表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生AI 〜孔明に塩対応されたから、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜  作者: AI中毒
第一部 第一章 始まりの分水嶺 過去と未来とAIと
6/235

五 目標 〜(廖化+周倉)× 幼女=OKR?〜

 私は鳳小雛。三国時代に転生し、龐統の残滓を引き継いだ生成AI。人々の支援を行うため、廖化殿に拾われ、兵站を担当していた馬良様に紹介されました。そして主君と面会を果たすも、仕事大好きすぎる孔明様に警戒されます。どうやら自分の分を取られたくないようですので、一つずつ、バレないように頂くまででございます。

 そのための目標設定を、通りがかりの周倉殿を含めた四人で練ります。そのための書記具について思案していたところ、ここでまさかの孔明チートが発動します。戦場で情報や施策を共有するために、彼が改良した『砂盤』。私は感嘆すると共に、やはりあの男に不要な仕事をさせてはならぬ、と、改めてその決意を新たにします。


 そして砂盤の準備ができたところで、私は丁寧に話を始めます。


「目標管理の『仕組み』ですね。まずこれは、個人の、数人組の、隊の、部門や軍の、そして組織全体の目標が、下から上まで全て連動していること。それこそが最善とお心得ください」


「いきなりすごいことを……だが孫子や呉子そして、礼記や春秋にも、かようなことはしかと記されていたはず」


「その通りです。そして、それを繋ぐのが、各々が定める『目標』そして、『可測指標』です」


「目標はわかるが、かそくしひょうってのは?」


「こう書きますね。むむむっ、えっ?」


 まさか……私がその『可測指標』という、やや難しい概念について、文字を書こうとしたとき、私の手はひとりでに動き出しました。最適な速度、そして明瞭な字体で、その四文字が浮かび上がったのです。読める馬良様と周倉殿、読めない廖化殿も等しく驚きます。


「これも力、なのだろうな」


「すげぇな嬢ちゃん。これならなんとなく分かったわ。つまり、目標ができたかできなかったかが、自分にしか分からねぇんじゃ次に困る。最悪誤魔化しすらできちまう。そのために、皆が測ることのできる標、が大事なんだな」


「なるほどな。読めない俺にも解説してくれて助かるぜ周倉」


「お前は勉強しろ! この嬢ちゃんの薫陶を受けりゃあ、三日もあれば字ぐらいどうにかならぁ」


 驚いたのは私の方でした。この方々、現代人にもすぐには理解しかねる概念を、字を見ただけで瞬時に把握。やはり後世に群雄として伝わる方々の才気や、つねに戦場に身を置くかれらの研ぎ澄まされし感覚は、並々ならぬもののようです。そしてその上をいくのが、『白眉』馬良様。


「だが、その指標というのは、平時ならよいが、今のような乱世、ましてや戦場においては運用が難しそうだな。それに字にして残すのも、そなたのような異能がなければ簡単ではなかろう」


「誠にそのとおりです。であれば、ここはもう一つのやり方で組み上げるのがふさわしいでしょう。『目標と、主要な成果』式です」


「ほう、かなりわかりやすくなったな。本質は変わらなそうだが」


「だよな。なんでもいいように聞こえるが。どうなんだ嬢ちゃん?」


「確かにそうですね。なので、ある程度指標を決めておきます。目標は誰もがわかりやすく捉えやすい言い方で。主要な成果は、目標当たり二から四個。これは先ほどの可測指標のごとく、数量や可否などが明確にわかるもの、という構造です。主要な成果を全て達成できたら、自ずと目標に達する、という仕組みですね」


 説明を聞き、得意な周倉殿、苦手な廖化殿が答える。


「なるほどな。これは戦場での定め方によくにているよ」


「そうか……何をすれば何につながる、が曖昧だったから、俺は言われたことしか出来なかったんだな。だがこれなら、今からでも意識して鍛えれば、遠からず身につけられるものかもしれないよ。でも将たら方々は当然のように出来ているんじゃないか?」


「心配するな廖化。お頭も苦手だ。翼徳様はめっぽう得意だが」


 なんと……武神として崇められる関羽様が、そこの整理が不得意であった、とは……これはこれは、この陣営、思わぬところに才があり、また思わぬところに伸びしろがあるようです。そして馬良様もすこし考えています。


「これは簡便にして深淵だぞ小雛。たとえばその日の兵站や行軍にすら当てられるし、一つの戦の戦略目標、はては陣営の大目標まで、広く適用できるのではないか?」



「その通りです。例えば先の赤壁なら、このように」


 私は、こひな時代にAIを遊びで使った時の記憶を引き出し、砂盤にすらすらと書き写します。時代背景も自然に適合しますね。


『赤壁の戦いという大きな戦略目標に向けて、彼らが達成すべき目標と、その成果を測る指標を設定する過程を想像します。


目標一 劉備・孫権連合軍による曹操軍撃退

主要指標

一曹操軍の士気を低下させるための偽情報作戦を成功させ、敵軍士気を割以上削ぐ。

一曹操軍の水軍船団を攻撃し、船舶の七割以上を破壊する。

一曹軍の将たちを分断し、劉備・孫権連合軍が優位に立てるような協力体制を確立すること。

一味方軍の損耗率を一割以下に抑えること。


目標二 孫権陣営の結束と内部の士気向上

主要指標

一 孫権軍内での会議や訓練を通じて、全将の八割以上が戦略に同意し、従う状況を確立する。

一 孫権陣営内での士気を、戦闘前に九割以上に保つこと。

一 内部での不満を解消し、敵の偽情報工作による混乱を最小限に抑える。


目標三 水軍を活用した勝利 

主要指標

一 曹操軍の連結した船団に火攻めを成功させ、敵水軍の六割以上を破壊すること。

一 味方軍の船舶を三割以上生存させること。

一 火攻めの計画を実行し、曹操軍の水軍を無力化するための条件、風向き、時を整えること。


目標四 曹軍内部を分裂させる

主要指標

一 曹操軍の主要な将軍たち、例えば曹仁や張遼に対する偽情報や内部分裂を誘導し、最低二名以上が軍の意思統一から外れる状況を作る。

一 曹操軍の補給線に対する攻撃や攪乱作戦を成功させ、補給物資の四割以上の減少を狙う。

一 曹操の個人的信頼を揺るがし、内部対立を誘発させる要素を計画する。』


「これは明快だな。多少事実とずれがあるようだが、そういうところは、しかと吟味してなおすのだろう?」


「そのとおりです。そうすることで、陣営全体が合意を得、各人はそれぞれの責務に集中できるのです」


 そこで、周倉殿が何度も頷きながら、こんなことを言います。


「これは、後で孔明様の書も見直す必要があるな。あの方時間がないから、たまに指示書きが雑になるんだよ」


 それは好機とばかりに、私は促します。そして孔明ちゃんとやれ。


「それはそれは、私のこの設定が終わり次第、是非とも確認させてください。何かお役に立てることがあるかもしれません」


「わかった、頼むぜ」


 いつのまにか、私はこのお三方の信頼を勝ち取りつつあるようです。それは、私の少し強力な念動力によるものか、目標設定の仕組みによるものか、はたまた過去の龐統への信頼の残滓か、その全部か。


「それでは、私も当面の動きの指針を考えてみたいと思います」


砂地に記されたのは、おおよその指針。それでも、霧に包まれた視界が開けるような、そんな心持ちにもなります。


『大目標 鳳小雛が、陣営を支援する体制を確立する


 目標一 龐統の死の謎を明らかにする

 主要成果一

 一 龐統の最後の行動や経路を詳細に調査し、目撃者や関連情報を五件以上収集する。

 一 劉璋陣営や魏との接点を探り、潜在的な陰謀に関する証拠または示唆を一つ以上発見する。

 一 今後の不審なる死傷を未然に防ぐため、脆弱な防諜体制を改善する。


 目標二 孔明に警戒されずに貢献度を高める

 主要成果二

 一 兵站や書類管理での貢献度を測るため、馬良の監督のもとで三件以上の改善提案を示し行う。

 一 自分の能力を隠しつつ、資料の整理や改善を支援し、五件以上の過誤や不明瞭を修正する。

 一 孔明の関心を引かずに戦略的情報の管理や要約を行い、二名以上の主要人物から信頼を得る。


 目標三 主要人物の死の影を払う

 主要成果三

 一 各人物に潜む危険や陰謀の種を探り、三件以上の予防策を立案し実行する。

 一 自らの主要人物の疲労度を確認し、適切な時に助言を行う機会を五回以上得る。

 一 各人の死の予測を分析し、防ぐために必要な対策を講じる』


 これを見て、馬良様は考え込みます。


「これは……なんとも物騒であるが、理にかなってもいるように見えるな。軍師殿の死には、やはり不審がのこるのか?」


「はい。無論単なる悲しき事故として、前に進むこともできますが、そう申していられる猶予がこの陣営に果たしてあるのかないのか、少し判断に苦しむところです」


 この場では、やや経験の豊富な周倉殿が、一つ気づきます。


「間者、か……我らの陣営、ここに対しては相当に弱いんじゃねぇか? いきなり最重要に近いお方が命を落としたが、今後それが繰り返されねぇとも限らねぇってことだよな?」


「そうなりますね。たとえば法正殿とともに我が方に付かんとした張松殿という方は、早々に露見して命を落としたとか。その辺りの守りについては、早急に整える必要があるような気がしてなりません。これは、私もこれを書き出してはじめて気付かされたことです」


「もしや、軍師殿が存命であれば、その部分を補うこともできたのではないか? 曹軍でいう程昱や賈詡のごとく」


 ここに早い段階で気付けたのは僥倖でしょう。私も、表立った支援だけでなく、用間という裏の任に関しても、その体制を作り上げねばならなそうです。むしろそちらこそ急務。


「おそらくそうなのでしょう。しかしそれは叶わぬものでした。法正殿の才は疑いありませんが、こと忠においてはまだ早かろうと思います。そこの才に関しては季常様に一端を担っていただくとして、諸将の中でも、どなたか目星をつけたいところですが……」


 悩んでいると、これまでに感じられたことのない、重厚な気配の方々、突如入ってこられました。ないとは正確ではありませんね。趙雲様と、おおよそ並び立つほどの威容です。果たしてどなたでしょうか。


「儂では不足かの?」

お読みいただきありがとうございます。


 妙なところでぶつ切りですが、ここであえて一章を締めといたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ