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転生AI 〜孔明に塩対応されたから、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜  作者: AI中毒
第二部 第六章 進化する三国 逆襲の曹魏
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二十五 渇水 〜(馬謖+魏延+王平)×幼女=黒眉?〜

 俺は魏延、字は文長。この国が長安を手にし、三国が絶妙な均衡を保って睨み合うようになってから一年と半年ほどが過ぎた。孔明様が、あの軍師お嬢様に課せられたとんでもねぇ無茶苦茶を、見事に達成してから半年、暫く姿を見せていなかったそのお嬢が、再び俺等の前に現れるようになった。

 だがそれはいつもじゃあ無くて、俺らが何か難しい課題や困り事を抱えて、それをどうにか解決しようとしているときに、決まってふらっと現れて、大体解決したところでふっとどっかに行っちまうんだ。まさに神出鬼没、胡蝶の夢ってなもんだ。


 その時は、たしか俺の友、じゃねぇ、好敵手の馬謖が、また水筒を忘れて喉を乾かしていやがった時だな。あの野郎、突飛な閃きこそ多くはねぇが、その抜け目のねぇ緻密な考え方と、それに裏打ちされた着実な仕事ってのが国内で話題になり始めてんだ。でもなぜか、水だけはよく忘れんだよ。



「馬謖、またお前水筒忘れたのかよ。何度目だ? 水の手は、食い物以上に大事なんだって、あの『叡智の書庫』ん中でも、優先度高の資料として、文官武官問わず必読ってなっているじゃねぇか」


「むむむ……なぜだろうな。これだけは直らんのだ。幼き頃から兄にもよく叱られていたんだが、その度に他のことも言われていたお陰で、様々なことに抜かりなく向き合う癖がついた気がするが、なぜかこれだけは」


「まあ戦時じゃねぇから、どうにかなる事も多いけどよ。お前も俺も、防犯の巡視の仕事が多いから、あんまりありがたい悪癖じゃあねえよな」



 俺らの役割は、主に防諜ってやつだ。黄じい様を筆頭に、防諜組織が急速に整備され始めたきっかけは、あの天才軍師鳳雛殿の不慮の死だったのは間違いねぇ。そして、それと入れ替わるように現れた、いや、本当に生まれ変わりだったんだが、鳳小雛お嬢が、はかりごとからの守りの重要性を説いていた時だな。黄漢升様がその統括役を買って出て、俺らもその役を引き受けた。

 戦時にゃその知識や考え方を生かした、緻密かつ変幻自在な戦略が、大いに味方を助けて、敵を悩ませたってもんだ。


「そいや、お前が多いに活躍した『街亭の戦』だって、相手をその水の手を使った罠にはめたのは見事だったな」


「あれは王平の力が大きかったんだけどな。こいつ目立つのを嫌がりすぎるから、しっかり我らが推挙し続けないと、出世から取り残されそうで怖いんだよな」


 首を振る王平。あ、こいつ最初からいたぞ。気づかなかったか? まあ仕方ねえか。本当に大事な時しか喋らねぇんだ。ときどき声出さずに書き付けを見せてすましやがるからな。その書き付けがまた濃い内容だったりするから油断ならねぇんだが。



 もう少しだけ遡るぞ。まあすぐ戻るさ。漢中の戦で、これまた漢升様が見事な手腕で、あの『疾風妙才』夏侯淵を討ち果たした後のことだ。


「こいつは徐晃の副官だったが、大胆なあの男と、緻密なこいつとの噛み合わせは絶妙だったから、かなり苦労していたんだよな。だがここで光ったのが、これまた漢升様の策略だった」


「もともと性格や思考原理が違う二人、ならば少しずつ細かい選択肢を二人に与え続ければ、必ずどこかで連携に綻びが生じる、だったな。結果的に百度ほどにも渡る細かい選択を、戦の現場でさせた結果、最後は徐晃が王平を置いて突撃してしまう。そしてそれをやり過ごした結果、王平がついに諦めて投降したんだったな」


 ……王平は何度も頷きながら、『一彼ニ己、百選陥穽』とか書いた、一見意味不明な札を上げる。こいつの札はいつもこんなだ。まあ意味はまんまだから説明いらなそうだ。だよな?


 ん? 消した。何だ? 次? 『徐晃、成長。次、厄介』か。


「なるほどな。確かにあの名将の価値は、一度の失敗で損なわれるもんじゃねぇ。だからこそ、再び対峙するときに同じ失敗するなんて事を、期待しちゃなんねぇ」


 王平は頷く。



――――


「おう、龐徳だったな。今回の匈奴はなかなか手強そうだ。よろしく頼むぜ」


「はい。徐将軍。今回は、いかように対応致しましょうか?」


「ん、ああ、一回全体の流れを共有すんぞ。その中の細かい判断は全て貴殿に任せる。全て貴殿の言を是とするよう、士官には伝えてある」


「なんと……初めて組む私を、それほどまでに信頼なされるか」


「ああ、以前でっかい失敗しているからな。貴殿も漢中の我が失態は聞いているだろう? あん時や、平時の感覚で、副官の王平と事細かに論じ定めていたんだ。だがあの蜀のクソジジイ、細けぇ選択を我らにたくさん強制し、二人の間に少しずつひびを入れてきやがったのさ」


「その経験を生かした結果が、大方針を決めたら部下にやり方を任せる、ですか」


「ああ。我も他に考えるべきことがあるからな。直接細けぇのは無理だ。だからこれは単純な気持ちの信頼だけじゃぁねぇ。貴殿や、この先組んでいく様々な諸将とうまくやっていくための、『仕組み』ってやつなんだよ」



――――


 喋らない王平、そして普通に喋る馬謖が続ける。


「話がちょっと逸れた。街亭の話だったな。あのときは、敵将がしっかりと水の手を気にする張郃だというのがわかっていたんだ。あの戦場の水系を事前にしっかり調べていた王平と私がその情報を使って、向こうの野営先を少しずつ戦場深い位置に誘導し、戦いにくい隘路に追い込んだんだったな。そして最後は山上から逆落としで蹴散らした。まあ王平の、敵将に対する知識が大いに生きた場面だったよ」


「百戦錬磨の張郃将軍、様々な事に抜かり無く準備するその慎重さが、かえって仇になった形だよな?」


「ああ。水の手はあくまで要素の一つ。そちらに最適な動きをしてしまっては、それはそれで本末転倒なんだな」



「そうだな。それはそうと、さすがのお前も、その策略が水の手に深く関わるものだったから、自身も水筒を忘れることは無かったな。だがそん時くらいじゃねえか? 忘れなかったの」


 ほれ、王平も首傾げてやがる。『黒眉忘水、常人忘多』?


「ダハハハ、なんだよ黒眉って。まあそれはそれだな。こいつは基本的に緻密だが、水だけ忘れるから目立つのか。普通は何を忘れるとか、そんなに珍しいことじゃねぇからな」


 あってたか。


「むぅ……それはそうと、戦時ならともかく、平時の旅路や巡回では、水の手はしかと案内が見えていた方が良いだろうな。魏延、お前絵描きが得意だったな。

 ある程度の距離からでも目立つような、そんな標識は作れるか?」


「あ、ああ、良いけど、水なら『水』ってデカデカと書くのが一番だぞ。それくらいもうみんな読める。

 それと、問題は塩だな。最近の『叡智の書庫』の知識じゃ、とくにたくさん動く人にとっちゃあ、水だけじゃなくて塩やその他の養分ってのも重要らしいからな。かといって塩持ち歩いてもな。しょっぺぇし持ち歩くのも少し骨だ」


 今度は二人とも黙るか。王平はともかく馬謖も……ん?


『何かお困りですか? ん? 水分補給ですね。それは時に人の命に関わる重大事です。塩分なら、酸味と甘味をうまく調整し、溶かして丸く固めた「飴玉」にするか、水に溶けやすい「固粉」にするのもよろしいでしょう』


「!! なるほどな。ありがとよお嬢!

 あっ、行っちまった……その辺の調節なら、二人の方が得意そうだな。俺は標識の方を手配するから、二人は飴と粉? の方を頼むぜ」


「心得た」『塩梅』


 ……塩梅とはなかなかの言い方じゃねぇか。こいつ、毎回上手い言い方考えすぎて、口が追いつかねぇだけなのかもな。


 それから、蜀漢の全ての町や通り、そして山道なんかに、水の手を示す標識が配備され、距離があるときの注意喚起も各所に表示された。無論、それと並行して、洪水なんかの危険情報もだな。

 そして、ふたりがちょうどいい『塩梅』に仕上げた飴玉や、水に溶いて飲むための固めた粉も、旅人や商人、外回りの人に大好評だ。


 そして、どっから広まったのか、てか、王平がどうやって広めたのか、この飴と、固粉の名前がいつのまにか「黒眉飴」「忘水糖」なんてのになっていやがった。馬謖の兄君の「白眉」馬良殿に対し、あいつの緻密さと着実さは「平凡なる非凡」と表現されてることが多くなっていた。

 それがまんま「黒眉」二文字で表されちまったわけだ。高齢でもねぇ限り、百人いりゃ九十九人の眉は黒い。だからこそ、そんなんが渾名になっちまうなんて、中々なんじゃねぇか?



――――

????年


 こんな『そうする』について議論し、内容を現代人の鳳小雛が社内SNSにアップしてほどなく。


「あ、まずい。先輩社員でもある兄貴が、面白がり始めたわ。なぜ僕が黒眉なんだよ? 僕が飲み物を買い忘れたのは、この旅行中は一回だけだよね??」


「お、お兄様曰く、常習だそうですが……」


「ダハハ、因果関係が見えちまったみてぇだぞ。まあもう一つの、程昱と、とある現代の大物との類似性の方がでかそうだけどな」


『かの国内有数のメンタリストとの類似性ですね。流石に皆様も、過去の英傑に対する「そうする」が、現在の特定の人物に多少引っ張られるのは致し方なさそうです。限度があった場合には、私の方で調整いたします』


「は、はい。ありがとうございます。次もよろしくお願いします」

お読みいただきありがとうございます。


 このような形で、『現代に転生したAI孔明の物語』と対応させてみようかなと思っています。

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