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灰の森の陽の社シリーズ

変遷するイミ カミあわぬ想い

作者: 日浦海里

私の中に流れている

この(いま)まわしい血は

季節が移り変わっていく度

すっかり変わっているはずなのに

あなた達はまだ

その血を理由に

この存在を拒絶するのね


忌々(いまいま)しいのはこの血なのかしら

それとも私自身なのかしら

変われないのは私ではなく

変わらないのは私ではなく

変わるつもりのないあなた達


拒むのならば拒みなさい

変わるのが怖いのでしょう

恐れた目をして(さげす)んだ目をして

見られることにも慣れてしまった

目を合わせることすら出来ないのなら

顔を合わせなければいいのにね


ここから出ていく勇気もなければ

ここから追い出す勇気もなければ

ただひたすらに恐れるだけで

せめて(おそ)れてくれればいいのに

互いに顔も合わさなければ

嫌な思いもしないでしょ



私の中で(うごめ)き続ける

このおぞましい細胞は

月が満ちて欠けていく度

すっかり変わっているはずなのに

あなた達はまだ

この身体を理由に

この存在を受け入れないのね


入れ替われないのは魂のせい?

それとも私の罪のせい?

生きているだけで罪と言うなら

ここにいるだけで罰が必要なら

変わる必要なんてないかもね


拒むのならば拒みなさい

変えるのが怖いのでしょう

虚ろな目をして呪わしい目をして

見られることにも慣れてしまった

手を合わせることすら出来ないのなら

足を向けなければいいのにね




突然差し出されたこの手は何?

その瞳の奥には怯えが見える

けれど(あなど)りもなければ(さげす)みもない

恐怖でもなくて拒絶でもない

その瞳の奥の悲しみは何?

(ふる)えながらも差し出された手は何?


私に触れれば(けが)れることを

知っててその手を差し出すの?

きゅっと噛み締められたその唇は

どんな言葉を隠しているの?




私自身を形作ってる

穢れを知らぬ穢れた身体は

歳神が2度も世界を寿ぐ頃に

すっかり変わっているはずなのに

私自身もまだ

心を理由に

あなた達に触れられないのね


忌々しいのは私自身なのね

信じられない私の心

関わったなら拒絶されると

気遣う振りして手を取れないのは

変わることできない私自身


拒むのならば拒みなさいと

強がったのは私なのでしょう

震え揺れる目で悲しい色して

向けられたことのない感情に触れて

踏み出すことすら出来ないのなら

強がらなければいいのにね、私


ここから出るのは勇気じゃないの

その優しさを壊したくないの

ただひたすらに恐れていいから

少し畏れてくれればいいから

手を合わせて祈ってくれれば

互いに傷つくこともないでしょ



私は人を忌む神の(にえ)だから

私を(うやま)う必要はないの

ただあなたのその言葉だけで

また一人で生きていける


だからあなたはお帰りなさい

人の輪の中に居られる内に

私がホントの()み神として

人々のことを恨まぬように


私はここで見守りましょう

穢れがこの場に留まるように

私は穢れた忌み神として

あなたの幸せを祈っていましょう

カミの穢れは

人の手によるものであるという事実が明らかになり

やがて、み神を経て

再び泉の神として祀られるようになるには

未だ暫くの時を要する



カミの穢れを降ろすために

贄とされた少女のその後は

誰も語ることはなかった

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[良い点]  贄の意味合いは世界中にも国内にも様々あり、捧げる相手によっても変わる事に、神に捧げるのであってもどちらの神かも祈りの中身にもよりけり。  平穏を望むものから変化を望むものまで相反する望み…
[一言]  変えられることは受け入れられても、変わることはできない『私』。  強がらなければ居られなかった『私』が全てを受け入れ昇華させる様は美しくあるとは思うけれど、やっぱり悲しいですよね。  タイ…
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