私には縁のないもの(リディの視点01)
「なんだいその眼は!飯を食べたならとっとと働きな!」
「そんな、こんな量を食べても足りないわ、とても畑仕事はできない」
「うるさいよ!あんたをこの家に置いてあげてるだけでも感謝して貰いたいのに、食べ物まで食わせてるんだよ!図々しいにもほどがあるよ!」
そういって私を遠慮なく打つ母。
「痛い、痛いよママ!」
「煩いよ、ふざんけじゃないわよ、口答え何てして!」
そういって打つ手を休めない。
「何で?ほかの家の子供はあそんでいるのに何で私だけ畑仕事をしないといけないの?」
「他所がどうなんてしったこっちゃないよ、うちはお前が働かないってんだったらどこへでもいっちまいな!」
そういって家から私を外へ追い出す。
「金でも食いもんでも持ってきな、じゃないと家には入れやしないよ!」
涙が止まらない。
何故、痛い思いをしないといけないの?
周りの同い年の子供は皆で楽しく遊んでいるのに?
ねえ、私が一体何をしたっていうの?
悲しくて、悲しくて、ひたすら悲しくて涙がとめどなく溢れてしまう。
誰も助けてはくれない、でも家を放り出されたら間違いなく死ぬ。
死にたくない。
そう思い、泣きながらも教会へと向かう。
教会の畑に従事すれば神からのお恵みとばかりに、少しの穀物を分けて貰える。
どうしようもない怒り、不安を抱えながら、自分の涙で良く見えない教会への道を歩いていく。
その時、後ろから声を掛けられる。
「リディさん、おはよう」
「えっ?」
振り向くとそこにはお隣さんちのエロワ君がいた。
「お、おはようエロワ君」
そういって慌てて泣いていた事を知られたくなくて、袖でゴシゴシと目を拭く。
「泣いてました?」
クロエ君は見逃してくれない。
「そんなことないよ」
「いや、目元が赤いし、さっき目元を拭いていたから」
「泣いてないから」
「あっ、そういうの別に良いので」
「え?」
「あっ、すいません今のは通じませんでしたね」
そういって彼は苦笑いする。
「とりあえず気になっていたので、ちょっとお話しませんか。何かの足しになるという訳ではないのですが」
そういって彼はずっとこっちを見てくる。
「わ、わかったわ」
助けてもらいたいとずっと思っていたけど、まさか自分よりも年下のエロワ君にそんなことを言われるとは思わなかった。
でも私に関心を持ってくれた唯一の人。
それから私たちは道端の石の塀に腰を掛け、とりとめない自分の家の環境について話す。
彼は私が話をしている間、ずっと静かに頷きながら話を聞いてくれていた。
そうか、私は誰かに話を聞いてもらいたかったんだ。
声を震わせながらも話すのが止まらない。もっとずっと話したい、聞いてもらいたい。
そんな思いしかなかった。
ようやく落ち着いたとき彼は言った。
「ああ~典型的な毒親ですね」
「毒親?」
「はい、読んで字の如く、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親、または子供が厄介と感じるような親のことです。」
「比喩?悪影響?厄介????」
「あっすみません、つまりリディさんの両親の様に自分の子供を泣かし悲しませる親の事です。」
「そうなの」
「はい、ただどうしたいんでしょうかね。こんな時代には児童相談所も警察もないでしょうし。う~ん、どうしたもんだ?」
彼はそういって一人ぶつぶつ私には分からない事を呟く。
なんか明らかに以前のエロワ君ではないと思いながらも、自分の話を聞いてくれる彼の存在がありがたかった。
「ん~、今の俺の持ち玉でリディさんを救えるような人なんてあの人たちだけだろうな。でも、だからといってただ助けてくださいっていってはいそうですか、何て事にはならないな。こんな話は多分、あちこちに転がっているんだろう。どうしたら話を聞いてくれるのか?、、、、価値だ。助けるだけの価値を提示しなければならない。そうしたら、、、前々から思っていたことを実行するついでに一緒にできるかもしれない」
そんな感じで彼はずっとぶつぶつとつぶやいている。
「う~ん、リディさん話は大体分かりました、助けられるかは分かりません、でももしかしたら助けられるかもしれません。」
「え?え?どういうこと?」
「まあ、今言っても何を言っているか、わからないと思いますので時が来たら教えます。」
「ん?エロワ君がそういうなら、わかったわ」
「とりあえず、手ぶらで帰ったらまた折檻を受けそうですね。ちょっとここで待っててください」
そういって彼は自分の家の方に走っていき、直ぐに何かを抱えて戻ってきた。
「とりあえず、これ昨日の残りのパンと人参とキャベツ、しばらくはこれでしのいでください」
「えええ、こんなの頂けないわ!」
「いえいえ、どうぞ」
「そもそもご両親には了解を取ったの?」
「いや、そんなの気にしなくても良いですよ、だってこれ俺が稼いで買ったものですから」
「え?エロワ君が?だってまだ子供じゃん」
「子供が稼ぐのは難しいですが、不可能という訳ではありません」
「だって、、、」
「いや、とりあえずそういう事でとりあえず持って行ってください。申し訳ないと思うならば、なるべく叩かれないようにしてください。リディさんが叩かれているなんて俺も悲しくなります。」
そういって私に食べ物を押し付けてくる。
「うっ、ほ、本当にありがとうエロワ君」
「いえ、リディさんにはいつも優しくしてもらっていたので、助けられることは助けたいです」
「ほ、ほんとうにありがとう」
「いいですよ、気にしないでください」
そういって彼は先に行ってしまった。
「本当にありがとうエロワ君」
そういってもう姿が見えくなったエロワ君が歩いて行った先に向かって一人お礼を呟いた。




