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白面



ガタゴトと揺れる電車内はとてもじゃないが座れる状況ではなかった。水戸駅で降りると雲一つない空の下をボストンバッグを持って歩くのは神谷千歳16歳。今日茨城県に家族で引っ越して来て家族と家に向かってる最中だ。


「着いたぞ」


一言そう言う父親が一軒の家の門を潜った。


「…すご」


一言で言えば豪邸と言えるだろう。家の前には2台は停めれる駐車スペース。門を潜ると芝生の庭で壁には背丈程のコニファーが植えられていて玄関までの道にはタイルが敷かれている。


家の中に入ると広めの玄関にリビングは20畳がある。階段の隣には6畳の和室があり、その奥にはキッチンがあって裏庭に出れるドアがある。リビングの反対側には6畳の和室と奥には洗面所とお風呂場とトイレと納戸があった。


2階に上がると部屋は5つでそのうち1つは1畳で納戸だろう。ファミリースペースの場所と2番目に広い部屋にはベランダがあり全部屋クーラー付きだ。


「兄ちゃん、ここ俺の部屋ね」


弟の千尋が2番目に広い部屋を見て言った。


「何言ってるんだ。ここは俺の部屋だし」


「ならじゃんけん!」


「最初はグー!ジャンケンポンッ」


結果は未央がチョキで千尋はパーだった。


「くそー!」


「やっぱ俺って運良いわぁ」


勝ち取った部屋のベランダを開けて裏庭を見ると芝生と花壇が見えた。


「父さんすげーよな。宝くじで5億当てるなんて」


「カフェと家で約1億5000万でしょ?新車2台に家電と家具の一部新しくして残りそれでも3億あるってやばいよね」


「俺大学に行って教師になるんだ」


「へぇ。千尋小学校なのにもう決めてるのか。凄いね」


「えっ。兄ちゃん高校生なのに将来決めてないの?」


千尋はドン引きした目で未央を見た。


「俺も教師なろっかなー。それで50くらいになったら父さんの後継いでカフェやるの」


「ちとせー!ちひろー!荷引越し業者の人来たから降りて来てー!!」


「「はーい」」


母親の大きな声が聴こえて千歳と千尋は返事をして部屋を出た。


家具家電と段ボール全て各々の部屋に運び込み千歳は段ボールを開けて荷解きをした。


「今度の住人は随分と美人だな」


千歳は一瞬手が止まり再び手を動かして洋服をタンスに仕舞った。


「お前私の声が聞こえるのか?」


千歳は知らぬフリをした。


千歳は幽霊は見えない。しかし変なモノは見えた。沖縄にいた時は河童を見た事もあるが声はかけきれなかった。何故なら可愛くなかったから。アニメや漫画で見るような可愛らしい外見は小さい河童だけで大人の河童は目がギョロリとしていて怖いからだ。あと呟いていた発言も怖かったせいでもある。


千歳にとっては変なモノ、妖怪だと認識しているが目が合うと喰おうとしている輩もいるので下手に話しかけない方がいいと認識している。


タンスに片付ける洋服を仕舞い終えて残りは教科書や雑貨類だがその場所は声がした方だ。千歳は目線を下げて足元を見ると人の足や妖怪の身体は見えない。


千歳は意を消して目線を上げると段ボールの上に座る男性と目が合い冷や汗をかいた。白髪の長い髪に頭には白面を着けて白の生地に金色の刺繍の着物に白の下駄を履いた真っ白な美青年だ。


「なんだ。聞こえるだけではなく見えるのか」


千歳は頭に白面の妖怪が言い終わる前に部屋を出て千尋の部屋に入った。


「何?」


「俺の部屋に来てくれない?」


「なんで?」


「…ゴキブリがいて」


「やだよ」


「一生のお願い!」


「自分でどうにかすれよ」


「お前冷たい。ゴキブリはいないから部屋に来て」


「そんなに私と2人になるのが嫌か」


白髪の妖怪の言葉に未央は冷や汗をかいた。


「あーならお母さんからゴキジェット借りてこよ〜」


千歳は部屋を出て両親の部屋へ向かった。背後には白髪の妖怪がついて来る。


「無視しなくてもいいんじゃないか?」


「お母さーん、ゴキジェットある?」


「え?まかさゴキブリ出たの?」


「部屋で黒い影を見つけた」


「ちょっと待ってぇ。…一階の段ボールの中にあるかも。適当に開けて探して来て」


「はーい」


千歳は部屋を出て一階へと降りて段ボールを開けてゴキジェットを探した。


「ねぇ。私をゴキブリ扱い?」


「あった!ゴキジェット」


千歳は何度も話しかける白髪の妖怪をスルーしてゴキジェットを持って部屋へ戻り雑貨の入った段ボールを開けて荷物の整理を始めると白髪の妖怪はいなくなっていた。


夕食を食べ終えてお風呂から出ると部屋に戻りゲーム機で遊んだ。


〝ゾクリ〟


急に背筋が凍った。冷房を点けているが冷房の寒さじゃない冷気が身体を包み込む。


(昼間の妖怪?いや、アレは何も感じなかった。他の何かが部屋に入って来た?)


〝ーパァン〟


何かが弾ける音がした。それと同時に嫌な予感がした。


ドアを開けて家族の元へ行こうと立ち上がった。


「やはり君は霊感が強いね。うん。今出て行ったら君も殺られるよ」


振り向くと昼間の白髪の妖怪がいた。


「あんたが何か呼び寄せたのか?」


「いや。どちらかというとこの家が呼んだんだよ。ここは霊道が通っていてね。人間の魂が集まりやすいんだ。そして私ら妖怪の中には人間の魂を喰べる趣味の奴がいる。そいつが食事をしに来たのさ」


「あんたも喰べてるの?人間の魂」


「たまに摘み食いするくらいね」


「でも人間の魂なら生きてる人間には興味ないよね」


千歳はホッと息を吐いた。


「人間を襲う妖怪もいるよ。君の両親は魂事喰われたけど」


「は?」


千歳は冷や汗をかきドアを開けた。


「生身の人間が勝てないよ。陰陽術師なら別だけど」


「陰陽術師?とにかく弟の元に行かなきゃ」


千歳は部屋から出て階段を降りた。




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