表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/200

第93話 なんか凄くジェラシーを感じている

「へぇぇ……今夜はクラリッサ様がメイドになるんですか……よく承諾してくれましたね」


 私は夕食後に部屋に戻ってクラリッサ達が来るのを待ちながら、エメリアのご奉仕を堪能していた。ご奉仕とは言ってもえっちな意味ではない。

 お茶をいれてくれたり、お菓子を「あーん」してくれたり、膝枕をしながら耳掃除をしてくれたりと言ったようなあくまでメイドとしてのご奉仕だ。

 まぁこの世界のメイドはかなり主人との距離感が近いので、かな~り手厚いご奉仕になるわけだが。

 今も耳掃除が終わって膝枕をされたまま、エメリアの太ももの感触を堪能しつつ、風呂上がりの香りまで味わっていると言う贅沢ご奉仕コースの真っ最中である。


「まぁね、エメリアは知ってる? メイドとお嬢様の恋愛話で大ヒットしてるお芝居があるって。それを見てからクラリッサ、メイドにも興味があったらしいよ」

「もちろん知ってますよ。まだ見てはいませんけど、首輪がテーマの一つになってるってやつですよね」

「それそれ、その首輪のやつ」


 首輪メイド、すなわち今のエメリアと同じ格好だ。エメリアは部屋で私にメイドとしてご奉仕するとき、必ず首輪を付けるようにしている。

 それはお風呂に入る時もそうで、お風呂に入る時くらい取ったらどうかといったら「これは私がアンリエッタのものである証なんです。どうか2人でいるときはずっと付けさせてください」と懇願されたので、結局私が折れた。可愛いからいいんだけどね。


「しっかし、そんな話題になってるってのに、私聞いたことなかったんだよねぇ」

「まぁそういうこともありますよ。たまたまお耳に入らなかっただけじゃないですかね」

「そういうものかな……そう言えばそのお芝居、クラリッサと一緒に見に行くことになったんだけどエメリアも来る?」


 そう誘ってみると、愛おしそうに私の頭を撫でていた手がピクリと止まった。どうしたのかと思って表情を伺おうにも、その表情は豊満過ぎる下半球に隠されて膝の上から見上げる私の視界には全く映らない。


「えっと……お誘いは嬉しいんですけど……出来れば2人っきりで見に行きたいなぁって」

「え、あ、ごめん。じゃあ今度2人で見に行こうか。……もちろん、デートでね」

「はいっ!! 嬉しいです!!」


 そうだった。ハーレム自体は容認しているエメリアだけど、結構焼きもち焼きなのを忘れていた。そりゃクラリッサ達と一緒に行くよりも2人っきりでデートの方がいいに決まってるよね。


「エメリア、メイドもの好きだよね」

「大っ好きです!! メイドたるもの、常にメイドの研究は怠りません! メイドの技術講習は欠かしませんし、「月刊メイドの友」も定期購読してます。メイドが出てくる作品とかも常にチェックしてるんですよっ!」


 こぶしをギュッと握りながら力説された。エメリアって物凄く職業意識が高くて、メイドであることに誇りと楽しみを持ってるのよね。

 だからこそこんなにも素敵なご奉仕ができるんだろうけど。


「それは違いますよっ。アンリエッタ相手だから、こんなご奉仕ができるんですよっ」

「心を読むんじゃないってばっ」

「だってっ、こんな密着してるんですもん。なんか漏れ出てくるイメージを拾っちゃうんですよね」


 私と2人っきりの時だけアンリエッタと呼んでくるエメリアだが、最近どうも私の考えていることが分かるようになってきてるようなのだ。

 先生曰く、高魔力の者どうしが幾度も接触を重ねた結果稀に起こる精神感応……いわゆるテレパシーのようなもの、らしい。

 だけど私の方からは一切わからないんですけど? なんか不公平である。でもこれも先生曰く、受け手の方が精神的受信能力を発現しやすいとのことらしい。受け手っていうのは、まぁその、アレの際の受け手というやつである。


「それはそうとさ、今晩クラリッサがシンシアと一緒に来るわけじゃない?」

「そうですね」

「でね? その時にシンシアから「お嬢様をメイドとして教育いたしましょう」って提案されてるのよ」

「クラリッサ様を教育……!! そ、それはまた、何と言うか…………素晴らしいですね!!」


 でしょ? 素晴らしいでしょ? 私も二つ返事でおっけーしたのよ。


「それでね……エメリアも参加しない? クラリッサのメイド教育に」

「……!!」


 やはり寝転んだ膝の上からは表情は見えないけど、これはどんな顔をしているか直ぐに分かった。たぶん嬉しそうな顔だ。


「いいんですか!? ぜひ! ぜひ参加させてくださいっ!! ああっ……あの高飛車でプライドが高くてお嬢様の中のお嬢様であるクラリッサ様を、メイドとして教育するのに参加させて頂けるなんて……メイド冥利に尽きると言うものです!!」


 あ、やっぱりエメリアもクラリッサのこと高飛車って思ってたんだ。まぁでもあの子こそお嬢様の中のお嬢様ってのには同意する。


「クラリッサ様を教育……ということは、クラリッサ様が私の「妹」になるってことでいいんですよね」

「妹……?」

「あ、ご存じありませんでしたか。メイドの教育係というのは、その子の「姉」ということになる決まりなんです」


 何それ。なんてキマシタワーなシステムなんだ。考え付いた人に勲章をあげよう。


「で、その「お姉さま」からメイドの何たるかを徹底的に教育されるんです」

「……ん? ちょっと待って? エメリアにもいるの? その「お姉さま」って」

「はい、もちろんです。私もお姉さまからご奉仕の仕方を手取り足取り教えていただきました」


 ――へ、へぇ~。ふぅ~ん、そ、そうなんだぁ……あれ、なんか凄くジェラシーを感じている自分がいるぞ?

 いや、自分でも驚きなんだけど、こんなに胸がざわつくなんて思いもよらなかった。いつもならキマシタワーって言うところなのに。


「そ、そう……で、でもさ、その、そんなお姉さまって呼んで、付きっ切りで教育してもらうって、その、凄く仲良くなったりもするんじゃない……?」

「そうですね……膝枕とかも教えられたりして密着することも多いので……そのまま恋人関係になる子も多いですね」


 なんか、この話、すごく胸がざわつくんだけど。


「そ、それで……え、エメリアはどうなの?」

「私ですか? ………………私もお姉さまからお誘いされましたけど……」

「……!!」


 誘われてたんだ……いや、それはそうよね。だってエメリアこんなに可愛いんだし……


「――丁重にお断りさせて頂きました。だってお姉さまのことは好きでしたけど、それはあくまで「お姉さま」としての好きですから」

「エメリア……」

「私が女の子として好きなのはアンリエッタ、あなただけなんです。私の子供の頃からの夢はずっと、アンリエッタの赤ちゃんを産むことなんですよ?」


 その言葉を聞いて、私はつくづく幸せ者なんだなって実感できた。この子にここまで想われているんだ。幸せでないわけがない。


「赤ちゃんかぁ……楽しみだなぁ……」

「や、やんっ……もうっ……まだそこにはいませんよっ……」

「わかってるけどさ~。待ち遠しいなって」


 私はエメリアのお腹を優しくさすると、エメリアも私の頭を優しくなでてくれた。


「早くエメリアをママにしてあげたいな」

「卒業までお待ちくださいね……卒業したらいくらでも産んで差し上げますから」

「ん、それまで楽しみにしておく」


 その幸せな気分のままエメリアのお腹をさすっていると、


 コンコン


 部屋がノックされた。あ、そうだ、今晩クラリッサ達が来るんだった。盛り上がりすぎて忘れてたわ。


「クラリッサ様のメイド教育ですか……楽しみですね~」


 エメリアは名残惜しそうに膝枕を中断して起き上がると、服を手早く直してドアの方へトテテと歩いて行った。

 危ない危ない。もうちょっと来るのが遅かったら押し倒してたかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ