とある日の昼下がり
~とある日の昼下がり~
「エイ!エイ!エイ!」
最後に打ち込みを終え、一息をつく。
午前の稽古を終えて、庭の隅に腰掛ける。
「クロエは何してるんだ?」
「この穴の中に何が入るのか気になるから掘ってるの!」
「どうせまたケラだろ?」
「多分ケラだと思うけど、ちょっと作りが違うから何なのかな~って」
「お前のその好奇心はリスペクトに値するよ」
そういってぼけ~っとクロエの作業を眺めていた。
「逃げろ~!!!!」
「え?」
「ん?」
「逃げろ~、ゔぁ~!!!!」
なんだ? 叫び声?
「クロエ、お前は家に入ってろ、すぐだ!」
「ぐ、う、うん!」
あ、やば、気が張りすぎて強く言ってしまった為、クロエが萎縮している。
「ご、ごめんなクロエ。ちょっとなんか起きているみたいだ。念の為、部屋に入ろうな」
そういってもう一回努めて優しくそう声を掛ける。
「うん」
そういってこっちに寄ってきて、裾を掴んでくる。
「おう、じゃあ部屋に戻ろう」
そういって部屋に入る。
「ちょっと部屋の隅にいてね、お兄ちゃんちょっと表玄関から様子を見てくるからな」
フルフルフル、首を横に振ってさっきよりも強く裾を掴んでくるクロエ
「大丈夫、大丈夫、家の庭からは出てこないからな。すぐ戻ってくるから」
そういってクロエの頭をポンポンする。そうするとやっと落ち着いてきたのか裾を離してくれた。
それから素早く表門まで腰を低くしながら近づき、死角の安全を確保しながら家に面した通りの覗き込む。
!?
道端に人が倒れており、周りに4人程が立っている。
内1人が、何を思ったのかいきなり剣で倒れた人を刺した。しかし、既に死んでいるのか刺されても、倒れている人は身じろぎ一つしない。
刺した人はそのまま、倒れた人の腰に掛けている腰巾着を奪い取り、中のものを確認している。
盗賊だ!?
腰が抜けそうになりながらも、部屋に戻る。
どうしよう
どうしよう!
あまりの非日常的な、しかし実際目の辺りにした凄惨な現場に頭が真っ白になる。
お、落ち着け
クロエをどうするかだ
逃げても絶対に見つかる
急いで部屋に戻った俺はクロエに近づく
「クロエ、緊急事態だ。盗賊が近くにいる!」
「ヒッ!?」
声を出そうとするクロエの口を急いで塞ぐ
「時間が無い、怖いのは分かるが落ち着いてお兄ちゃんの言うことを聞いてくれ、頼むよ」
片方の手でクロエの頭を撫でてクロエの目をしっかり見ながらそう伝える。
そうすると最初は興奮して息が荒かったが、少し立つと落ち着いてウンと小さく頷いた。
「よし、早速だが。こないだ一緒に作ったシェルターがあるだろ?その中に入ろうか。」
シェルターといっても子供が作ったただの穴だ。子供が二人蹲って何とか入れるくらいのスペースしかない。
そういってクロエを穴の中に入れる。
「ヒッ! お兄ちゃんも一緒でしょ?」
こっちが何をしようとしているのか気づいたのか、バッとしがみついて来る。
「駄目だ、お兄ちゃんは一緒に入れない。なぜなら奴らの目的は金目のものを探しているからだ。見つからなければ、家の中を荒らすし、最後には火を着けられるかもしれない。お兄ちゃんが囮になって気をそらさせないといけないんだ」
「いやだ、いやだ、いやだよ~お兄ちゃん!!!」
「落ち着けクロエ、これが一番ふたりとも助かる可能性が高いんだ!」
「もう時間が無い、お兄ちゃんを助けると思って言うことを聞いてくれ。良いかい、絶対に何があっても音を出したり動かないこと。お兄ちゃんは絶対大丈夫だからな」
「う、うん」
「よし、いい子だ」
そういって、背中を擦りながら穴の中に横たわらせる。
そして、上から木の板を被せて、ホコリを撒き散らし、ものを置いてカモフラージュをする。
そして、神棚の後ろに入れた小銭の入った腰巾着を腰に括り付けて、クロエの場所から反対側の場所に隠れる。隠れると言っても、隠れる場所なんて無いのだから適当に布団をかぶっているだけだ。
隠れた瞬間に、砂利を踏み潰しながら近づいてくる複数の足音が聞こえてきた。
「おりゃ!」
ドン!と大きい音がしたかと思うと、表口のドアが倒れる。
「じゃあ金目のもをを頂くとしましょうか」
「へへ、ちっ、女はいねえのかよ」
「この時間帯は畑で真面目に働いてるだろうよ」
「真面目なこったなあ」
そういって奴らが足を踏み込み、奴らと門に十分な隙間ができた瞬間に
バサッ!
おもいきり立ち上がり、扉に向けて一目散に逃げる
「うおっ!?」
「ガキか!?」
どどどどどどどど、全速力で走り抜ける。
ジャッジャッジャ
腰に付けた腰巾着から走る振動とともにジャリジャリ音がなる
「チッ、アイツが金を持ってるぞ逃がすな!」
ひっ
やべえ、やべえ、剣をもってる
嘘じゃない、捕まったらまじで殺される!
思いっきり門へ駆け出し、門を超えたら右に曲がる
ゴリ
ああ!曲がるときに足がゴキッとすりっぷして痛みを感じる
いやいや今は痛がっている場合じゃない
俺はそれこそ死物狂いで逃げる
「おら待てや!」
「ざけんじゃねえぞ、ガキ!」
俺は、更に右に回って極力障害物の付近を逃げるようにする。直線で走ったら間違いなく、さっき見た弓で射殺される!
俺はS時カーブを描きながら走り続ける。
とは言っても、盗賊相手に勝負になるはずは無い
しかし、俺が逃げ込むところは既に決まっていた
「おらてめえ、もう逃げられねえぞ」
「てめえは手足をすこずつ切り落としてやる!簡単に死ねると思うなよ!」
「目ん玉くり抜いてやるろ!」
ひいいいい!!!!まじてやばい、やつあら野蛮人だからマジでやる
俺はそのまま裏庭側まで走る
もう少しであの場所に辿り着く
はっはっはっ、もう体が限界だ。
もう足がうごかねえよ!
なんとか着いた。
「おらおらどうした止まって?もう諦めたのか?」
「へへへ、まあ降参してもおめえは死ぬがな?へへへへ」
俺は腰巾着を取り、
「!?」
「そんなに金がほしいならやるよ!受け取れや!」
そういって腰巾着の袋の締め口を緩め、奴らに投げつける。
そして、踵を返しながら
「追ってこれるもんなら追ってこいや!」
そういってその先にある場所へ飛び込む!




