エロワ、荘園を歩く
「クロエ、良かったらこの村を案内してくれないか?」
「うん、いいよ!でもそれも覚えてないの?」
「ありがとう、ああ全くな」
「そっか~、じゃあこっち着いてきて!」
そういって低い塀の横の門とは呼べない、ただ木を2本対で土にぶっ刺した様な門をクロエは出る。俺もクロエに続いて歩きだす。
「ところでクロエはさっき何で土なんか弄ってたんだ?」
「うんとね、コレを探してたの!」
「ん?なんだこれは?コオロギっぽいが少し違うな、あ、ケラか。なんでそんなモノを探してたんだ?飼うのか?」
「ううん、お兄ちゃん大好物だったから、今日の晩御飯に並べようと思って」
「嘘だろ?虫だぞ?俺そんなの食ってたのか?」
「うん!いつもパリポリ美味しいって!」
「そ、そうか。まあ今日はお兄ちゃん病み上がりだからまた次の機会でも良いかな、あははは?」
「む~もう8匹も取ったんだよ!?」
「そうか、じゃあみんなで一緒に食べような?一人2匹づつで」
「え~私は食べないよ?」
「お前は食わないんかい!?」
とりあえず、クロエの手とポッケに入っていたケラを奪い去り、路上に投げ捨てた。
「ああ、貴重な食材なのに!グスン」
「いやいや、お前は食べんだろ?」
「でも、お兄ちゃんがケラを食べると、その分他のおかずをお兄ちゃんがくれたんだもん!」
「俺はそんなにケラに飢えてたの?ケロリアンか?」
「わかんない」
「はあ、まあいいや、とりあえず周辺を教えてくれ」
クロエに続きながら、砂埃舞う舗装もされていない道を歩いていく。周りを見ると、自分の家とあまり変わらないようなあばら家が道沿いに点在している。どの家も見すぼらしい。
「ここは、私たち農民の居住エリアなの。もう少し、進むと鍛冶屋とかパンを焼くかまどとかがあるの」
「ん~そうか、なんか身分で居住地が分けられているのか。それならば村の中心が領主様の家ってことか」
「そうだよ~」
「あら、クロエちゃんお散歩?」
突然後ろから呼びかけられた。振り向くとそこには薄汚いがもしかしたら可愛いかもしれない少女があばら家の門の傍で立っていた。