領主の館に突撃する
「止まれ」
荘園で出来れば近寄りたくないナンバー1に輝く、領主の館の門にて案の定、門番に入るのを止められる。
「貴様、ガキが領主様の館へ何の用だ?」
「はい、私は農民の子、エロワと申します。今日は恐れながら領主様にお時間を頂きたく伺いました。目的は、この石鹸を領主様へ卸したく、そのお話をさせて頂ければと思います。」
「ふん、ガキのくせに良く回る口だ。本来であれば貴様のようなガキの相手はしないが、その石鹸は俺の家でも使用している。お前が作ったものだったのか」
「はい、不肖このエロワが作りました」
「そうか、うちのカミさんが市場で買ってきて以来、うちでも重宝している。」
「はは、ありがたいお言葉」
「領主様へのお目通りが叶うかは約束できないが、取り計らってみよう。しばし、ここで待っていろ」
「ありがとうございます」
~領主の部屋~
コンコンコンコン
※国際標準公式マナーではノックは4回らしい。
「入れ」
「失礼致します。ドミニケ様」
「なんだエタンか、何用だ?」
「は、お邪魔して申し訳ございません。実は村人のエロワなる子供が領主様にお目通りしたいとのことです」
「、、、、貴様はわしを馬鹿にしているのか?何故わしが村のクソガキに会わねばならぬのだ?そんな下らない事で持ち場を離れたのか?」
そう言い、ドミニクは鋭い眼光で門番のエタンを射抜く。幾度の重なる戦争で武功を上げた生粋の武闘派のドミニクに睨まれては、門番ごときでは金玉が縮こまる思いである。
「し、しかしこのガキはただのガキだと無下にするにはどうかなと思いまして」
「、、、続けろ」
「は、このクロエという子供は、最近市場で出回っている石鹸なるものを作った本人です。」
「なんだその石鹸というのは?」
「石鹸というのは何で出来ているかはわかりません。しかし、水と一緒に使うことで体を洗ったりものを洗ったりすることが出来るのです。お陰で体のベタベタや匂いが大分マシになり、仕事にも集中できるようになりました」
「そんなものが出回っていたのか、何故誰も報告にあがらない」
「いや、まあ私は門番であり、そのような事でわざわざ領主様にお話しするというのも奇妙に思いまして」
「ふん、まあそうだな」
「はい」
「ふむ、わかった。ここに通せ」
「は! 直ちに」
~領主館の表門にて~
「おい、エロワと言ったな。領主様がお会いになるそうだ」
「は、ありがとうございます。自分まだ子供な為、このようなものしかございませんが」
そういって予備で持っていた石鹸を1個門番に手渡す。
「ふん、ガキの癖に変に気を利かせおって生意気だな。しかし、ありがたく頂いておこう」
そういって門番は石鹸をポケットに入れる。
「ついてこい、領主様の部屋まで案内する。間違っても他の場所へ行くなよ?お前ひとりで歩いていたら切り殺されても何も言えないからな」
「はい、わかりました」
~領主の部屋~
コンコンコンコン
「入れ」
「失礼します。エロワを連れてまいりました。」
「うむ、お前は下がってよい」
「は!」
そういって門番は退席する。
床に膝をつき
「お初目に掛かります。此度は私奴の為に貴重なお時間を頂きありがとうございます。」
と話す。
「ふん、農民のガキの癖にそんなことどこで覚えたんだ?」
「以前、旅人が滞在したときに教えてもらいました」
全くの嘘だが。
「そうか、顔を上げ立っても良いぞ」
「はっ、感謝いたします」
「それで今日は石鹸なるもので話があると?」
「はっ、こちらがその石鹸でございます。」
そう言って先ほど持ってきた包んでいた5個の石鹸を並べる。
「これが石鹸というものか、門番の話によればこれを使うとキレイになるのだとかな?」
「はい、その通りです。」
「して、要件はなにか?」
「はっ、こちらの石鹸を領主様に販売させて頂きたく」
「ほお、領主であるわしに農民の子である貴様がものを売ろうというのか?冗談ではないな?」
「はい、大いに真面目です」
「販売というが、領主であるわしが貴様を殺し奪うか、または拷問して製法を聞き出し自分で作ることは雑作もない。実際そうした方が良いのでは考えるが?」
「失礼を承知で申し上げるならば、領主様はそのような短絡的な判断をなさらないと考えます。」
「なぜそう思う?」
「私奴はこの石鹸を市場で売らさせております。つまり私奴は市場使用料を領主様にお収めさせて頂いているのです。私奴が勝手に売れば、自然と市場利用料という名の税が領主様の懐に入る訳です。」
「なるほど、それは一理ある。しかし、それさえもわし自らが行えば、貴様に流れる利益さえも自分のものにできると思うが違いないだろうか?」
「それはおっしゃる通りです。ここからは領主様のお考え次第となってしまいますが、私奴におまかせ頂けるのであればこの税収を更に増やすことが可能と考えます。」
「それは何故だ?」
「石鹸という商品は最初のはじまりに過ぎず、それ以外にも色々考えております。勿論、私奴を拷問してアイデアを吐かせて我が物にすることも可能でございましょう。しかし、そのような領主様であれば村の税を4割に設定するはずがございません。他家の荘園では税率が6割の場所もあると伺っております。そうであれば領主様は領民を大切に想っておいてではないかと愚考致します。」
「ふん、ますます生意気な奴だ。よかろう、考えてやっても良い。しかし、わしはその石鹸とやらの存在を今日知ったのだ。そのような得体のしれないものをこの場でどうしよう等とは思えんのだが、そうは思わぬか?」
「はっ、勿論でございます。つきまして、今日は大変恐縮ですがこの5個の石鹸を献上致したく。ぜひ、領主様にてお使いになられた上で、ご判断頂ければと愚考します。」
「ふんっ、分かった。奥方にも使ってもらうとしよう。この石鹸を試した上で、貴様の話を聞くのかを判断するとしようではないか」
「はは、ありがたきお言葉」
「ではそういうことだ。もう下がってよい」
「はっ、結果はいつごろ頂けそうでしょうか」
「五日後くらいにまた出向くと良い」
「はっ、ではこれにて失礼致します。」
そう言い廊下にでる。
「誰もいないけど勝手に歩き回っていいのか?」
誰かに会うかもしれずびくびくしながら館を出る。そして門番に挨拶をする」
「おう、とりあえず生きて出てきたってことはうまくいったってことか?」
「え、出てこれない可能性もやっぱりあるんですか?」
「ああ、最悪そのまま切捨てだ」
「えええ~」
今更ながら自分がかなりの賭けをし、いかに危ない橋を渡ったか実感が湧いてきた。
「まあ生きて帰れるんだから良いじゃないか」
バン
そういって門番は背中を叩く。
「イッ、まあそうですね。重ね重ねありがとうございました」
「おう、成功したら俺へのお礼も期待してるからな!」
「はは、そうですね」
そういって大博打に勝った高揚感から少しスキップをしながら妹たちの待つ市場へ向かうのであった。




