再び領主の館へ突撃する
領主様の館を訪れてから五日目、今日は再び領主様の館を訪問することにした。
一応、朝、石鹸で首を洗う事にした。
さて今日で、この体ともお別れか?
というのは冗談だ。いきなり切り捨てられることはあの領主様なら有り得ないだろう。
「さて、クロエよ、我が亡き後は親のことは頼んだよ」
「おにいちゃ~ん!!!!!!!!」
そういって大声で喚きながら飛びつく妹クロエ。
「まあ、というのは冗談だよ」
「おにいちゃん!!!!全然冗談に聞こえないよ~!!!!!」
そういって泣きわめく。これはちと悪戯が過ぎたか。エロワちょっと反省。
「まあ、本当に大丈夫だから。本当に危ないなら初めて訪問した時に死んでるよ」
そういって何とかなだめすかす。
「そういう訳だからとりあえず行ってくるよ、お前はケラと遊んでいろ」
「ちゃんと帰ってきてねお兄ちゃん!」
「ああ、分かった」
そう言って領主の館に向かう。
~館の前~
「おはようございます。エタンさん」
「ん?おお、エロワか、おはようさん」
「今日は前回の石鹸の件で、領主様の感想を聞きに来ました」
「そうか、まあお前が来るかもしれないから来たら通しておけとドミニケ様から仰せつかっていた。付いてこい」
「ありがとうございます」
そういって玄関の方へ歩き出すエタンさんに着いていく。
~領主の部屋~
コンコンコンコン
「入れ」
「失礼致します。ドミニケ様、エロワが来ましたので連れてきました」
「うむ、ご苦労。下がって良い」
「はっ」
そういって礼をしてエタンさんは部屋から出て行った。
「さて、エロワ。例の石鹸の件だ」
「はい、如何でしたでしょうか」
「うむ、あれは、、、、」
とその時、ドアがいきなり開き、中年の女性が入ってくる。
「コラ、来客中だぞ。勝手に部屋に入ってくるなど」
「あら、貴方。だって先ほどエタンから例の石鹸を作った子供が来たと話を聞いたから私も是非あってみたいと思っていたのよ。あら貴方かしら?」
そういって中年の女性はくるりとこちらに身をひるがし話しかけてくる。
「はい、お初目に掛かり光栄です。私は農民の子、エロワと申します。」
そういって片膝を床に付け伏せる。
「あら、とても農民の子だとわ思えない所作ね、顔を上げて頂戴」
「は、ありがたきお言葉」
そういって顔を上げ改めてその女性を見る。
その女性は地味ではありながら質の良さそうなドレスを着ており、さり気無い程度の装飾品を付けた、成金婆ではない、若い頃は美人だっただろうなと思わせるお方であった。まあ今でも美人だが。
「私はベルティーユ イアーソン パケ、ドミニクの妻よ」
「は、ご紹介いただきありがとうございます」
「あなたの作ったこの石鹸?というもの。使ってみたけど素晴らしいわね。これで髪を洗ったら今まで全然汚れが洗えていなかったんじゃと思えるくらい触り心地が違ったのよ、本当にすごいわ!」
「それはなによりでございます。」
「ただね、この石鹸なんだけど、ちょっと小さすぎない?水に付けたら滑るし、小さいから余計滑ってしまってもう少し大きければ助かるんだけど」
「オホン、こらこら主人を無視して勝手に話し込むな。今は私がエロワと話をしている。が、まあ、なんだ今のベルティーユが既に話してしまったが、石鹸は合格だ。貴様から買っても良い。」
「はは、ありがたきお言葉」
そういって、再度お礼を言う。
「では販売にあったってなのですが、1点お願いがございます。」
「ふむなんだ?」
「この石鹸は現在、村では銅貨10枚で販売しております。そこで、もし領主様へ販売するならば市場使用料を免除して頂きたいのですが。現在、市場利用料は4割の設定となっております。免除して頂ければ銅貨6枚で販売させて頂きます。」
「ふむ、確かに貴様に10枚払った後に税として4割が戻ってくるのだから、徴収に掛かる管理コストを考えれば6割にした方が良いか」
「はは、さすがは領主様」
「してこの石鹸、先ほどベルティーユが言ったが、もう少し大きくは作れないのか?」
「大きくすることは可能です。これまでの販売相手は村人であまり収入がない中で、高い値段のものはそもそも買ってもらえない可能性が高いので、大きさを小さくして村人でも買いやすい値段にしただけです。」
「ふん、ガキのくせに頭が回るな」
「お誉め言葉と取っておきます」
「じゃあ大きい石鹸が手に入るのね!?」
そういってベルティーユは喜ぶ。
「では大きい石鹸を先ず20個ほど購入しよう。完成しだい納品するように」
「はっ、ありがとうございます。大きいサイズですと、お使いいただいた石鹸の3倍の大きさで銅貨18枚となります。」
「わかった、その値段で良い」
「はは、ありがとうございます。また今日はもう一つ献上致したき品がございます。」
そういって懐から緑色をした塊を机の上に出す。
「これは、、、石鹸か?しかし色が違うな」
「はっ、違うのは色だけでございません。匂いを嗅いでみてください」
ふむ、言うとドミニケは手に取り、鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。
「ん?これは、、、ミントか?」
「はい、これはミントのエキスと少しのミントの葉を混ぜ込んだ石鹸となります」
「あらまあ!」
そういってドミニケから素早く石鹸を奪い取り、嗅いで見せるベルティーユ夫人。
「あらまあ、良い匂いがするわね!」
「はい、こちらのミントの石鹸で体を洗えば、すっきりミントでお風呂中に香りを楽しめ、かつお風呂後のあともしばらくミントの香りを体を包み込みます」
「これは凄いわね!私が使っていい?勿論使っていいわよね!? ア、ナ、タ?」
そういってドミニケに笑顔を向けるベルティーユ夫人
「わっわかった」
「領主様、ぜひそちらは奥様にてお使い頂いてください。これには考えがございまして」
「ほお、してその考えは?」
「はい、私奴はこの石鹸をもっと売りたいのですが、この村の中だけ売っても売れる数はたかが知れています。」
「まあ、それはそうだ。皆が買えば直ぐに売れなくなるだろうな。まあ消耗品だから頻繁に売れなくとも定期的には買われていくだろう」
「はい、ただこれはもっと外にも売りたいと考えております。そこで、こちらのミント石鹸については奥様が使用されてみてご友人の方にもご紹介できそうであればご紹介して頂きたく。」
「ほお、なるほど。販路を外に求めようというのか?」
「はっ、しかも社交界でのネタになるとも思いますし、領主様にとっても悪い話ではないかと」
「ふむ、確かに売れれば税収は増えるな」
「はい、しかも貴族向けですので価格は更に高く設定できるかと。」
「して、価格はどの程度を考えておるのだ」
「はい、こちらは税込みで銅貨50枚を考えております。」
「はっ、なかなか強気の設定だな。」
「は、しかし売れれば1個につき銅貨20枚が領主様の懐に入る訳でして」
「ふむ、まあ悪くはない。分かった」
「はい、では奥様、また数日後にお伺いいたしますのでその際に、ミント石鹸の使い心地を教えて頂ければ」
「わかったわ、今日早速使うわ!」
そういってベルティーユ夫人は用は無くなったとばかりに、部屋を出て行った。
「全く、少しは落ち着いてくれればよいものおを」
そう言って眉間にしわを寄せるドミニクであった。
さて、こういった時には余計な事は言わず黙するのが吉だ。変に気を利かせて同調なのか慰めなど言おうものならどちらか一方の不興を買うことになるだろう。
”沈黙は美徳”
まさにこれだ。
「では、さきほど言った通り、石鹸の用意が出来たらまた来い」
「はっ、畏まりました!それでは失礼致します!」
~館の前~
「エタンさん、ありがとうございました」
「おう、エロワか、どうだった?」
「はいお陰様でうまくいきそうです。」
「そうか、それは良かった。お礼は期待しても良いだな?」
「はい、その内、お礼致しますのでお待ちください」
「ははは、冗談だ。まあ頑張れや」
「はい、ありがとうございます」
そういって家に向けて歩き出した。
さてさて、まあ失敗するとは思ってもいなかったが、
やはり商談が上手くいくのは気分が良いことだ。
さて今回は60gタイプの石鹸20個だ。
無税なのだから、銅貨18枚×20枚=360枚の収入になるぞ!
これでようやく、次の段階に進めそうだな。
そう頭のなかで色々考えながら帰路についた。




