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ベルベット天野川①



「だから何で私が!」


「牧野さんは多分食いそうだし飯村は皆んなの面倒で手一杯だし竹下さんはだらしないし。ここに住むなら面倒はお前が適任だろ。大学通いながらだからたまに顔を見るだけでいい。幸いうちは真美さんがいるから生活面は大丈夫だろう」


「…はぁ。分かりました。面倒は見ますが法的な千歳さんの後見人は井上さんがなって下さいね?21歳の俺が後見人はキツいので」


「…仕方ない。分かった。千歳、こっちで葬儀とか決めて進めていいか?あと学校も天神高校に書類を作っておく」


「はい。よろしくお願いします。あと多分うちの親遺産あるはずなので俺が受け取れる様にしといて貰っていいですか?そのお金で弟の入院代や生活費にしたいんで」


「分かった。今は夏休みだけど途中から参加の神谷には授業内容がキツいと思うから補習を橘から受けるといい。橘、真美さんに言って部屋の鍵貰って誰か人集めて必要な物揃えといて。葬儀は明日か明後日にはあげて1週間以内に遺産手続きと後見人も終わらせるから」


「分かりました。千歳君行きましょう。寮を案内します」


「はい!」


千歳はスタスタ歩く橘の後を追った。


「入口はオートロックで暗証番号を4桁、0112だから覚えといて。こっちは居たから分かるだろうけど救急室。んでこっちが食堂」


橘は食堂のドアを開けた。中は6人掛けの食卓テーブルが8つに5人は座れそうなソファーと1人掛けソファーが1つと大きなテレビにマッサージ機もある。


「あら、新人さん?」


おっとりした顔の中年女性が奥の部屋から出て来た。

「昨日の被害者で2学期から天神高校に通う神谷千歳君です」


「まぁ!それはお気の毒に。この仕事は大変だけど頑張ってね!」


「はい」


「今日からここに住むの?」


「とりあえず今日は俺の部屋に泊まらせます」


「なら今日はパーティね!好きな食べ物は何かしら?」


「カレーライスです」


「ならカレーライスは絶対作るわね!あとは唐揚げとじゃがベー巻きにサラダかしら?」


「じゃがベー巻き?」


「潰したジャガイモとベーコンをマスタードで和えて春巻きの皮に包んで油で焼くの。美味しいわよ〜」


「美味しそ〜」


「それじゃあ夕食はお願いします。あと空いてる部屋の鍵お願い出来ますか?」


「ちょっと待ってね〜」


真美は食堂を出たので橘と2人っきりになった。


「あの、橘さんの下の名前ってなんですか?」


「雪人だ」


「雪人さんって呼んで良いですか?」


「…いいけど」


雪人は眼鏡を上げて位置を直した。


「ここ何階まであるんですか?」


「10階。一階に真美さんの部屋があって2階が井上さんの部屋と平井さんの部屋で隣が和室で受け身の練習や精神統一に使う部屋でその隣がトレーニング室だ」


「雪人さんの部屋は何階ですか?」


「7階の701号室。因みに現在このマンションに住む陰陽術師は31名。真美さん以外は陰陽術師だ」


「平井さんもなんですか?」


「平井さんは医療型の陰陽術師だから。陰陽術師には4種類あって医療系、戦闘系、防御系、特殊系。千歳君は銃だけど効果は撃った弾丸が氷の花の様に広がるから特殊系かな。特殊系は4大元素や変わった能力で式神遣いとかが一般的で数が少ないんだ」


「お待たせ〜」


真美が食堂に入って来た。


「702号室の鍵よ。雪人君の隣が良いでしょ?」


「ありがとうございます」


千歳は鍵を受け取ると雪人と食堂を出た。


エレベーターで7階に上がると702号室の鍵を開けた。


お風呂とトイレは別で洗面所もある。リビングは12畳でカウンターキッチン有り。寝室は6畳のフローリングで大きめのクローゼットもある。


ベランダからは公園が見えて住みやすそうな部屋だった。


「家具は明日運ぶとして今日は救急室のベッドで眠るといい」


「そこは俺の部屋に泊まれよでしょ」


「布団は一組しかないしベッドはシングルだ」


「ぎゅうぎゅうで眠ろうよ」


「…はぁ」


雪人は露骨に溜息を吐いた。


「どうなっても知らないからな」


「はーい♪」


千歳は元気良く返事を返した。


「ねえ、千尋のお見舞いに行きたいから病院教えてくれはい?あと家に一度寄りたいから電車賃貸して下さい」


「千歳は頭を下げた。


「荷物の整理か?」


「うん。明日運びやすいように」


「俺も行こう」


千歳と雪人はマンションを出て駅に向かい電車に乗り共同病院の個室に入った。ベッドの上で寝ている千尋は目立った怪我はなくスヤスヤと寝ていた。


「魂が戻らないと目が覚めないんだよね?」


「そうだな」


「早く見つけないと」


「仙蛇のおじじと言ったか。強いのか?」


「千年以上生きてる白面の君より長生きで妖怪の割には人間が好きらしい。あとお菓子で釣れるって」


「千年以上の妖怪か。大妖怪だな。長生きした分だけ妖怪は強いから侮ると痛い目に見るぞ」


「うん」


千歳と雪人は看護師に挨拶をして共同病院を後にした。


昨日の半日しか住んでない家に着くと荷造りをした。


金庫から300万円を取り出してスーツケースとリュックを持ってマンションに戻った。


「「千歳君、ベルベット天野川にようこそ!」」


沢山の人に囲まれてクラッカーがあちらこちらで鳴った。


「ベルベット?」


「この寮の名前。くそダサいでしょ?」


近くにいた少女が笑いながら話しかけた。


「確かにダサいかも」


千歳も笑って返した。


「私天神高校夜間部1年佐々木つかさ。よろしく」


「俺は神谷千歳。よろしく」


千歳とつかさはコップで乾杯をした。


「千歳君って美人だねー。お肌とか超綺麗!」


「本当だー!私よりも可愛いかも」


「それは正解」


背の低い少女と背の高いチャラい少年が会話に混ざった。


「何よ!私だって化粧したら美人になるもん!」


「でも千歳君は化粧無しでこの顔だろ。勝てねぇって」


少年が笑った。


「何をー!?分かってるけどあんたには言われたくない!」


千歳は今にも喧嘩を始めそうな2人にハラハラした。


「先輩、自己紹介したらどうです?」


つかさが助け舟を出した。


「俺及川悠人。夜間部2年、よろしくー」


金髪に茶色の瞳の明るい少年が言った。良く見ると腕の筋肉があるガテン系だ。


「あたしは冴島希。夜間部3年だよ!」


黒髪にそばかすの肌の素朴な少女だった。身長は150センチもないだろう。


「よろしくお願いします。俺は神谷千歳、高1です」


「いっぱい色んな人と話して仲良くなってね!」


「千歳君スマホ持ってる?アドレス交換しようぜ?」


「良いですよ」


「私も交換するー!」


「あたしも!」


千歳は3人とアドレスを交換した。




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