クロエ、領主の館デビュー
「おい、クロエおきろ」
「んん?なあに、お兄ちゃん?」
「なあに?じゃないよ、今日は何の日だよ?」
「何の日?」
「領主様の館に行く日だろ?」
「ああっ!? そうだった!」
ようやく意識がしっかりしたのか思い出して、ガバっとベッドから起きだした。
「まだ、時間はある。とりあえず歯を磨いて、それとこれで体を洗え」
「わかった。ん?こんな石鹸作ったっけ?」
「これは新作だ、ミント石鹸は奥様も使用されているから匂いが被ったらマズイ、こっちを使え」
「うん、分かった。いい匂いだね。」
「シロツメクサだ。どこにでも生えている草の中で匂いが良いものを探したんだ」
「凄いね、お兄ちゃん!じゃあ洗ってくる!」
「おう」
そういって俺も歯磨きをする。おれは早めに起きて既に水浴びをしている。勿論普通の石鹸でだ。
~しばらくして~
「よし、準備できたようだな」
「うん、どう?」
そういってクロエはくるりを回った。
「ああ、薄汚れたガキが可愛くなったもんだ」
「む~!また言った!そんなのとっくの昔にきれいにしてるよ!」
「そうだったな、悪かった。まあ出来るうえで最善の誠意は示せるだろう。じゃあ行くか」
「うん!」
そういって二人で家を後にした。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「お父さん、お母さんには二人で領主様のところに行くってこと言ったっけ?」
「ん?、、、、あっ!やっべ!ど忘れしてた!」
「そんなことだろうと思ったよ。そういえば何か忘れてるな~って」
「いや、お前の昨日の夕飯で気づいていて発言しなかったんなら同罪だからな?」
「なんでよ!」
「まあ、もう良いよ。大丈夫だって、心配すんなや」
「む~分かった。」
それから少しあるくと、というかそこまでの距離も無いが領主館の前にたどり着いた。
門番のエタンが立っていた。
「ようエロワ、おっ、その子がクロエちゃんか?」
「こんにちは、エタンさん。はいこちらが妹のクロエです。ほら、クロエ、挨拶は?」
「初めまして、クロエです。兄がいつもお世話になっています。」
「おお~、エロワに似ず賢そうだな~」
「ちょっと、私も賢そうでしょ」
「いや、お前は賢いじゃなくてずる賢そうだな」
「酷っ」
「まあ冗談だよ、奥様から昨日、今日お前の妹さんが来る既に聞いている。入っていいぞ。奥様は庭の方でお待ちだ」
「はい、ありがとうございます」
そういって会釈をしながら屋敷に足を踏み入れる。
「お兄ちゃん、凄いね!大人の人とあんなふうに喋れるなんて!」
「慣れだよ、慣れ。お前の方こそどうどうとしたもんだ。その調子で頑張れ」
「うん!」
そうして屋敷の側道をあるき裏側に回り込むと、いつも作業をしている庭にたどり着く。
「今日も麗しゅうございます奥様」
「あらっ、やっと来たのねエロワ。そんな堅苦しい挨拶いらないっていつも言ってるでしょ。そちらが妹さんね」
「そんなこと言われましても。こちらが妹のエロワです。ご挨拶を」
「奥様、初めましてエロワ兄さんの妹のクロエでございます。」
そういってクロエは軽く腰を落とす。
「あら、お辞儀もしっかり出来るのね。リディから聞いているわよ賢い娘なんだってね。もっとこっちに来なさい」
「えっ?」
クロエはどうして良いのか分からずこちらに目を配らせる。
「奥様がせっかくおっしゃっているのだから大丈夫だよ」
「はい、では失礼いたします」
そういって恐る恐る奥様に近寄る。
「可愛いのね。さっお菓子を用意したから一緒に食べましょう。こちらに座りなさい」
「はい、ありがとうございます。」
そういってちょこんと横に座る。
「じゃあ、あとは女子会だから。あなたはラフォンと話でもしてきなさいな」
「えっ、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ、ほら、さっ」
「はあ、承知しました」
そういって追いやられるようにラフォンさんのところに向かう。
「奥様が、あの様に喜ばれているのは久しぶりですな」
「えっ、何か違いますか?いつも笑っていおいででは?」
「そうですね、いつも笑っておいでですが、それは努めて明るくありたいと思われていらっしゃるのでしょう。今日は自然の楽しまれているようです」
「さようですか、私奴には推し量れぬものがあるのでしょうね」
「わずか11歳の子どもが何を言っているのやら、さっ、こちらが昨日アドバイスを貰った後に大工と修正した案ですよ」
「もう修正が入ったのですね、早い。前よりも良くなっていますね!
「ええ、私も言われて修正しましたが、確かにこちらの方がそれぞれの人の動きがわかりやすくなったように感じます」
「そうですね作業を行うには動線を意識的に考えた方が良いと思います。」
「ほお、動線とな?」
「動線は人やものの動きです。例えばテーブA、テーブルB、テーブルCがあり、空間がこれくらいしかなかった場合に、人はどうやって動くべきなのか?ものはどうやって動く方が良いのか?です。石鹸で言えば、まず原材料は屋敷の中で自然発生するものではないので、外から持ち込まれますよね?となると、運び入れがしやすいように入口付近に配置します。そうでなければ、入口付近に持ち運んだものを更に別の場所へ移動しなければならなくなりますのでその分無駄が発生します。」
「ふむむ、言われてみれば確かにそのとおりだが、ここまで具体的に考えようとは思わなんだ。相変わらず君はすごい人ですね」
「いえいえ、凄い人は私に教えてくれた人で私ではないです」
相変わらずエロワくんは人に教えてもらったで押し通す気でしょうけど、にわかに信じられん。まあだからといって追求するのも野暮
、
、、
、、、
、、、、、、、、、、
それからしばらくラフォンさんと打ち合わせを行った。
「では、こんな感じでいかがでしょうかな」
「はい、私的にはこれで大丈夫なのではと思います。」
「ふむ、最後にドミニケ様にお見せして問題がなければこれで着工しましょう」
「はい、お願いします。」
っと少々時間が経ったがあちらの方は大丈夫かな?
そう思い奥様の方に目をやると、何と奥様の膝の上にクロエが座っていた。。。
「おっ、おい!どこに座ってるんだクロエ!」
「あっ、お兄ちゃん、今奥様に本を読んでもらってたんだよ!」
「すっ、すみません奥様」
そういってすぐに奥様のところまで駆け寄り、膝をつく。
「顔を上げなさい、私が頼んだことよ。全然気にしなくていいわよ、それにしてもクロエは賢いわね。今歴史の本を読み聞かせていたのだけれども飲み込みを早いは」
「お兄ちゃん、ベルティーユ様はとっても優しいんだよ!お菓子もくれて、物語も色々教えてくれたの!」
「こら! もうちょっと遠慮しろ」
「エロワ、気にしなくていいわ。むしろ楽しい時間を過ごさせて貰ったわ。クロエなら何時でも遊びに来て良いわよ。というか貴方が来るときは連れてきなさい」
「いや~、心配すぎて作業に支障がでるかも、、、」
「い、い、わ、ね」
「はい、承知しました」
「ベルティーユ様、ありがとうございました!」
「偉いわね、きちんとお礼も言えるなんて」
そういってクロエの頭を撫でる奥様
俺の心臓は幾つあっても足りない
「では、そろそろ日が暮れますので今日はこれにて失礼いたします」
「ベルティーユ様、さようなら!」
「はい、さようならね。また来なさい」
「うん!」
なかば引っ張るような形で足早に屋敷を後にする。
「お、お兄ちゃん早いって」
「おお、すまん。あまりにもお前と奥様の距離が近すぎて気が動転していた」
「そんな心配しなくても大丈夫だと思うよ、だってベルティーユ様凄く優しかったもん」
「お前はいつのまにか名前呼びが許されていたんだが」
まあ確かにラフォンさんもとても喜ばれていたと言うし。リディさんの件でも助けて頂いたから本当に人ができた人なんだろうな。
「また連れて行ってね、クロエもっとものがたりを聞きたい!」
「分かったが、あまり粗相が無いようにな!」
「うん」
そう言いながら手を繋ぎならが夕日を背に家に帰る。




