ホームシックが歴史を変える
初投稿です。
頑張ります。
東の森、緑の広がるこの場所の中に丘を削り取っとったような土色の壁が立ちふさがる。
目的地にたどり着いた俺はおもむろにピッケルを目の前の壁に突き立てる。
ザッ、ザクっ。
日の光を反射しキラキラと輝く砂岩が足元に積もっていく。
「まぁ、こんなものか」
本当はもっと大量に採取したかったが、帰りの道程を考えるとずた袋一つ分が限界だった。
安価な素材だと依頼を出すにも人件費ばっかりかかって仕方がない。
結局自分で取りに来るのが一番コスパがよくなってしまうのは難儀な課題だった。
(ここと街の往復で半日……そんだけ時間があれば実験の一つや二つ……)
失ってしまったものばかりに目が行くのは悪い癖だなと思いつつ帰路についた。
俺、レイ・ファウストはこのあたり一帯を治める領主の息子だった。
俺には貴族の跡取りとして最低限の素質、魔術の才がなかった。
それでも両親は俺を愛してくれた、兄貴もいたし特に将来に悲観することなどなかった。
しかし周りの人間たちがそれを許さなかった。
慣例として魔術が使えない貴族の男児は出家し坊主となることが習わしだ。
例外は認めないとばかりに攻撃された。
見かねた両親が事故死を偽造し出奔させてくれなければどうなっていたか分からない。
それからは下町で好きなことをしてフラフラ生きている。
とりあえず今は街の一番でかい工房を間借りさせてもらい、研究実験に明け暮れている。
何の研究かって?
魔術さ
魔術が使えないのに魔術の研究とか頭おかしいんじゃない?と思うかもしれない。
だが考えてみてほしい、人々は早く走る方法を日々模索しているが、なぜ足が動くのかについて考えてる奴は少ない。
こいつが解明されれば魚だって陸地を走るかもしれないだろう?
つまりだ魔術が何たるかを理解すれば魔術を使えないやつでも使えるようになるかもしれないだろう?
なんでそんなできるかもわからないような不毛なことに精をだすのかだって?
そんなの決まってるだろ、胸張って家に帰りてぇんだよ!