初クリア
『──な、なんで……』
あれから数刻経って、静かで大きな収納倉庫の中で息を潜めていた。皆息をゼェゼェ切らしながら、あの惨状にまた恐怖して身を震わせた。
『透、なんで見殺しにしたんだ』
『……あの時洋人が声掛けたら、洋人も死んじゃうと思ったから。また死んじゃうのなんて、見たくなかった』
『だ、だからって助けないなんてことあるかよ』
『……』
苦い顔をする透。俺はそれを見た時、もう何も言えないと思った。理由なんてない。ただ、透が今何を思ってるのかが一瞬分からなかっただけだ。
『……あの、とりあえず助かった……でいいかな?』
さっきまで震えていた女性が俺たちに声をかける。
『あ、そ、そうみたいね。ごめんね』
『いえ……あ、私、神谷 憂って言います。名前、まだだったから』
弱々しく話す彼女、神谷はそう頭を下げた。
『助けて頂き、ありがとうこざいます。一度ならず二度までも』
『い、いやいや、私より洋人に言いなよ!私なんてほら……さっき見殺しにしちゃったし……』
そういう透の手は震えていた。
『……さて、これからどうするかを考えよう』
それから俺達は、このイカれたゲームをどう切り抜けるかを考えた。
『とりあえず今はここに居た方が良さそうね』
『こんな広い倉庫で鬼ごっこ。普通なら圧倒的に逃走者の方が有利なんだけど、相手が多勢の狼。鼻も利くしなにより運動能力が人間の比じゃない。いつ襲われるか分からない危機的状況。こんなのゲームなんかじゃない』
完全な理不尽。それを体現するかのごとく、あの女性は為すすべもなく息絶えてしまったんだ。俺達もああなってしまうと考えると、もはや笑えてしまう。
『……ゲーム……』
『神谷さん?』
『……あ、いえ、なんでも……』
『……何か考えがあるのか?』
『……これが……この意味のわからないような殺戮が、本当にゲームだって言うのなら、きっとどこかにヒントかなにかがあるんじやないかな?って』
『……ヒント?』
『はい。あの人……ひと?創造主?とにかく、あのウルって人が本当に人の罪が許せなくなってこんなことを始めたって言うのなら、その時に全員を殺せばもっと楽だったんじゃないかな?って。だから、何かしらゲーム要素を入れてるんじゃないのかな?って、私なりに……思って……』
『……要素なんか何処にも……』
その時、各地のスピーカーから砂嵐が聞こえた。
『……あーあー、聞こえるかな?』
それは、紛れもなくウルの声だった。
『たった今、ゲームクリアした人間が現れた』
その言葉に、俺たちは驚きを隠せなかった。
『人間にしてはさすがだね。ヒント分かりやすかったのかな?いや、こんだけわからないやつが多いからそんな事ないか。取り敢えず、今現在クリア者は7人。残り34万程度。その他、死にたくなければ見つけるんだね。“正解のルート”を』
そう言って、プツンと音声は途絶える。
『……正解の……ルート?』
その言葉にどういう答えが含まれているのか分からない。ただ、現にクリアした人間がいる以上、この地獄を抜け出す糸口があるのかもしれない。
『……でも、どうすれば……』
ヒントと言っても、どれの何がヒントなのかも分かりはしない。俺たちはきっと見落としている。必ず存在する物を……!




