とある日
「おまえさあ、いい加減にケラ探すの止めない?」
「ええ~だっておかずが」
「いや、俺別にもうそんなにケラ好きじゃないんだけど」
その後、食べてみたが醤油も砂糖も当然ないので佃煮のように美味しい訳でもない。質の悪い油で炒めただけの昆虫食だ。佃煮ができるまではあまり食指が伸びない。
「何してるの二人で?」
顔を見上げると堀の向こうにリディが経っていた。
「リディお姉ちゃん!ケラを探していたんだよ!」
「そうなんだ、ねえ私も見ていい?」
「うん、良いよ!」
クロエがそう言うと、リディは門を通って我が屋の庭に入り、俺の横にしゃがんだ。
会ったのはこれは2回目だ。前回はただの挨拶だけで顔をまじまじと見る時間も無かったが、こうしてみるとなかなか可愛らしい。若干ウェーブが掛かった赤毛色の肩くらいまでの長さの髪を後ろで結わいでいる。
衣服はこないだの様には汚れてはいないな。
そう横目で彼女を観察する。
クロエは相変わらず、塀と地面の間に空いた穴に水を垂らしては木の枝でほじくったりしている。
「その、こないだはありがとうね気にしてくれて、、、」
「ん?ああ、別に気にすることはない。気になっただけだ」
「ふふ、面白いね。気にするなって言いながら自分は私のこと気に掛けてくれてるのに」
そういってほほ笑む笑顔にドキリとする。
おおっと、別にこれはギャルゲーの世界じゃないんだから自分に話しかける異性は全員自分に気があるんじゃないか?なんて思うなよ自分。
「まあ、そのなんだ。お隣さん同士じゃないか」
「うふふ、そうね」
「で、なんだ、その」
とやはりどうしたのかと聞こうと思った時
「リディ!リディ!あんたどこにいるんだい!」
そういって隣の家と思しきところから大声でリディを呼ぶ声が聞こえてくる。
「ごめんなさい、お母さんが呼んでるからもう行くね」
「あ、ああ」
俺はそれ以上何も言えず、ただ彼女を立ち上がり足早に去っていくのを見送るだけだった。
彼女が隣の家の女性の前に進むと、女性が彼女の頬を引っ叩くのを見てしまった。。。
「お兄ちゃん、隣なんか見てどうしたの?」
「なんでもない、、、お前はケラでも探していろ」
「む~、さっきは探すなって言って今度は探してろって、、、馬鹿!」
もうクロエが何を言っているかは耳に入って来ず、ただただ今起きた事が頭を離れずにいた。
彼女は頬を抑えながら家に入っていった。