表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/73

リリー16

 


  砂漠男性と最近はよく見る赤毛の一族。彼らが私に喧嘩を売ってきた。


  間近で観察した男性は、お買い上げしたばかりの王子リーンの前で、悪役の私をやっつけようと鼻息フンフンさせている。


  私、やられないよ?


  あんた達が主役のBLストーリー、簡単にハッピーエンドにたどり着けると思ったら、大間違いだからね。


  そして奴隷制度に賛成してる、お前も心の病院行ってこい!


  こっちも鼻の穴を広げていたら、砂漠男性ではなく、赤毛の一族が全面にしゃしゃり出てきた。


  正直、その髪色には、イラッとさせられる。

 

  別にこの子たちが原因ではないけれど、私がここに来ることになった元凶のあいつ。あのエメアの髪色に、とってもよく似てるよね。


  「……」


  だからなのか、余計に、八つ当たりしてやろうと火が着いた。


  てかあなた、あなたがとても大切にされている良いところのお嬢さんならば、お家の人や警備員たちが、絶対にこんな変質者の集会でお買い物していいって、言わないはず。


  一人でお買い物しただけで、どのお店に立ちよったかを、監視された経験はおありですの?


  飴を買い食いしたとか、屋台のお肉を覗き見したとか、怪しいお店のスタッフルームに侵入し、高額な猫をうっかり家紋の分与して、それを全て書面で報告され、親族会議で警備員達が監視する中、兄貴たちに怒られた事はありますの?


  私のお買い物行動は、セセンテァ警備員が所属する、パイオドというSEC○Mに全て記録されていた。


  怖し。


  そう、丸っと自由が無い。


  それが真のお嬢様というものなのだ。


  だからこんな場所で、堂々と椅子に座っていたこの娘は、真のお嬢様ではない。


  それを詳細に説明してあげたけど、逆に怒りが倍増した顔をした。


  真っ赤になって、私を睨み付ける赤毛の娘。周囲がひそひそ話をする中、突然、香水おばさんが「大商人様のお買い上げだ!」と大声を張り上げた。


  お買い上げ?


  いつの間にか精算されていたらしく、お支払タイムがやって来た。ここで慎重な私は、お財布を再確認する事にする。


  今の私のお財布とは、ピアンちゃんのお兄さん。今さら支払わないよって言われても困るから、念押し確認。


  「そういえばグラエンスラー様、私がお渡しした()()、今でもお持ち頂いているのかしら?」


  「もちろんでございます」


  よし!


  「ならば貴方は、我が家の一部。その事もご存知かしら?」


  「我が一生涯の栄誉であります」


  確認完了。


  怖いものは何もない。お金の力に物を言わせて、あの香水おばさんよりも、私の方が悪役だって、ビシッとクレーム入れつつ支払ってやろう。


  「わたくし、裕福な上に優秀な人達に囲まれて、愛情をたっぷり注がれて成長しましたから、ここにお買い物をしたいと足を運ぶ、憐れな皆様の気持ちが全く理解出来ませんの」


  「お話、痛み入りました。深く反省致します」


  私に賛同してくれるのはお兄さんのみ。その他大勢には全く効果はなかったけれど、ピアンちゃんのお兄さんはベテラン店員、顧客満足度100%を目指して対応してくれる。


  しかも彼は、私がずっと思い続けていたここの奴隷(しょうひん)に関するモヤモヤまで見抜いていた。ちょこっとだけ、変態仮面さんを見直していたら、会場の出入り口がざわめいている。


  騎士団?


  (大分来るのが遅いけど……)


  彼らなら、お兄様やノース家に連絡出来るのかな? と、そう思っていたら仮面のお兄さんがメイヴァーさんの家の話をしだした。 


  エール・ノースって、ダエリアと取り引きのあるメイヴァーさんのお父さんの領地の名前。住所は分からなかったけれど、家紋なら届くはず、そう思って練習したけど上手く書けなかった。


  「ここから出るな!!」


  「!?」


  おじさんの怒号に悲鳴。客席は人が散り散りに逃げている。


  過去世の警察番組でみたことがある、悪の現場に乗り込んで、犯罪者を取り締まる警察官の様に逮捕状見せたり読んだりしない。厳つい男たちが前に出ると、兵士は時代劇の様にバサッて斬り付けた。


  倒れた男達が本当に斬られているのか、脇役を全うして倒れたのかもよく分からない。


  境会(アンセーマ)の奴らに襲われた時とは全然違う。


  自分が狙われた対象ではない。少し離れて見ていると、なんだか、現実感が無い。


  「お前は、何者だ?」


  「?」


  振り返ると、大袈裟に警備員に護られた人々。その先頭に立っていた砂漠男性が、私の本名を聞いてきた。 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ