<第二話>姫子への依頼
脅迫状が警視庁に届き、事件発展への可能性が検討された。
指紋も無く・消印も無い。そして、一番厄介なことは、直接投函された玄関前の防犯カメラに、投函した人物が映っていなかった事。
夕方、いつものようにお手伝いさんが取りに行く郵便物の中に脅迫状はあった。
従って、前日の郵便物を取りに行ってから発見された日までの時刻の防犯カメラの映像に、投函した人物が映っていなければいけない。しかし、映像には、郵便受けに脅迫状を投函したような怪しい人物は、一人もいなかったのだ。
ここで、外部からの質の悪いイタズラである可能性が低くなり、警戒が高まったのである。
カメラに映っていないということは、取り出し口側、つまり敷地内から脅迫状が入れられた可能性が非常に高いという事だ。
現状では、これがイタズラか本当の犯行予告なのかを情報が少ない為絞ることが難しい。
誕生日まで、後一週間。
望月家に脅迫状が投函された日に出入りした人間を含め居た人物について調べるには、やはり潜入捜査が一番迅速な方法。そう結論が出たのだった。
こうして警護をしながら、脅迫状の投函者の割り出しを進めることになった。
だが、捜査一課の顔ぶれ、ベテランになるほど事件の経験が人相を作るのか、強面揃い。子供から慕われる顔つきでは無かった。
こんな中、青野が適任と黒川が推した。姫子という相談できる同行者を付けることもその推薦には含まれていた。
「姫子さん、黒川です。最近どうですか?」黒川から姫子に連絡が入った。
「あら、黒川さんお久しぶりです。元気にしていますよ。黒川さんこそお元気ですか?」
「ああ、元気ですよ。相変わらずの生活ですが、体が頑丈なんでしょうね。ところで、姫子さん、明日から一週間お付き合いいただけませんかね。」
ダイレクトに用件を伝えてくる。
「一週間?もう期間が決まっているのですね。どんなお話ですか。」
黒川からの期間が最初から決まっている用件は、初めてであった。
(続く)