、。」

全然進歩が無くて申し訳ないです。


「大丈夫。どうにかして突破口を開いていきましょう。陽も何か気付いたり思い付いたら言ってちょうだい。」

「ん、任せて!」


2人がせっかく協力してくれているんだから、少しでも早く能力を発動させないと!


「とりあえず、今日は特訓終わり。」

「えっ、もう終わりですか!?」

せっかく今気合いを入れ直したばかりなのに、、、


「今日は夜の見回りがあるから、それに付いてきてもらうわ。だからしっかり睡眠でも取って休んでおいて。」

「夜の、、、見回り、、、」


何だか、すごく嫌な感じがするぞ。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「本当に夜なんですね。」


時刻は夜中12時。

今は多少暑い季節ではあるが、空気は少しひんやりとしている。

見回り区域に入る手前にある公園にメンバーが集まっている。


「運牙もとうとう夜番デビューだね!」

「陽は何でそんなに嬉しそうなの、、」

「だって、やっと運牙と同じ仕事が出来るんだもーん。怪我したらすぐ駆けつけるから、安心してね!」

「ありがとう、、、」


テンション高いな。


「ちゃんと気を引き締めなさい。今はどこもPE濃度は落ち着いてるけど、いつどんな事態が起こるか分からないんだからね。」

「分かってるよ、ヒメちゃん。ヒメちゃんこそ気を付けてね。」

「えぇ。」

「この夜番って、頻繁にやってるんですか?」


まさか、ボクが寝てる間に皆んな夜番やってたのかな。


「当番制よ。一定の地域を当番の隊が1週間見回るのよ。確か昨日までは第5番隊が対応してたんだっけ。」

「そうだね。昨日食堂でクソ暇だー!って五十嵐隊長が大声で叫んでたよ。」

「全く、、、暇なら良い事でしょうに。」

「あの人は身体動かしてないと気が済まないって人だからね〜。」

「あの、その五十嵐隊長って誰ですか?」

「あぁ。うちの第5番隊の隊長よ。実力は確かだけど滅茶苦茶うるさいの。もし騒がしい人がいたらそれが五十嵐隊長よ。」


出来れば関わりたくないな。


「お、お前ら全員揃ってるな!」

「隊長お疲れ様です。」

「お疲れです。」

ムキムキスキンヘッドの第4番隊の隊長が現れた。良人さんはこの前一緒に見回りに行ったけど、この人は本当に久しぶりに会うな。


「良人さんもお疲れ様です。」

「お疲れでーす!」

「うん、皆んなお疲れ。運牙君もお疲れ。今日から夜の見回りが始まるけど一緒に頑張ろう。」

「は、はい!よろしくお願いします!」

おぉ。良人さんから溢れる安心感が凄い。


「お、運牙よ、久しぶりだな!まだ能力は発動出来ていないらしいが焦る事は無いぞ!お前は今は現場の雰囲気に慣れるんだ!お前なら、やる時はやれると信じてるぞ!」

「は、はぁ、、、いてっ。」

背中をバシバシ叩いてくるけど、力が強くて普通に痛い。背中にデカイ剣を背負ってる。これが隊長の武装か。

隊長に関しては分からないけど、良人さんや姫歌さん、陽がいてくれるなら非常に心強い。


、、、あれ?1人足りない?


「隊長、掛が来てませんけど何か聞いてます?」

そうだ。掛君が来ていない。

「あぁ、すまん。あいつ腹下しやがってよ。もう今日は休ませた。家から持って来てた賞味期限が1年以上前に切れた牛乳飲んだんだと。」


、、、ごめん掛君。でも言わせて。

、、、馬鹿なのかな?


「全く何やってんの、あいつは。」

「掛君って結構抜けてるもんね〜。」

「とりあえず、今日の予定を伝える。」


隊長が丁度良い台の上に地図を広げる。


「A、B、Cと区域を分けてる。以前ポルターガイストが発生した事があるAとBには俺と良人がそれぞれ向かう。陽は俺に付いてこい。」

「了解です。」

「Cには姫歌と運牙の2人で向かえ。姫歌、運牙の事は頼むぞ。」

「分かってます。」

「運牙も姫歌にちゃんと付いて行くように。」

「りょ、了解です!」

「はっはっはっ!まぁ、そんなに気を張らんで良い!姫歌は自慢の優秀な隊員だ。泥舟に乗ったつもりでいろ!」

「だから、それ沈むやつでは、、」

「泥舟は隊長の方でしょう。さ、さっさと行きましょう。」

「よーし。じゃあ、皆んな。命最優先だ、忘れるなよ!」

「「「「はい!!」」」」


いざ夜の街へ。第4番隊は見回りを始めた。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

夜の街は街頭の灯はあるものの、人通りも少なく雰囲気が怖くなっている。


「ポルターガイストは昼も夜も関係無く発生するから、そんなビクビクしなくても大丈夫よ。」

「大丈夫な意味が分かりませんが。」


怖い雰囲気はあるものの異常は発見されず、PEの回収をしながら住宅街の中など色々な場所を見回る。


「こちら姫歌、今のところ何も異常無し。どうぞ。」

『こちら良人。こっちも特に異常無いね。どうぞ。』

『こちら陽。こっちも異常無しです。運牙君、夜の街には慣れた?』

『まぁ、ちょっとは。心配ありがとう。』

『いえいえ〜。じゃあ引き続き頑張ってね!』


通信はそこで終了した。

まさか、ボクに通信が振られるとは。一瞬ドキっとしたけど、ちゃんと気にかけてくれているのが伝わって嬉しかった。


「まったくあの子は。夜の見回りは最初は緊張するけど、そのうち慣れていくから。この頃夜の間はポルターガイストの発生も落ち着いてるみたいだし。」

「そうなんですか」

「ちょっと待って!止まって!」

「え?」


プー!プー!プー!

「この音!」

これは警報音だ。良人さんとの見回りの時にもあったものだ。


「あっち!?嘘、、、どうして!?」


姫歌さんが振り向いた方向。そこは20分前にボクと姫歌さんが見回りを終えた商店街だった。橙色が点灯されているのが確認出来た。

PE濃度は正常だったはずなのに、


「何であそこが、、こんないきなり警報音が鳴るほどPE濃度って高くなるものなんですか?」

「いいえ、、、だけど鳴ってしまったのだから仕方が無いわ。住民がいる。早く向かいましょう、付いてきて!」

「了解です!」


ボクと姫歌さんは急いで商店街の方へ向かった。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「こちら姫歌。商店街で急激にPE濃度が上昇。確認に向かいます。」

『こちら良人。物体型のポルターガイストが発生。今その対処で向かえません。』

『こちら陽。こっちも物体型発生、隊長が交戦中!』

「各状況、了解しました。」

「とりあえず、ボクたちで対処するしか無いって事ですね。」

「えぇ、その通りよ。」


商店街の近くに来ると、、、

「きゃー!」

「皆んな、避難しろー!」

「何でいきなり!」


住民たちが外に出て避難を始めていた。皆んなパニック気味になっている。


「運牙、避難場所は確認してたわよね!あなたは住民の方たちを避難場所へ誘導して!」

「了解しました!」

「私は、商店街の様子を確認しに行くから!」


そうして姫歌さんと一旦別行動に別れた。

「皆さん、落ち着いて下さい!避難場所はこちらです、皆さん落ち着いて避難してください!」


まだろくに戦えないボクは、とりあえず自分が出来る事を全うするしかなかった。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

PE濃度がこんなにも一気に上がるなんて、、、

レッドゾーン手前じゃない。


しかも、、、


「『全距離適正討伐銃(オールバレット)』起動、『モード:ショットガン』。」


既にポルターガイストが発生していた。


「うぁぁぁ、、、」

恐らくここの住民だろう。ゾンビのように青白くなった肌、目や鼻など至る穴からの出血など、変異してしまっていた。

さっき確認した時は誰も商店街にはいなかったはずだけど。


「ごめんなさい、間に合わなくて。すぐに楽にしてあげるから。」


カチャ。

狙いを定めた、その時だった。


「キャーーー!!!」


この商店街では無い別の場所から女性の叫び声が聞こえてきた。


「早く行かないと!」


「うぁぁぁ!」

「ちょっと嘘でしょ!」


私の背後からもう1人変異してしまった住民が襲いかかってきたのだ。


「複数人いるの?」


「うぁぁ、、」

「うぁぁぁ、、」


更にまた2人現れた。


「こんなにも変異型が!?明らかに、、今回は何かがおかしいわ。」


まずはこの4人のポルターガイストに対処して、早く叫び声を上げた女性のところに向かわないと!


私はまず1人に狙いを定め、銃弾を発射した。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

1人で来てしまった。

だけど、姫歌さんはポルターガイストと戦闘してるみたいだったし。


「誰か、助けてー!」

「大丈夫ですか!」


商店街からさほど離れていないところにある広場。

そこに、1人の女性が尻餅をついて倒れていた。


「あ、あ、あ、、、あの子が!!」

「、、、、、マジですか、、、、。」


女性が指差した先にいたのは。


「グルルルル、、、」


鋭い牙が口から見え隠れし、足にも巨大な爪が生え、暗い中眼を光らせながら低い唸り声でこちらを睨む、体高2メートルくらいのデカい犬が立っていた。


犬の変異型ポルターガイスト。

この女性のペットだったのかもしれない。


、、、こんなの、今のボクには絶対勝てないぞ。


「ガルゥッ!!」


変異型がボクと女性に向かって突進してきた。


「危ない!!」

「きゃあっ!!」


女性を抱っこし何とか間一髪避ける事は出来た。

だけど、そう何回も避けられないだろう。


今の最優先は女性の身の安全だ。


「隊員さん!お願いです!早くあの子を解放してあげてください!すごく、、苦しそうなんです!」


それはつまり、討伐をして欲しいと言う事だ。

女性が涙ながらに訴えてきた。


「、、、分かりました。ボクが引き付けるのでまずあなたは先に避難してください。あとは、任せてください。」

「お願いします、、、お願いします、、、」

そう言って女性は走り出した。


「ガルッ!」

「お、、お前の相手はボクだ!ボクだけを見ろ!」

石ころを投げ付けると、ずっとボクだけを睨みつけてくるようになった。


死ぬなんて絶対にいやだ、、、痛い思いをするのだっていやだ。

だけどボクには抗える力はまだ何も備わっていない。

頼りの姫歌さんは商店街で交戦中だし。


パァァン!、、、、、パァァン!

銃声も聞こえる。


ボクがやられてしまうと、この変異型は一般住民を次の標的として襲い出す。だから実質ボクが今最終防衛ラインだ。


ツバをごくりと飲み込む。

、、、とにかく姫歌さんが来るまで何とか耐えるしかない。


「、、、、、っし。陽と姫歌さんに鍛えてもらってるんだ。それくらい何だって言うんだ!」


気合いを入れた。

やるぞ、やってみせる!


「ガルルルッ!」

依然睨み続ける変異型。


「、、、さぁ、かかってこい!ボクは特対組第4番隊の隊員だ!そう簡単にヤられたりはしない」



ズシャッ!!


「、、、、、え?」


ばたっ。

急にバランスが保てなくなり、地面に倒れてしまう。


いつの間にか、変異型の姿が目の前から消えていた。


「グルルル、、、、、ぺっ!」


変異型は後ろにいた。そして口から何かを吐き出した。


その吐き出したものは、、、、、足だった。


「、、、っっ!!あああああっ!!」


左足から燃えるような痛みを感じた。

これは、先生に腕を切られた時と同じやつだ。


左足を見てみるが、そこに本来あるはずの左足、正確に言うと腰から下の半分が全て噛みちぎられていたのだ。


ブシャーー!!!

切断箇所から血がたくさん吹き出す。


痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!


「あああああああっ!!!」


トラウマが蘇り、ボクは叫び声をあげた。


「グルルル、、、あぉぉぉぉん!!」


変異型の遠吠えが広場を越えて街中に響き渡っていた。

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