0-1 幼女の夢
お久しぶりです
「おかあさん、わたしね、おおききくなったら、このえほんのおひめさまになるの!」
貧民街の一角でボロボロになった絵本を手にした3、4歳の幼女は言った。
幼女が手にしている絵本──『イデリオンの華』は実在の少女をモデルとしたお話である。
それを聞いた母親は優しげな笑みを浮かべながら、
「あなたもきっと誰かのお姫様になれるわ」
と答えた。それを窓辺の椅子に座り聞いていた幼女の祖母は雲ひとつない空を見上げながら呟いた。
「そうねぇ。でもあの子は特別だったから……」
その言葉を聞いた幼女は祖母のもとに駆け寄り、絵本の挿絵のお姫様を指さして聞いた。
「おばあちゃん! おばあちゃんはこのおひめさまにあったことがあるの?」
「あるよ」
祖母は一緒に遊んだこともある、と言いかけてやめた。しかし、幼女は祖母がお姫様に会ったことがあるという事実だけで満足したようで、祖母の言いかけた言葉に気づくことはなかった。
イデリオン帝国は身分制度がある国である。現在も少しはマシになったとはいえ色濃く残っている。その身分を主に分けるのは使える魔法の難易度である。
その身分は上から順に『神聖魔法』が使える皇帝、『建国魔法』が使える王族、『上級魔法』が使える貴族、魔力量は平民並だが『聖魔法』が使える神子、『中級魔法』が使える良民、『初級魔法』が使える平民、『生活魔法』が使える貧民、イデリオン帝国に移住して来たがもといた国で貴族以上の位を持たなかった移民、魔法が使えない隷民。もちろん罪を犯すなどして身分が下がることもあれば、功績が讃えられるなどして身分が上がることもあるので一概には言えない。
皇帝は全ての人の上に立つので別の呼び方で最上級国民とも呼ばれる。同じように王族から神子までを上級国民、良民から貧民までを下級国民と呼んだ。移民や隷民を自国の国民とはせずに法で守らない一方、低賃金で労働させるのがこの国のやり方だった。
本編は絵本『イデリオンの華』のお姫様が主人公です。
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ではまた次回お会いしましょう!