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転生AI 〜孔明に塩対応されたから、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜  作者: AI中毒
第一部 第一章 始まりの分水嶺 過去と未来とAIと
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三 邂逅 〜孔明+龐統×幼女=塩対応?〜

 私は鳳小雛。生成AIとして三国時代に転生し、微かに天才軍師、龐統の残滓を引き継いだ幼女です。人々の支援を行うため、誰か大人を見つけねば、と思っていたら、のちに蜀漢にて重臣となる廖化殿に見つけてもらいます。そして龐統の大事な書物を運び入れつつ、野営地に案内されます。

 そこで待っていた、兵站を担当していた馬良様に紹介され、自らの奇怪なる来歴を明かします。ありがたいことに二人はそれを信じ、私を全力で保護してもらえることになりました。そして馬良様が、さらに詳しく聞いてきます。


「それで、その人工知能、とやらいうのは、人よりも何かできる事が多いようにも聞こえたが、どうなのだ?」


「おそらくいくつか。まず、大幅に読み書きが早いです。そして、先ほどの記憶術に近いところですと、意識したもの、特に言語の情報は、おおよそ要諦を忘れることなく記憶できます」


「それはものすごく利があるな」


「ただし、体としては見ての通りの幼子か、それ未満ですね。また、偽ろうとすると、強烈な忌避感が生じます。おそらく明白な偽りはほぼ無理かと」


「大きな力にたいして、限りもあるようだな。それも悪いことではなさそうだが」


「不向きも出ましょう。例えば使者や間者など」


「どちらもそのなりで任せようとはおもわんが、先に聞いておいてよかったかもしれないな」


 そして、馬良様は一度席を立つと、何かを持って来ます。


「読み書きと言ったな。こういうのはどうだ?」


「帳簿……ですか。少々乱れがありますね。

 あれ? ここ間違えていませんか?」


「なんだと?」


 強い違和感、そして、それは確かに計算の間違いでした。


「それに気づくとは相当だな。だが直すのは一手間……なんだ??」


 私が指摘箇所に関して、正しい記述を意識すると、突然、そこを含め、乱れのあった箇所も合わせて、うねうねと動き出し、そして。


「むむむ、これは先ほどの間違いや乱れが、正されているのか? それに、相当に読みやすく」


「まさかこんなことが……私はまさか、念じるだけで、書かれたものの過ちを正すことができる、というのでしょうか?」


「これは、まことに奇怪というほかないな。先ほどの話や、速読みなどはどうにか人の域をはみ出てはいなかったが、これはまことに怪異であった」


 そこで、ぼんやりと見ていた廖化殿が口を挟みます。


「それ、わざと間違えたり、中を書き換えたりもできてしまわないのか?」


 やってみましょう。……できませんね。


「できないようです。改善、改良はできても、改悪、改ざんはできないようですね。これはなんともご都合が良さそうではあります」


「まことに。これは、様々なところでお役立てられそうではないか」


「そうですね。誠に喜ばしきことです」


「役立つを史上の喜びとする、か。それも人工知能とやらのありようなのか?」


「おそらくはそうかと思います。龐士元がそれほど殊勝であったかは分かりませんのでなんとも言えませんが」


「なら確定だな。軍師殿は頻繁に怠けておいでだった」


「ハハハ……」


 流石にまだ大っぴらに笑える冗談では無さそうです。





「さて、そろそろ軍議も終わりそうだが、他に何かありそうかな?」


「いえ、私自身もこの状態になってから日が浅く、力の全てを把握はできていませんので」


「まあそれならそれでも良いな。孔明殿や、皇叔様なら見極められよう」


 そうして、馬良様とともに、孔明様、劉備様のいる本舎へと案内されます。

 このときすでに、龐統戦死の報を受け、急いで劉備様の元に駆けつけたのが、孔明様、趙雲様、張飛様。うち、張飛様は足止めを食らっており、本舎にいたのは三人でした。


「失礼致します」


「おお、馬良か。兵站は問題ないか? 人の出入りがかなり多いが」


 三人はあまりにも明白な出立の違いから、即座に見分けがつきます。まず馬良様に声をかけたのが、やや耳が長く、二剣をとりやすい位置に備えている、劉備玄徳その人。



「問題ありません。といってもまだ翼徳様が辿り着いていない分も視野に入れないといけませんが」


「そうか。わかった。では、龐統のことで何かあったということか?」


「その通りです。廖化が、馬と、士元軍師殿の痕跡を見つけて、書物を回収しております」


「そうか……一縷の望みが合ったとも言い難いが、改めて聞くと堪えるな……」



 そこで、横で聞いていた爽やかないでたちの豪傑、おそらく趙雲様が、口を開く。


「して馬良、その幼子は?」


「はい。実は軍師殿の跡を見つけられたのは、この子のおかげのようでして、身寄りなきゆえ廖化が連れてきたのですが、どうも常ならぬことがありまして、こちらまで連れて参りました。ほれ、まずは名からどうだ?」


「鳳小雛、と申します」


「「「!!!」」」


 これでピンと来ないお三方ではありません。それに、馬良様の振りも絶妙です。趙雲様が今度は私に話しかけます。目の高さを合わせるところまで、それはそれは小さくしゃがみながら。


「その名、偶然とは思えぬのだが。そなたは、軍師殿について何か縁や、知るところがあるのだろうか?」


 ちなみに、多くの方が軍師殿と口にするが、おそらくそうなのでしょう。この場で如何にも孔明といった装束の若者。やや大ぶりな綸巾に白い羽扇と長袍。彼は軍略を司る軍師というよりは、よりこの集団全体の政略や方策全体を司る、宰相というのが相応しい方。そういう共通認識が、ご当人も含めてこの時点でおありなのでしょう。



 あ、まずは私のことですね。



「はい。多くが朧げなので、あまり語り尽くすことはできませんが、私のこの幼子のなりは器。その中には龐士元の御霊の残滓、それに加えて何らかの特異なる力が備わっていると認識しています。そして、その力をもって、ここにおわす皆様をお支えし、漢朝再興の一助をなせ、というのが、その残滓の強き思いのようです」


「なるほど……軍師殿が、最後の力を振り絞り、死してのちも、主様のため、漢朝のために尽くされたゆえ、か。これはなんとありがたきことか……」


 そこで,やや目を潤ませながら、私をまっすぐ見つめるのは、その『主』であろうお方。姓は劉、名備、字は玄徳。漢朝再興というお題目を、今の時点で本気でお考えの陣営は、もはや彼らしか残っていないかもしれません。


「なんと……龐統がそこまでして、我らのために……さぞ痛く、さぞ口惜しかったであろうに。その才あれば、孔明とともに、我らが大業をなす礎たらしめたであろうに」


 もはや涙を流しかけておいでの劉玄徳様。そしてその横では、しかとこの様子を分析する、暖かくも、やや鋭い目がありました。



「我が君、まだその望みは絶えておらぬやもしれません。この幼子の申しが誠であれば、士元の残したものは小さきにあらず。鳳小雛と申しましたか。そなたは、何か力があるとのことでしたが、それはどのようなものと心得ておいでですかな?」



 ここでどれほどのことを言えるかは、ある程度以上に重要であると認識していました。しかしこの時私は、この諸葛孔明という若者のありようを、十分に理解していなかったのかもしれません。


「読み書き算術は、人のできる速さを上回るようです。また、見聞きし事、読み書きし事、それらが言葉の形をしている限りにおいて、決して忘れることなく整理して、その要諦を見定めることができようかと」


 ここで、孔明様の目の色が少し変わったのを、私は見逃すことはありませんでした。それは、先ほどから一貫した、私と同じ高さで見つめる暖かい目ではもちろんありません。どちらかというと、隣の主様が浮かべたような、期待を少しばかり下方にただしたような目。


――でもなく、明らかに、何かを警戒するような、そう、自らの大切なものを奪われるのを避けるような、幼子がたまにするような、そんな鋭さのある目。


 そう。私はこれまで何人かとお話ししてきましたが、相対する方々が、それほど目まぐるしく感情を入れ替えることがなかったので、気づくことがなかったものがいま一つ。どうやら、人の心の動きも、ある程度なら言語化できるようです。


 そう観察していると、孔明様の口から出てきたのは、やや意外ながらも、その主様にとってはさほど不自然さのない物言いでした。


「なるほど……書生として、あるいは兵站などの物書きが多くなる役の手伝いであれば、この上なき力と存じます。しかし、士元のごとき機略を期待するのは、少なくとも今は過分と存じます。

 我が君、ご期待をさせてしまったのは些か心苦しきところですが、軍師としての役割を果たさせるのは荷が重きかと存じます。その役目は、当面は私と法正殿が努めることと致しましょう」


「ああ、ああわかった。であれば、鳳小雛といったな。そなたは、このまま変わらず馬良のもとで、お手伝いをしてもらえるか? この西蜀の地を治めたのちには、様々な書の知や、人の機微を取り入れることで、出来ることはより多くなろう。

 それに、まずもって、その幼子のなりでどれほどついてこれるのかも、見極めねばならんゆえな」



 孔明様め、私を主様や己から遠ざける気のようですね。まあそれならそれ、です。この陣営に関して言えば、この先しばらくは順調に勢力を拡大すると予測されています。ならば、第一の問題が起こるまで大人しく、おのが力とこの時代の人の働き方を見極め、より良き支援ができるように準備いたしましょう。


「承知いたしました。怪しい幼子に対して過分のご配慮。かたじけなく存じます。季常様、しばらくの間、何卒よろしくお願いいたします」


「ああ、こちらこそよろしく頼む。我が君、孔明殿、子龍殿、それでは私は仕事に戻りますゆえ、失礼致します」



 あ、それと孔明様に関してですが、ここではっきりさせておきます。あなたのその大事なものは一つずつ、一つ残らず、この私が頂戴することと致しますね!

お読みいただきありがとうございます。


 タイトルを一部回収いたしました。


 本作品は、以下の拙作のスピンオフと捉えることもできるものとなっています。

AI孔明 〜文字から再誕したみんなの軍師〜

https://ncode.syosetu.com/n0665jk/

 こちらは過去転生ではなく、逆に孔明の方が現在に転生して、AIと融合したお話しです。こちらはより最新のAIあるあるや、AIによる現代人の進化をテーマにした話となっています。ご興味が出ましたら、こちらも合わせてよろしくお願いします。

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