ドミニクの書斎にて
~領主の部屋~
コンコンコンコン
「入れ」
「失礼致します。ドミニク様 シャルロット様をお連れいたしました」
「うむ、通してくれ」
「お知らしぶりですドミニク殿」
「これはシャルロット殿、息災そうで何より、また一段と美しくなられた」
「うふふ、そんな心にもないことを言わないでください。奥方が一番だとのもっぱらの噂ですよ」
「ふんっ、誰がそんな噂を流しているのやら。まあソファにお掛けなされ」
チリン
そうしてドミニクはベルを鳴らし、召使いに茶の用意をさせる。
「して、今回この地を訪れましたのは定期巡回とったところですかな」
「はい、我らは神の僕、各地で神の目の届かぬところで民が憂き目にあってはいないだろうか見て回っている次第です」
「直近では、南の方の、アッペル家領の教会が不正を働いたとか?」
「耳のお早いことで。まことにお恥ずかしいかぎりです。教会とは民の最後の拠り所、その拠り所が民から富を奪い、私腹を肥やすなど言語道断、破門の上、犯罪奴隷に下りました」
「力を持てば持つほどその力を容易に誤解してしまうのかもしれませんな」
「そのようなことが後をたたないからこそ我々が巡回を行っているのですが」
「して魔物の方はいかがかな」
「ここ数年魔物に関する被害は聞いたことはありませんね。とは言っても我々教会が知る限りではありますが」
「そうですか、被害がないことは喜ばしいことですな」
「はい、最初に被害を被るのはいつだって民からなのですから」
「そういえば昨日貴殿の市場へ足を運ばせて頂きました。その際に面白いものを見つけたのですが」
「それは石鹸ですかな」
「ええ、やはりご存知だったのですね」
「ええ、あそこの店主はなかなか興味深い」
「そうですね、エロワ君でしたか?彼は一体何者なんでしょうか?」
「少なくとも私が把握している限りでは、彼の両親2人は2代に渡り我が領の農民であるし、彼も実際に彼らの子である事は確認できている。」
「それではあのような所作、更に石鹸などを作ってしまう知識はどこから得たのかですね」
「まあ、私としては今のところ税収の貢献にはなれど、なにか悪さをする訳ではないので方っておいているがね」
「そうでしたか。失礼、私も純粋に気になっただけです」
「はっはは、まあその彼だが新しい石鹸を作っているようでね。今度貴族向けに販売する予定だ」
「ほお、それはどんなものなのですか?昨日早速買って試しましたが十分満足でしたが」
「今作っているのは香り付き石鹸というものらしい。湯浴みをしているときでも湯浴みが終わったあとでもほのかにミントの香りがするのです」
「そうなんですか、私もぜひ試してみたいですね」
「ええ、残念ながら試供品を1個もらったのですが、家内が気に入って使用してしまって今は手元にないのです」
「そうですか、それは残念ですね」
「もしご興味があれば、出来上がりましたら王都のご自宅へお届けさせましょうか?」
「本当ですか?そうして頂ければ助かります!」
ふむ、思いもよらないところシャルロット様とお近づきになれるとはな。教団でも一目置かれるシャルロット様と関係ができるのは決して悪いことではない。
「ええ、そのときは是非、我がパケ家の石鹸と周りの方にもご紹介頂ければと」
「ふふ、ドミニク殿は武勇で名を挙げられた方だと聞いていたが、商才もお有りのようで」
「なんの、今までこのようなことはあまり考えてはおらんだ。例の少年に影響されたのかもしれぬ」
「そうですね、今後とも縁がありそうな気が私もします」
「さようですか」
「ええ」
そう言って、とある少年をきっかけに新しい関係が芽吹くのであった。




