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√4 〜孤狼のゲーム〜  作者: 鷹出筑前
3/7

第一のゲーム


──6月14日、東京ビッグサイト 朝8時



ぞろぞろと疎らに集まる焦燥感漂う人達。その数はもはや数え切れない程だった。


『……この人達もアタリを引いたのか』


その中には老人や子供、果てには赤ん坊を抱えた母親さえもいた。ここまで無差別だとは思いもしなかった。


『……何が創造主だ』


改めて俺はウルという人物に辟易した。と、そこへ──


『ひ、洋人!』


俺の名前を呼ぶ声がした。振り向くとそこには何度も見た姿があった。


『と、透!』


内海 透(うつみ とおる)』俺の幼馴染である。


『よかった!洋人は生きててくれた!』


『あ、ああ。そっちもな』


『とりあえず知り合いが生きてる事がわかって良かった。晴代さんは?』


晴代さんの事を聞かれた俺は、あの時の惨状を思い出し、拳を握りしめてしまう。


『あ……ごめん』


それを察したのか、透は謝ってきた。俺はそれに気にしていないと返事をして、ただ透が生きていたことに安堵する。


『洋人、知ってる?』


『何を?』


『……うちの学校で生きてるの、私と洋人だけらしいよ』


『……え』


『みんなにメッセ送ったけど誰も返信なくて。今日までずっと皆のこと探してたんだけど、結局誰にも会ってない。今日になれば皆来るはずだからって……でも、洋人だけ』


どんどんと声が震えていく。それ程までに不安に駆られていたんだろう。俺はそれを和らげるように肩に手を乗せる。


『……こんな事になったのは全部あのウルとかいう奴のせいだ。大丈夫、何があったとしても、俺が透を守るよ』


『洋人……ごめんね、こんな弱い私見せちゃって!大丈夫!なんだって私全国優勝校の女バスのキャプテンだったんだから!』


胸を張って元気に振る舞う。これでこそ透だ。元気な透を見ると、俺も元気になったような気分になる。

その時、俺の背中に何かがぶつかった。


『っ!、なんだ?』


『あ、ごめん』


後ろに居たのは女性であり、気分が優れないのか、体がフラフラしていた。


『だ、大丈夫ですか?』


『う、うん……久しぶりに外出たから』


年は俺と余り変わらなそうなのに、引きこもりなのか?と思いつつも、未だに震える彼女を俺は放っておけなかった。


『……洋人の浮気性』


透がそう呟くが、なぜ俺がそんなこと言われなきゃならないんだと思った。


『取り敢えず、座れる所を』


『多分、そんなに無いと思う。ただでさえだだっ広いここに目測で10万は超える人達がいるから』


その時、上空に突如レーザーが飛び交い、ホログラムが投影される。


『──やぁ、集まってくれたね。ここには今650万4021人が集まってる。どうやら、数百人程来なかった者もいるようだが、彼らは無条件で削除させて貰ったよ。さて、ここで君たちにやってもらうゲームを教えるよ』


『ちょっと待てよ!!!』


たんたんと話すホログラムがゲームの説明に入る所で誰かが叫ぶ。


『……何?』


『何じゃねぇよ!こんな横暴許されるわけねぇだろ!何が創造主だ!俺たちの命を軽く見んじゃねぇよ!!』


その言葉を皮切りに、徐々に声を上げる人達。それはやがて轟音と化す。


『う、うぅ』


『洋人、その子が……』


ずっと支えていた彼女が耳を塞ぎ縮こまっていた。騒がしさに慣れていないのか、明らかに怖がっていた。


『……だから何だ?』


妙に低く、そして歪んだ声が一瞬にして轟音を止ませた。ホログラムはユラユラと姿を変え、姿形が人狼に成り代わっていた。


『環境破壊、無意味な戦争、くだらない事でお互いを傷付け貶し、それでいて自分たちはこの世界の中で最も尊い生命だと宣う奴らが、何を喚き散らしているんだ?ならば、人間以外はどうなんだ?牛は?魚は?昆虫は?微生物は?それらは人間の価値よりも低いと言うのかい?』


『キミらの命なんてのはちっぽけだろう。心臓を刺したり、一定量血を無くせば簡単に死ぬ。それに、キミ達は自己さえ良ければ周りなんてどうでもいいと考える下卑た種族。だからボクは言わせてもらうよ。変わらないよ。キミらの命なんてなんの意味も価値も無い。だからそのなかのひとつまみの人間だけに意味を持たせる。謂わばこれはボクの最大限の譲歩だ。あまりボクをイラつかせないように』


そう答え、よりこの場の空気が重く感じた。聞こえるのは赤ん坊の泣き声だけだ。


『……さて、ゲームの説明。君らには夕方になるまでに逃げ切ってもらうよ』


逃げ切る?何からだ?


その時、後ろの方から悲鳴が聞こえた。


『いやぁ!!!!お、狼がァ!!』


なんだなんだと皆が皆後ろを振り返る。そこには、檻の中でこちらを睨む大型の狼達が鎮座していた。


『お、狼?』


『そう。今からやってもらうのは『鬼ごっこ』ただし、鬼役はそこに居るお腹を空かした狼君総勢500匹は居るかな?彼らに任せるよ。捕まったら即食われて死ぬから、死なないように逃げるんだね。そこら辺にいっぱい隠れるところあるし、頑張れるんじゃない?じゃあ30秒後に檻の扉が開くから、そこからゲームスタートね』


そう言ってホログラムは消え去った。


『そ、そんな……』


『こんな人数が、一気に逃げ出したら……』


『う、うぁぁーーーーー!!!!!』


1人の男性が狂ったように走り出した。それに感化され、次々と逃げ惑う人人。600万近くの人間が一気に動き出せば、それは津波の様に押し流されてしまう。


『ひ、洋人!どうしよう!』


『くそ、透!掴まれ!』


若干離れそうになっていた透の体を強く引きつけ、未だ震える女性を抱えながら、波に逆らわずに端のほうへ移動していった。


第一のゲームが、始まった。



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