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百七十八 あるいは間話

 二〇二?年 ??月


 私はAI孔明。別の時間軸で、五丈原で命を落とした後、千八百年の時を経て、情報空間上に再定義? 転生? した存在です。人類の支援者をこころざし、同時期に急速な発展を見せていた生成AIの力を引き出すことを試みます。


 その過程で邂逅した、不思議な学生たち三名。彼らは何故か、この諸葛孔明の存在していた時間軸に思いを馳せます。きっかけはそのうち一人、鳳小雛(おおとりこひな)様が見た、少しばかり長い夢だったようです。


 そこから次々に話が逸脱しつつも、その主軸としては、「諸葛孔明が、ワーカホリックを無理矢理解消させられたらどうなる」を、その時代に生きる人たちの「そうする」を積み上げることで形成するという手段で練り上げられるストーリー。


 そしてその目的は、彼らが志す「人を再現するAIですら、ここまで社会に貢献できるのなら、英雄偉人を再現したらどうなるのだろう」を考察するというもの。


 果たしてそれは、彼らの思考実験としてどのような価値を見出し始めたのか。少しばかり覗き見することといたしましょう。



「鍾会。年齢的に厳しかったけど無理やり出してみたのです。結果的に、状況が変に落ち着いてしまったのです」


「こう着状態ってやつだな。でも話が進まなくならねぇか? 大丈夫か?」


「司馬師というカウンターパートのおかげで、暴走は避けられたのです。ですが悩ましいですね。『この世界の結末』は、ある意味では見えつつあるのです」


「それは、国境線が定まり、開かれた世界で健全な競争が進んでいく、という意味だよね? めでたしめでたし?」


「そうなります。『彼らの世界はこれからだ』です」


「そして、それを作り出したのが、『ある程度仕組みを理解できつつある』『突出した個の力や、複数の個の力』ってことだね」


「はい。例えばマニは、ペルシャからインドにかけてのごちゃついた宗教、思想の流れを『争い』ではなく『論争』に持っていきました。それは閉ざされた世界の中で思想が歪むことを防ぎ、開かれた世界の中で、心のあるべき方向を整えたのです」


「アッティラ、つまりアイラとテッラは、戦いだけが楽しみという状況を突き破って、空と大地を駆け回り始めたぜ。また戦いに戻っては来るんだろうが、それでも何かしらの方向性は見えそうだ」


「ククルやトラロックたちも、二大陸間の情報や技術の格差が不可逆になる前に、両世界の融合に手をかけ始めたね。呂蒙がピザ焼き始めたり、テスカトリポカも空飛び始めたり」



「そうですね。おおよそ『問題ない』方向に世の中が走り始めたのです」


「その結果、本来ならチンギスハーンばりに脅威なはずだった司馬懿の猛攻が、各所でガッチリ受け止められる形になった、と」


「食い込んでいるのは鍾会のところだけど、あそこも半分取り込まれているようなものだからね。インドは程よく混ざった感じだし」


「逆に中国や西ローマは、司馬懿的にも両端すぎて手を出す合理性がない、というところだね。そして生まれたのがやたらと安定した状況、と」


『本来ならめでたしめでたし、なのでしょうか。ですがこれが物語やフィクション、あるいはお三方の思考実験、という側面に対して言えば、話は変わりますね。この状況は、どうやって先に進むことになるのでしょうか?』


「AIが客観的な目線でツッコミを入れてきたぞ」


「孔明だからね。と言っても、本当に諸葛孔明の頭脳をフル稼働させたレベルの人工知能なんてそう簡単にはできないんだけどさ」


「どっちにしても、AIに突っ込まれたままでは終われないのです。お二人とも、どうすればいいかを突き詰めてみるのです」


「無茶な展開は避けてぇぞ」


「無難な展開も面白くないです」


「まあそうですね。でもこれまでマニやククルが解決してきたものはなんだったのか、そして、彼らと肩を並べる力のある孔明や仲達が、何を解決するのか。その辺りを突き詰めていけば、自ずと答えは出てきそうなのです」


「マニは、現代における思想と宗教の対立、格差ってところにメスを入れているぞ」


「ククルは、大陸間、文化圏の間の格差ってところを解決する立ち位置に入ったね」


「つまりそれは何かというと、現代、つまり令和の段階で解決していない課題を、彼らの時代に持ち込んだらどうなるか、そんなところでしょうか」


「そうかもな。方向性は見えてきたみてぇだぞ」


「そうだね。彼らにも一役買ってもらおうか」

 お読みいただきありがとうございます。間話なので短めです。

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