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転生AI 〜孔明に塩対応されたから、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜  作者: AI中毒
第十七章 世界への招待状 時代への挑戦状
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百五十 半周 〜関索×鄧艾×水神=??〜

 あたしはククル。星読みというのは、ある程度便利である程度不便だ。トラロックの未来がよく見えなくなってから、結構な時間が経つ。


 もともと、こっちの大陸にいたころは、どこで何をしているか、までは分からなくても、無事かどうかくらいは何となくわかるんだけどな。


 そういえば、陸遜や曹植達、自らの国に戻って行った彼らのことも、全然読めないんだよね。これまでそんなことがあんまりなかったから、ちょっと不安が大きくなる。


 そんなあたしの独り言を聞いていたショチトル。


「のうククルや、そんなこと、本来は普通のことじゃからな。誰かが無事か、など、そやつから便りがこない限りは普通はわからん。じゃからこそ、便りのなきことが良い便り、などという言葉も出てくるのじゃ」


「そうなんだけどね……やっぱり見えていたものが見えなくなるっていうのは、どうしても不安にはなるよ。同じ星が見える空の下なら、ある程度は読み取れることがあるんだけどね」


「ククルや。そなたの中の常識と、皆の中の常識が少しばかり違っていることは分かっておろう。そして、じゃからと言って、皆の言うことがそなたの役に立たぬわけではないのじゃ」


「ん? それはそうだけど」


「つまり、そなたの常識は、そやつらが常識から外れたら、当然どちらも外れて迷子になるのじゃ。今のそなたのように、当たり前が分からんくなる。さっきの言葉、思い返してみよ」


「同じ星が見える……あっ」


「じゃろ。あやつら、同じ星が見えているのかの? そもそも星が見える刻ではないこともあろうて」


「そうか! つまり、同じ星が見えている刻を狙って、読めることを読んでいけば、近くの時とは比べ物にならないけど、読み取れることはあるはず……ありがとうショチトル!」


「粘るのう。まあ無理せんようにな」


「うん!」



 そして数日後、陸遜達が元気に頑張っているイメージはできてきた。だけどやっぱり「見えている夜空」は、時間も場所も一部だけだから、ぼやけたことしかわからないけどね。


 そしてトラロックは、なんとなく無事だと言うことしかわからない。分かっただけ良かったんだけどね。


 でも、さらに数日後、そのトラロックの状況がどんどん曖昧になっていく。何かあった時の動きじゃないから、不安は半分くらいなんだけどね。星の動きも奥が深いね。


「確かに奥が深いのじゃな。じゃが、そなたはやはり星読みに頼りすぎているのかもしれんな。その後ろにあり得そうなことを考えたら、むむむ……」


「ショチトル、どうしたの? さっきまであたしに言葉をかけてくれるような言い方をしていたよね? いきなり唸ったりして」


「そうじゃな。ククルや。そなたの星読みは、相手が遠くなればなるほど、その感覚が曖昧になり、限られた時しかわからなくなる、じゃな。それは、同じときに同じ星を見ることが減れば減るほど、と」


「うん、そうだね」


「ということは、ほとんどわからないと言うのがどう言うことか、わからぬか? あやつめ……」


「すっごく遠くて、同じ時に同じ星を見ることがない……あっ!」


「そうじゃ。あの男、ローマ? アレキサンドリア? よりも、さらにあっち側に行きよったかもしれんぞ。何の因果かわからんが、逆側から帰ってくるかもしれん。世界をぐるっと一周して、の」


「むむむ、それはたしかに、むむむ、だね! そんな面白いことを独り占めするなんて」


「まあよい。下手をすれば、そちらの道中の方が、だいぶ拓けてきているようじゃし」



――――


 我が名はトラロック。少し、いや、相当に慌ただしい旅になっているが、アンティオキアからすぐにアレクサンドリアに引き返すと、我らの大陸の水夫らと共に、「紅い海」と称されるという小さな海に向かう。本当は赤くはないらしいが。


 ナイル川を少しさかのぼり、コプトスという街から街道へ。この整備はまだまだのようだ。図書館の再興によってアレクサンドリアの重要性がましたこと、そこに漢の英雄達が深く関与していることから、この街道の整備が急速に進んでいるという。


 にしてもこの変な匂いのでっかい獣。どんだけ歩いても疲れ一つ見せねえ。馬とも違うらしいが、こっちの大陸は知らないことだらけだ。もう少し落ち着いたら、ショチトルやククルとのんびり回りたいもんだな。


「一週目が途中なのに、二周目の話をするなんて、随分お気楽じゃねえかトラロック? そんなことしてたら、夜明けの神王あたりが拗ねちまうぞ」


「テスカトリポカか。あいつはあいつで、でっかいこと考えているから問題ねえさ。にしても暑いな。聞いた限りだとそんなに遠くはないってことだったが」


 どうやらこの地も、右手のアフリカと、左手の大陸の間は、相当に細いところで繋がっているようだ。だがパナマと比べたら何倍も遠く、そして乾燥しており、この地が、海の橋でつながる未来は相当に先だろう。


 おそらくこの地が平和か否かというのは、未来永劫にわたり、この世界全体に大きな影響を及ぼすのだろう。このアレクサンドリア周辺の地が、安らかなることを切に願う。


 祈りを捧げていると、なぜか久々に、ショチトルやククルが我らを見守る視線が感じられた。気のせいなのか、ククルの星読みに一段の進歩があったからなのかはわからない。


 紅海。どうみても赤くはない。ベレニケという港町。それほど大きくはないのだが、商人の数はそこそこいる。


「なあ、ここは重要な港町だと思うんだが、なぜあまり発展していないんだ?」


「海路で抜ける意味が出てきたのが、それほど昔ではないからじゃないか? 東のものはアンティオキアに入ってくるし、インドに行くにしてもペルシャを通る方が無難なんだよ」


「まだまだ、ローマも海の道を考え尽くされてはいないんだな」


「そうだな。船が改良されて、開運が発達したら、それこそここよりも北の、海の根元を再開発した方がいいんじゃねえかって話も出ているんだ」


「ん? そなたは商人に見えたが、そんな所にまで目がいくとは、この地の領主や為政者の家系かなんかなのか?」


「いや、これぐらいは、アレクサンドリアを中心に商売をしているなら、最近は商人どころか市民だってみんなやっているぜ。あんたもどこから来たのか知らねえが、あの図書館が建て直されてから、知識や知恵ってのの速さは、馬や船よりも速いってことを思い知らされるだろうぜ」


「そうだな。空を一日で駆け巡る星や太陽のように、知恵が巡っていく日もいつか来るのかもな」


「んん、こいつがととトラロックか? ほほ星が空を駆け回ってんのか、俺たちの世界が回ってるのか、どっちかは分かんねえぞ」


「何だこいついきなり? んー、あいつらと似たような見た目に、どもり。お前がトーガイってやつか?」


「おお、俺がと鄧艾だ。ほう、見た目は南の奴らに近いか。でもちょっと違うな」


「なあ、星が回っているのか、俺たちが回っているのかは、どうやったらわかるんだ?」


「わからねえ。お前たちや、島の民って奴らの方が詳しいかもしれねえぞ。星を読むんだろ?」


「ああ、確かにそうだな。っと、鄧艾ならちょうど良かった。望遠鏡ってやつなんだが、遠くが見えるんだ。これを渡してくれって……なんだ、持っているじゃねえか」


「ああ。か漢の奴らは、もうインドまで航路を作り始めたぞ。だから、そっちから一つもらったんだ。インドの南の島と、あとはこの辺りがしっかりしてくれば、アレクサンドリアと漢はつながるんだ」


「やっぱり、陸路は厳しいのか?」


「ああ。厳しい。ちゅ、仲達はそれを分かって動いているんだ。カシュガルが早々に取られたから、インドの方のあたりまで危ねえんだ。下手するとあいつらが海までたどり着く可能性もあるぞ」


「海に辿り着いても、うまく使えるかは別か?」


「そうだな。あいつらはあくまでも馬だ。だけど、こっちの邪魔は出来なくはねえ」


「だからお前達が海、ってことだな。なあ。この辺り、もう少しどうにかなるんじゃねえか? わざわざナイルをさかのぼってきたが、もう少しやりようがある気がするんだよ」


「トラロック。お前の話は、まだ吟遊詩人の噂くらいしか知らねえ。だが、新しい大陸から、水の神と呼ばれている奴が来た。それだけの言葉からでも、お前が水にこだわりがあることは分かる。何か出来るならやってみるのがいい。世界を渡ってきたやつに、何も怖いものなんて無いんだろう?」


「へへ。あるとしたら、帰れなくなることくらいだな。だが、お前達と共にあれば、どちらからでも帰れる道はあるさ」


「ああ、足りねえものはひ費禕に聞くといい。俺は、流石に姜維達を手伝わねえと、あっちがきつそうだからな。なんか嫌な予感もするし」


「そういえば鄧艾ってやつは、戦の才もとんでもないって聞いたな」


「きょ姜維ほどじゃねえさ。あ、そうだ。戦と言えば。トラロック、一つお願いがある。一度インドまで行って、そこで戦いを指揮できそうな奴がいたら、連れてきてもらえねえか? たぶん関索ってのと、孟達ってのが来るはずなんだ」


「インドに行って、戻ってくるのか。まあいいだろう。この地に対する関心は、俺にとっても捨て難い話だからな」


「ああ、頼むぞ。そしたら俺は急いで姜維のところに向かう」


「ああ。またいつか」



 鄧艾との慌ただしい出会いに続いて、寝起きの費禕との話し合い。


「ふあぁ、なるほど。乾いた地形での治水工事、ですか。確かに我々漢人や、ローマの人達にも、その辺りの経験は不足しているようにも思えます。あなたがもし水利についての造詣が深いのならば、この地の周りに関する知識を集めれば、地中海と紅海を繋ぐ道は定まるでしょう」


「もちろん、丸ごと運河をつくろうなんて真似は、俺達が加わろうが、そう出来るもんじゃねえ。だが、ここから人やものが大きく動きだすんなら、この辺りの整備は必ず必要だろう」


「まずは周辺の調査と、地元の情報収集からでしょうか」


「特に天候と潮の満ち引き、ナイル川の動向だな。俺は一度インドまでいって戻ってくるから、それまで調べは進めておいてくれ」


「分かりました。では、良い旅を」


「ああ」


 悪いなショチトル。少しばかり帰るのが遅くなりそうだ。だがなんとなくだが、ククルが我が無事を伝えてくれそうな気がする。

 お読みいただきありがとうございます。

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