それから道端で
~領主様の館からの帰り道~
ようやく陶板(黒板)とチョークが手に入った。本当は紙と鉛筆が欲しかったけど、まあ今の状況じゃ考えるだけ無駄だろうな。とりあえずこれで読み書きが出来るようになるな。
まさかドミニケ様が書庫の閲覧を許可してくれるとは思わなかった。こっちの世界に来てから正直文字らしきものを見かけたことはなかったので、読めるかどうかは別にしても書物に触れられるというのはありがたい。
そんな事を考えながら帰り道を歩いていると、リディさんの後ろ姿が見えたので、今まさに考えていた事を実行に移そうとリディさんに声を掛けた。
「こんにちは~リディさん」
「あら、エロワ君。こんにちは」
そういってくるりとこちらに振り向くリディさん。
「どうもです。調子はどうですか?」
「ありがとう心配してくれて。この間のお裾分けは本当にありがとう。本当に助かったわ」
「いえいえ、お役に立てれたのなら良かったです。ところで、明日の午後ですがお時間ありますか?」
「え?それは時間はあると思うけど、どうしたの?」
「いや、以前お話したリディさんの助けになるかもというお話に関係することです」
「そうなんだ、そしたら是非お願いします」
そういって俺の手を握ってくるリディさん。おおっと、いきなり距離感を詰められてどきりとする俺。刻むぜビート。
勿論そんなことは顔にも出さずにクールにこう言う。
「そういえば今日もご両親のお手伝いを?」
「ええ、、、さっきまで教会の畑でお手伝いをさせて頂いてもらっていたの。お手伝いをさせて頂くと少しでもこうしてお恵みを頂けるから、、、」
そういって片手に持つ小袋を持ち上げてみせた。大きさ的には1合も無いくらいの量なのだから、ほとんど毎日働かなければならいくらいの量なのだろう。
「ご両親は?」
「父はこの時間は寝ているの、母はどこかで井戸端会議で奥さん方と話し込んでいると思う」
「自分の娘には働かせておいて?」
無意識に自分の事でもないにも関わらず義憤にかられてします。リディさんは何も悪いことをしてない、遊んでいるところも見たことがない、ただ只管両親に言われるがままに働かせられ、虐げられる。しかも実の親にだ。
「え、エロワ君、そ、その顔、、、」
はっ、無意識のうちに怒りが顔に現れてしまったのかもしれない。
「ああ、ごめんなさい。リディさんの境遇を思うと思わず怒りが込み上げてしまって」
ふと、柔らかいものが自分の体を包み込んだ。
リディさんだった。
リディさんは両手で俺を包み込んで抱きついて来た。
「うっ、うっ、あ、ありがとうエロワ君。わ、わたし、本当にもだ、誰にも言えなかった。誰にも優しい言葉をかけてもらえなかった。褒めて貰いたかった。ううん、そんなことも望まない、ただ優しくしてもらいたがっだの~!」
そういって抱きつきながら嗚咽するリディさん。
俺はそっと彼女を両手で包み。
「大丈夫ですよ、俺はリディさんが頑張っている姿見てますから。うまくいくかは分かりませんけど、リディさんの環境が少しでも良くなるように頑張りますから」
そういって彼女を宥める。
「うっ、うっ、ありがどう」
そういって泣く彼女、、まあ偶には気が済むまで泣かせば良い。
きっとこの涙は悪い涙では無いはず。
それから俺はアルバンとクロエにも明日の午後に自宅に集まるよう話す。




