1.男聖女、追放される
男聖女っていないな〜面白そうだな〜と思って書き出したやつです。
世界を救うことを目的に結成された冒険者チーム、それが勇者パーティだ。
その勇者パーティに選ばれた人間は選ばれし者であり、皆からの憧れであるというわけだ。
6人チームと少々大所帯だが、『聖女』という存在がパーティ内にいるため、パーティメンバーに常に加護が付与されているため、みんな安全に行動できるというわけだ。
そして勇者パーティを結成してから半年、冒険も佳境に入ってきたというところだった。
「お前、もうパーティから抜けていいよ。」
それは突然だった。私は、首に向けられた刃のような冷たい目を勇者から向けられていた。
「それはまたなぜでしょうかクロード。」
クロードと私が呼んだ金髪の彼が勇者だ。まぁなんというかこう今はこんな性格ですが昔はもっと誰にでも優しく接する人だった。私との親友という関係も今では腐りきっている。
どこで道を間違えたんだろうか。
「簡単だ。無能なお前をパーティに置いておく理由がないからだ。治癒魔法は大した回復力じゃあねえし、そもそも俺たちはダメージを食らってない。それくらいの実力には俺たちにはある。攻撃魔法に秀でているわけでもないお前をなぜ置いておく必要がある。」
あぁ…。ここまで言われるとはな。
「無能を勇者パーティに置いていたら全員の評判が下がっちゃうわ。いわばいるだけで迷惑なの。わかる?」
「俺もクロードに同意だ。無能が仲間にいるというだけで士気が下がっちまう。」
「私も同じ意見ね〜。治癒魔法もかけてもらったことないし、魔法の威力も大したことなかったからね。」
「そこまで言わなくてもいいだろうがよ!ま、無能であることには違ぇねえけどな!!成長も何もしてねぇテメェをおく必要があるか??」
仲間で心を通じていたはずだった人たちは自分を馬鹿にして大いに笑っている。
無能だと笑い飛ばしている。
その中で自分の中の何かが切れた。プツン、と。
「そうですか。わかりました。では、今すぐにでも荷物をまとめて出ていきましょうか。」
「お〜そうか、話がわかる無能でよかったぜ。幸い、俺たちにはニーナっていう聖女がパーティにいるんでな。そもそも、お前の魔法は聖女様の下位互換でしかなかったんだよ。わかったらさっさと出ていくんだな。」
それを聞き、内心吹き出しそうになりながら顔を取り繕う。
「ええ、ニーナ、頑張ってくださいね。」
「……。」
ニーナは何をいうわけでもなく黙っている。彼女の表情は見えない。
本音を言うと、彼女も連れていきたいのだが、それをするのも良くないだろう。
彼女にとあるメッセージだけ残しておいた。
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荷物をまとめ、宿を後にした後、どこに向かおうか途方に暮れていた。
というよりかは虚無感に襲われていた。
親友から絶縁宣言を受けてしまったこと、半年もいたパーティメンバーから無能扱いされていたこと、いろんなことが重なり合って、何も考えられなくなっていた。
「でもまあ、一回国に帰ってみるか…。」
勇者パーティを追放された魔術師、もとい『聖女』であるこの男の名はシャルル。
聖女としてスキルを受けた彼はできる限りこのスキルを秘匿していた。聖女は、『聖女』というだけあり女性がなるものなのだが、稀に彼のように男性に聖女のスキルが付与されることがある。
シャルルが聖女であるという事実を知っているのは祖国の一部と教会の主要部、そして聖女にジョブチェンジできる素質がある見習いのニーナだけだったのだ。
そして、パーティメンバーは知ることだろう。ニーナはただの魔術師で、シャルルにこそ大きな力が存在していることに。
自分たちがが今まで戦いでほとんど無傷なのはシャルルの加護のおかげであり、ニーナには加護の力はないということを。
「最初に、しっかりと言ったはずなんだけどな。聖女は女とは限らないのに先入観とは恐ろしいですね…。」
冒険中も何度もそれを説明したのだが妄想だとかなんだとかで片付けられた。
それも仕方ない。相手のステータスを見るのには自分より魔力が高くなくては見ることができない。
聖女の魔力を超える冒険者などそうそういないだろう。ニーナも一緒に言ってくれてたんだけどな…。
ま、いいか。とにかく、ニーナからの返事を待って、今はひとまず帰るためのお金を稼ぐとしよう。
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