教会の仕事をしなければならないのに僕の婚約者が離れてくれない
神父「本当についてくるのかい?」
令嬢「当たり前じゃない」
神父「まあ良いけど」
令嬢「ところで、本当にこの道ってモンスターとかは出てこないの?」
神父「言った側から不安になることかい」
神父「本当さ」
神父「この山は所謂竜穴とか言われる地点でね。山頂の墓所を経由して邪なる者が立ち入れないようになっているのさ」
令嬢「へーなんだか凄いシステムなんだねえ」
神父「随分と他人事だ。君のことだろうに」
令嬢「え」
神父「君は侯爵の血を受け継ぐ令嬢。という事は曲がりなりにも王族の血族だろうに」
令嬢「という事は」
神父「君の遺骨は高い確率で王墓と同じ土地に納められるだろうね。まあ、それはしばらく後の事だろうけれど」
令嬢「そうなのねえ」
神父「はあ。確かに不気味な所だよ。教会の神父にあるまじき言葉だけどね。少々この場所は気持ちが悪い」
令嬢「へえ。神父君がそんな事を言うだなんて珍しいね。死霊でも出るのかな」
神父「そんな事があってたまるか」
神父「もし、王族の悪霊がよに放たれたと知られれば、僕の首が飛ぶ」
神父「それだけならまだしも、言わばリッチキングならぬキングリッチなど、どれだけの力を持っているか分からない。大勢が死ぬだろうね」
令嬢「大変だねえ」
神父「まったく。そのために王墓は竜穴の真上に立てられているんだ。そんな心配は要らないさ」
神父「ほら着いたぞ。ここが王墓だ」
令嬢「凄い金ぴかだあ」
神父「金ぴかって。あれは金を元に。繊細で莫大な式を壁面全体に敷き詰められ……」
神父「細かい理屈はどうでも良いか。あれが我が国が誇る王墓だよ」
神父「……おお神よ。代々の王たちの魂を癒やし、我ら王国に繁栄を」
令嬢「凄いそれっぽい祈りだ」
神父「祈りなんてどうでも良いのだけれどね。一応仕事だから」
神父「少し釈然としないけれど。防衛機能にも問題は無さそうだ」
令嬢「あ、神父これが目的の聖火じゃない」
神父「はあ。そうだねそれを持ち帰れば完了さ」
令嬢「聖火なんて言う割には何もないんだね。何ならランタンよりも暗いぐらい」
神父「やめなさい。火を触ろうとするな危なっかしいから。一応、不浄を退ける効果があるはずだけどね」
令嬢「けど、なんだか行きよりも帰りの方がおっかないわ。薄暗くって、ほら森の声も聞こえないみたいに」
神父「さっきまで、鳴いていた虫がいなくなった。嫌だな脅かさないでくれよ。どうにも静かすぎる場所は恐ろしく感じる」
令嬢「私に言われても、実際にこんなにも静かなのだし」
神父「そういえば。今ちまたでは鬼女の寓話が流行っているらしい」
令嬢「へーどんな空想話なんだい」
神父「何でも、見習い。修道士が山へ修行に向かったところ、すっかり日が暮れてしまったらしい」
神父「そこには女が住んでいて、床を借りると夜中刃物を研ぐような音が聞こえてきたとか」
神父「その女は実は人食いの鬼で、急いで家を飛び出すも、背後をとてつもない勢いで追いかけてくる」
令嬢「うう。それで」
神父「そこから先は様々だけれど。大体は山に籠もるときに司祭より賜った3つの聖印を使って足止めして。無事に麓まで逃げ延びるみたいだ」
神父「あるいは、鬼女の息子が面を被り、斧を持って追いかけ、熊や丸太をなぎ倒したとか。3つの試練を乗り越えたとか。色々だね」
令嬢「やった。無事に助かたのね」
令嬢「それなら。振り返ると斧を持った鬼が背後に」
神父「やめてくれ。聖火を落とそうものなら大変だ」
令嬢「はーい」
神父「しかしどうしてだろうね」
令嬢「何が」
神父「そういう話は大抵3回の試練が待ち受けていて、大抵、帰り道の出来事だから」
令嬢「うーん」
神父「気持ちで言えば。僕は出発する直前が、一番気分が盛り下がるよ」
令嬢「確かに言えてる。けど実際」
令嬢「こうして後ろからささやかれると恐ろしいでしょう」
神父「ああ、なるほど。安全な場所を背後にしている行きよりも、帰りの方が不安を感じる訳ね」
令嬢「ふふふ」
神父「どうしたんだい」
令嬢「さっきの様子がおかしくって。だって、言葉をかけただけで、あんなに背筋を伸ばして振るえるんですもの」
神父「誰にでもやられると嫌な事ぐらいあるさ」
令嬢「そうかしら」
神父「そうさ。君のことを、言葉だけで震わせて見せよう」
令嬢「あらあら。私に殺気みたいな不意打ちは効きませんよ」
神父「人は突拍子も無い描写よりも身近な痛みの方が想像が付くそうだ」
神父「例えばこの間に処刑方法としてして使われたのは家畜に四肢をくくりつけて、五体を引き裂く方法だったのだけれど、想像出来ないだろう」
令嬢「ちょっと待って既になんだか気持ちが悪いわ」
神父「君の右手を力ずくおさえ、沸々と煮えたぎった湯の中に入れる。悲鳴を上げて暴れる体を押さえつけ、丸々と真っ赤に腫れ上がる」
神父「ずるずるになった手を見て、君が泣きじゃくる所を、もう一度熱湯の中に入れるんだ。今度はゆっくりと。さっきの痛みがもう一度やってくる恐怖を存分に味わえるように」
令嬢「やめて。具合が悪くなってきた」
神父「まだ、左手が残っていたのに。僕の勝ちだね」
令嬢「あなたって本当に神父なのか。時々疑わしくなるわ。あなたみたいなのは、きっと結婚できないのよ」
神父「そうだろうね」
神父「話をしているうちに、すっかり麓だ」
衛兵「お疲れ様です。神父殿」
神父「ええ。今年も神殿に問題はありませんでした。この聖火を使って、慰霊の儀を行なってください」
衛兵2「おい。あの神父。空に向かって話しかけてなかったか?」
衛兵「やめろ。あのお方は、この間婚約者を失ったんだ。」
衛兵2「もしかして、侯爵様の娘が殺されたっていう」
衛兵「素晴らしい神父様だったというのに、痛ましいことだ」
令嬢「見てみて。私の話をしているよ」
神父「そうだね。全く。どうして君は明るすぎるよ。薄暗い帰り道もこんなに騒がしくっては、恐ろしさからはほど遠い」
令嬢「ねえ聞いてるの」
神父「ああ聞いているさ。僕だけが聞いているとも」
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