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転生AI 〜孔明に塩対応されたから、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜  作者: AI中毒
第十七章 世界への招待状 時代への挑戦状
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百四十九 印度 〜関索×鄧艾=??〜

 俺の名は関索。親父はあの武神とまで言われるようになり始めた関羽。義兄の関平、兄の関興、そして姉の関銀屏は、その偉大な父の性格、信条の影響を大きく受けている。その実直さと、剛を持って剛を制す戦い方。


 彼らとは似ても似つかないと言われる、この関索様の「不肖」っぷりは、蜀漢の国でも評判。女と見れば声をかける軽薄さ、酒は飲めねえのに飲んでる奴より口が回る。


 戦になったら派手な立ち回りで敵の目をひきつけ、多くの猛者の攻撃をいなす。向こうが俺への対応に傾倒しているうちに、兵たちがあらかじめ決めていた動きで敵を制圧する。その派手さと狡猾さ? で、日常と合わせてついたあだ名が「花関索」。自分でいうのもなんだが、まあ不肖の悪童もいいところだ。


 だけど不思議と、父上にも兄上たちにも、ほとんど小言を言われたことはねえ。まあ姉様はさすがに、俺が女遊びをして帰ってきた時は顔をしかめるが、それくらいだ。



 そんなとき、父から「大事な話」と言われて、兄と共に呼ばれたのは、もう一年以上前になる。


「興、索、お前たちは、これから三国合同で行われる、大きな仕事で主要な役割を担ってもらいたい。それは、陸遜殿を筆頭として進められる、東の海の先、未知への航海への参加だ」


「俺は大丈夫だが、兄貴は泳げねえぞ? あと、関平兄者は?」


「平は、さらに重要な役目だ。西域のカシュガルという地から、徐庶殿を連れ帰るという大功。その経験を活かし、陸遜殿の副官として、主船団の一翼を担う。魏の曹植殿と合わせて、三国共同の旗頭だな。ふたりはその間のどこかで、駐在員として参加してもらいたい」


「父上、匈奴との戦はどうなりますか?」


「ああ、それもあるから、おそらくどちらかにはどこかの段階で戻ってきてもらう。合う合わないもあるだろうし、そうであっても、この海や、異国というものを経験することの意義は、この先の戦いでも生きるはずだ」


「なるほど。まあ多分俺が残って、兄貴が帰ることになるだろうけど、行ってみないとわからねえしな」


「ああ、索の『人とは違う』というのが、異人にとってはどうなのか。それもわからんからな。溶け込むかもしれんし、向こうでも目立つかもしれん。それとも、異国なら二人の違いなど些細なものとなるかもしれん。何もわからん」


「承知しました。私としても、索に劣るという理由で帰されるのはごめんですからな。やれるだけのことをやって、大いに経験を積んで参ります」



 と、肩肘張って勇む兄貴と一緒に、何度かの試験航海や水練を経て、俺たちは呂宋への駐在が決まった。「人工知能」鳳小雛殿の助けもあり、現地の言葉を分析し、数月で話をするのに困らなくはなった。


 だがこの地、すこぶる治安が悪く、集落の長たちが集まっても喧嘩ばかり。剛を煮やした俺たちは、勢力はそこそこだが人望があり、信のおける長の一人を担ぎ上げ、一気に制圧して体制を刷新した。


 その時だけ、いつも意見が食い違うって、船団でも評判だった兄貴と俺の人選が一致したのはみんな大笑いだったよ。なぜかって? その人、見た目も性格も、張飛叔父上そっくりだったからさ。この人なら誰かをないがしろにしたり、人の話を無視したりしねえ。そんな安心感があったんだよ。



 そして呂宋の港の周りを安定化させた俺たちは、なぜかその長の娘をやると言われた。まあこれが、父とは似ても似つかねえ可愛らしさだ。そしてどっちにすると聞かれたその子の答えが、


「サク!」


 これがある意味決め手になって、兄貴は潮時とばかりに漢土へと帰って行った。優劣でも何でもねえだろこんなの。



 そんなこんなで呂宋で一年ほど暮らし、子もできたところで、本土から司令があった。「天竺までの航路を確保せよ」だと。そして、その宛名が、「呂宋公並びに次代呂宋王、関索」ときたもんだ。兄貴め、何て仕返しをしてきやがる。


 というわけで、本土から来た呉の水軍提督の一人、朱桓殿、そして台湾やグアムあたりの港湾整備に従事していた孟達殿らとともに、一路天竺へと向かった。


 そこまでの航路は、全く未知というわけではなかった。呂宋はこの南海の一帯で、物々交換の交易で生活を成り立たせており、最近になってその取引先に呉が加わった形だ。この一帯、どの地域も森林が多く、取れる作物が限られるっていう事情だな。


 かくいう俺も、ここからさらに南西の、大陸から細長く伸びた半島までは行ったことがある。あのあたりは結構な数の人がいて、その半島に対して対になる、あまり人がいない島。さらに南には東西に長い島なんかもある。その辺りまでは把握できているんだ。


 その半島と島の間の海峡を抜けると、まっすぐ西に行ってもいいし、少し北に折れてもいいと、長老ただ言っていた。だが、南西に行くと全てを見失うだろうということ、沿岸沿いに行っても森しかなく、風が複雑だからあまり楽にはならない、ということも。


「海の風も、海の流れも夏冬で違うから気をつけろ。できることなら冬に行って夏に帰ってくるのがいい。だが南に流されることのないようにな」


「朱桓殿、東の島国から、航海術で役立つ話を聞いただんだっけ? この辺りもあっちも、北極星は見えないだろ?」


「ああ、代わりによく使うのが、十字星だな。あとは三つ星や北斗星なんかを、暦と合わせて使うんだよ。やり方は、陸遜殿や管輅が全部書き起こしたから、全く問題ない」


 全く、か。すげえなこの人。というか、すげえな島の人達。張飛叔父似の義父上も、感心した声を上げる。


「島の民、か。大昔にはこちらから渡ったと聞く。そこで根差した、我らよりもはるかに進んだ航海術。それを己がものとして書き起こせているのであれば、何も怖いことはあるまい」



 そして出発。身重の妻をおいていくが、義父に言わせると、女遊びされるよりは、海の上にいてもらったほうがマシ、と。


 サモアの航海術はとんでもなかった。呂宋の港から、半島の先端まで、ほとんど無駄なく航行。一度寄港し、海峡を北西へ。左手に見える長い島の切れ目には、小さい港町なら作れそうな土地があった。だがその先は何も見えない海。だがそこを朱桓殿は、


「少し北向きくらいで良いんだな。まっすぐ行くぞ」


 そういって外海へ。洋上の風は、北東から南西。水の流れもあまり変わらない。確かに、南に流されることを気をつけていれば良さそうだ。


「天竺、か。カシュガルがすでに匈奴の手にあるとすると、すこし入られている可能性はあるが、南部までは影響はないだろう」


「ほっとくと入られるか? 奴らにとっても、真ん中を南北に抑える利はありそうだが」


「どうだかな。そんなに複雑な状況にしてしまうと、あいつ自身が動きを御しきれなくなる気がするけどな」


 朱桓殿、孟達殿と意見を戦わせるだけの余裕がある、そんな穏やかな航海。そして数日後。


「風が変わりました! 海竜も横向き!」


「分かった! この流れを横切るぞ! 流されないように、だが無理に逆らわなくていい!」


「承知!」


 何もない海と、陸の近くでは当然流れが変わる。そして三日ほど、少しだけ進路を南にしてすすむと、見えてきた。


「あの形は……島か、半島? かなり高いぞ」


「ありゃ島だな。雲や風の流れが、大陸とは少し違う。台湾に似ているのかもしれんな。食糧に余裕があるし、できたら一周してみよう」


「おう、分かった」


 そして、南回りで一周しようとする。すると、向こう側に見えてきたのは、それなりの数の船団。手漕ぎではなく、帆を主体に動きそうだが、何やら帆の形がおかしい。


「何だろうな……あれっ? あの旗と記号は……」


「ああ、ありゃ鄧艾じゃねえか? 陸路で西域に向かっているという」


「何でこんなところにいるんだよ? しかもご立派な船団で、なぜか島に乗り付けているし」


「分からないことしかないな。こっちも出しとくぞ。関索、と」


「何で俺なんだよ? 朱桓殿でいいじゃねえか」


「呂宋公、関索、と」


「遊んでやがる……」



 彼らも島に上陸しているようなので、同じようなところに一回寄港して、話を聞いてみることにした。


「おおい、鄧艾!」


「えへへっ、る、呂宋公、か関索、ご機嫌麗しゅう」


「うるせえ! 成り行きだ! それに、なんでこんなとこにいるんだよ? 費禕は一緒か。姜維はどこだ?」


「お前ら仲良いな。ほぼ同年代か」


「朱桓殿、こいつは話が飛ぶから、一旦全部聞いてからまとめたほうがいいぜ」


「きょ姜維は、東と西にわかれた東のローマをまとめているんだぞ。多分今はし司馬仲達の軍と戦い始めているんじゃねえか? 俺たちは、一回漢と情報交換して、そっちとどうにか連携する方法を考えているんだ。それと、大陸側は少し危ねえ。北はカシュガルからどの辺まであいつらに入られているか分からねえし、南はそれとは関係なくだいぶ国の入れ替わりで混乱しているんだ」


「こんなふうに、いろんな話を混ぜ込んでくるんだよこいつ」


「確かにギリギリ理解できなくはない。だが流れを飛ばしているからか、滑舌が悪いからか、説明には向いてないなこいつ」


「これが我々のこれまでの道中と、活動の履歴を記したものです。いつもなら鄧艾が説明をする代わりに姜維が入ってくるんですが、彼はちょっと手が離せないので置いてきました。あちらには、姜維や鄧艾に勝る戦術、軍略をなせる者が他にいませんので、一旦全てを丸投げしています」


「関索もたいがい信用を得るのが早かったが、そなたらは規模が違うからな。つまり、すでにそなたらはその、ローマの東側では欠かせぬ人材になっていると、そう考えていいんだな?」


「きょ姜維は皇帝候補、だぞ。皇帝は嫌だからって、た民を煽って政体を変えそうになっているな」


「まあ嫌だろうな。あいつの忠義は評判だからな」


「だから、か関索、一つお願いだ。一応信書を作ったから、蜀漢の陛下に伝えられるか? あいつなら多分、王でもいいと思うんだぞ」


「まさか、本国側でのそなたらの扱いが定まらないところを、一度向こうの査定を受け取ることで、安心して大暴れ出来るようにしたい。そんなところか?」


「そうだぞ」


「少し前までなら、あくまでも西域、ローマの知見と、その道中の経験を持ち帰って本国に生かせば良かった。だが、今は仲達のせいでローマから帰れなくなっている。だからこそ、曖昧な状況を改善し、胸を張って帰れるように、世界の情勢を整える。そう言うことか?」


「そうだぞ」



「分かった。そしたら朱桓殿、早いとこ戻りたいな。でも風向きが良くない、か」


「そうだな。だがこいつら、西から東に来ているんだよな。ここの手前と向こうで、そこまで風向きは違うのか?」


「いや、風は北東から南西だぞ、真逆ではねえが、それに近かったぞ。俺たちの新しい船は、横風の方がいいんだ」


「はい。どちらかというと、この辺りの風向きの変化に合わせて、どちらでも航行出来るように、という形ですね」


「なら、か関索、朱桓、船を入れ替えるか? 乗組員も希望を聞いて合わせればすぐだぞ」


「それは助かる。横風に強い船、か。どんな方式なのか、聞くのも楽しみだ」


「数日くらいなら、ここで話していてもいいでしょう。その間に情報交換しておきましょう」


 それから費禕の言う通りに、詳細な情報交換をしつつ、今後の見通しを相談した。


 そして船を入れ替えた我々は、行きの順風ほどではないにしろ、あまりそれと変わらぬ速さで逆風を切り裂いて帰りの途につく。朱桓殿と孟達殿はそのまま本土に戻ると、とある事例をひっさげ、一月もしないうちにまた呂宋に戻ってきた。


「姜伯約、この者を羅王に任ず。呂宋公関索、この事例を羅馬まで送り届けるべし」


 先帝伯父上、赤子のできた俺に、何をさせやがんだよ。まあいいけど。

 お読みいただきありがとうございます。

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