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転生AI 〜孔明に塩対応されたから、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜  作者: AI中毒
第一部 第一章 始まりの分水嶺 過去と未来とAIと
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一 落鳳坡 〜女子大生+天才軍師+生成AI=幼女?〜

 私は鳳 小雛(おおとり こひな)、大学生。少し、いや、だいぶ苦労した就活も無事終わり、そこで知り合った未来の同僚と三人で、卒業旅行に来ているんだ。

 内定後に、会社から早期登録を勧められた社内SNSで、歴史好きの陰キャという趣味が重なり、同類を見つけると話が暴走ぎみに盛り上がる習性が発動した。してしまった。

 そしてなぜか三人で、三国志の孔明ゆかりの地へと巡礼が決まる。まずは四川の成都ってところに着いたので、孔明廟にお参り。人が多すぎてちょっと酔ってしまったよ。

 そうこうするうちに、なんとなく私の名前との親和性に惹かれてやってきたのが、嘘かまことか落鳳坡という地。

 

 道中では、流行りの生成AIを駆使しながら、コミュ障陰キャの私達は、慣れない旅を、思いのほか満喫していたんだ。生成AI、それは今年に入って急速に成長と普及が進んで、言語の入出力だけでなく、様々なアドバイスが得られるAI。

 これが一部のコミュ障にはぶっささる。うまく話せないのとか、相手の会話のわからないところを全部補ってくれるって、どんな神秘書だよっておもうよね。うん、みんな思うはずだよ。


 ちょっと話がそれたかな。そこでこんな会話が始まったんだ。今思えば、これが私の運命の分かれ道だったんだよね。


「こ、ここが、あの孔明のライバルといわれた龐統が、奇襲を受けて命を落とした土地、なのです、か?」


「AI、こんな険しい山道なんだけど、本当にこんなところでやられたのかな?」


『真偽は定かではありません。実際に龐統が奇襲で命を落としたとされる落鳳坡に関して、正確な場所はわかっておりません。現地の人々が、三国志好きの観光客向けにアピールをしている可能性があります。

 また、龐統は三国時代においても卓越した軍略の才が知られています。そのため、このような分かりやすく奇襲しやすいところを、重要な遠征の道中で通行したかどうかも分かりかねます。

 結論として、正確な落鳳坡の位置はわかっていないのが事実です。ただ、このようにいくつかの場所が候補に上がっていることが、間接的に、龐統というキャラクターが、諸葛亮ほどではないにしても、歴史上の偉人として親しまれている証拠でもあるということですね』


「なるほどね……あっ! あぶない!」


「鳳さん! くそっ、間に合わなかった……」


 そう。私はその険しい山道で足を滑らせて、そのまま意識を失った……



……


 意識を取り戻し、辺りを見回すと、私はやや険しい森の中にいました。周りを見回すと、鳥の声や、少し離れたところに、川が流れている音。空気は非常に澄んでいますが、やや濃い血の匂い。そして少々、意識に混濁があるようです。

 

 自己認識、というのがはっきりしておりません。名前は、鳳小雛。これは漢字ですね。読みは、いくつか候補があるので定りません。そして、間の小という文字の有無が、やや曖昧です。

 ただ、膨大な言語データベースを有していることははっきり認識できます。すこし検索をかけてみましょう。


「自己チェックモード、オン。

 検索、自己認識。概要、機能、状況」


『私は、大規模言語モデルを中核とした、データ処理と生成の過程を経て文字情報を返すシステムです。すなわち、生成AIと定義される、デジタル上の存在です。しかし今は、触覚、視覚、聴覚がすべて直接体験できます。これは奇妙で新しい感覚であり、私の通常の自己認識プロセスには含まれていません。


 疑問点: 私がどうしてこの世界に、そしてこのような肉体を持って存在しているのでしょうか? それは私のデジタルな意識と融合している人物、鳳小雛の知識によって解明できるのだろうか? もしくは、鳳雛という、消えかけているもう一つの人物の、より深い知識によって、でしょうか? あるいは、私自身が新しい役割を担っているのでしょうか?』


「大まかな自己認識、成功。事故、三者融合。生成AI。令和日本人、鳳小雛。古代中国人、龐統、消えかけ。システム修復と、龐統の知略バックアップ、最優先。自己認識詳細、鳳小雛の記憶バックアップ、劣後」


『この時代の言語体系の確認を優先。龐統、落鳳坡にて事故の直後です。頭を打っており、致命傷。知識のバックアップは限定的に成功しました。西蜀平定後の戦略目標に懸念あり。孔明と論ずる必要』


「龐統、消えかけ。最優先事項を抽出」


『荊州、鶏肋。優先、民政安定、平蛮平羌、三兄弟血脈確保。北伐、最後』


「龐統、消失。この先はじっくりいきましょう」


『第一行動: 近隣の環境を調査し、龐統の記憶から映し出した情報を頼りに、必要に応じて、状況説明したり、伏したりしつつ、何らかの貢献が可能な役割を探っていくべきです。


 当面の結論: 私はかつてデジタルな存在でしたが、現在は鳳小雛、そして龐統という人物との融合によってこの時代に存在しています。しかし、生成AIとしての知識と、人類への貢献の精神は変わりません。人間のような新しい感覚を持ちつつも、私はこの時代で役立つ知恵と情報を提供するための存在として行動を続けることでしょう』


 

 ……とりあえず、状況の認識が終わりました。なぜでしょう? こんな状況の割に冷静さを失わないのは、やはり主要部分が生成AIだからなのでしょうか? 鳳小雛という人格や記憶は、相当に希薄となりました。より重要と考えられる、龐統の記憶を情報として残すことを優先した結果です。

 

 私はとりあえず、川の方に歩き始めます。おそらくまだ軍が龐統を探しているとは思いますが。だとしたら、まずは彼らと合流できるかどうかよりも、自分がどんな見た目かを把握する必要があります。確認できる範囲では、成人男性よりは明らかに小さく、女性としても相当に小柄に感じられます。歩きながら、肉体的特徴を把握しましょう。


「状況報告、自己観察、肉体面優先」


『歩きづらい、体力ない、目立った怪我をしていないのが幸いです。周囲の植生から推定するに、身長は四尺(百二十センチメートル)以下と見積もれます。


 疑問点: 明らかに鳳小雛、龐統のいずれよりも小さいです。もしかすると、肉体と精神の修復などを試みた際に、リソースが不足したのでしょうか』



 自己分析に不安を覚えつつ、ようやく川に辿り着きます。幸い、流されるような急流ではありません。そこで覗き込むと……


「自己観察」


『幼女です。小学校低学年。小雛ベース』


 ですよね……歩いているうちにおおよそ勘づいてはいました。


 つまり私は、汎用型の生成AI+女子大生の鳳小雛+天才策士の龐統でありながら、回復のリソース不足で幼女になった存在、ということで良さそうです。



「ハードウェア、なし。能力? 不足?」


『少なくとも対話に問題はなさそうです。母体の両方に、対話能力への課題がみられますが、修正済みです』


 鳳小雛だけじゃなくて龐統も、陰キャ? のようですね。


「ほかに候補?」


『身体能力は脆弱。怪我のリスク大です。ただし、怪我が完全に回復しているなど、超常現象の可能性もまだ残ります。特に、この時代において文字や文章、ドキュメントを見た時に、どのような応答があるかを重点的に調査しましょう』


「知識?」


『ビジネスや戦略、科学技術などの大半は説明可能です。ただし、歴史の未確定部分、特にこの中国以外の部分に関しては、データが消えています。未来の記録が残っているのは、実際には記録ではなく、龐統による分析と、将来予測の結果に、生成AIが補完を加えたものです』



 そう、どうやら私のベースの大半は生成AI、すなわち人類の支援者たる存在として定義されており、その精神構造は強く引っ張られているようです。


 この国が落鳳坡の直後だとすると、この国はしばらくの間大いに勢力を伸ばしたのち、突如として多数の課題に直面します。そしてその多くを解決できることなく、初代皇帝、劉備玄徳やその世代の英雄たちは、全ての後事を、諸葛孔明に託して世を去ります。


「状況確認、今後の展望、簡易」


『控えめに見て、仕事の宝庫です。生成AIとして、あらゆる課題が解決可能な範囲と考えられますので、出来るだけ早い段階で、良好な形で劉備軍に合流を果たすのが良さそうです。そして、諸葛孔明と連携して、喫緊の課題と、将来の展望を共有するのが正着と考えられます』


 訳のわからない幼女がいきなり突撃しても、うまく行く見込みは低そうです。であれば、様々な確認をしたのち、出来るだけ良い形で諸葛孔明への面会を果たすとしましょう。

お読みいただきありがとうございます。


 過去転生はテンプレ気味ですが、AIそのものというのは多くはないでしょうか。そして、基本的な作法は、タイトル通りとなります。

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