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第09話 こんな偶然ある!?

 基礎魔法学の授業では何とか全員が炎を灯すことができ、その後は徹底的に座学で基礎知識を詰め込まれた。

――綺麗なお姉さん的雰囲気のアリーゼ先生は意外とスパルタだった。ギャップ萌えである。


 そして長い授業が終わり、本日最後の授業である魔法スポーツを受けるため、ジャージ的なモノに着替えてグラウンドに向かう。

 そこで私達を待っていたのは――


「やあやあ、入学おめでとう! 魔法スポーツ担当のテッサ・バニングスよ! これからよろしく!」


 すらっとしてよく引き締まった体に短くした黒い髪が映える、とても快活な感じの女性教師だった。

 背はそこそこ高く、これまた形のいいお胸をしている。


「よろしくお願いしま――」

「声が小さい! もう一度!」

「よ、よろしくお願いします!!」

「よろしい! 学生は元気が一番よ!」


 おおう、体育会系。にかっと笑った笑顔はなかなか魅力的だったが、


「えーっ、と、君たちはA組ね……。ということは……アリーゼの担当なのね……」


 出席簿に目を通すと、何故か急に奥歯に物が挟まったような態度になった。


「その、えっと、アリーゼ元気だった……?」

「え?同じ教師なんですし、いつも会ってるんじゃないんですか?」


 やけにもじもじしてる先生に私は聞き返したが、


「いや、ほらグラウンドって遠いでしょ? だから魔法スポーツ担当の教師はグラウンドに近い別の棟にいるのよ……入学式でも声かけられなかったし……で、どうだった? 元気だった?」

「はぁ、元気でしたけど?」

「そ、そっか! ならいいんだ! うん」


 困惑する私たちをよそに先生は元気よく号令をかける。


「よしっ! ではまずグラウンドのランニングから! ゆっくりでもいいから頑張ってね!」

「えええーーーっ!?」


 不満の声があがる。まぁ当然よね。


「そうは言っても魔力の発動はまだまだ出来ないでしょ? そんな状態じゃ教えることなんてないのよね」

「それはそうですけど……」

「体力もまた魔法の重要な要素だから、学年の序盤から体を鍛えさせるというわけよ。ほら走った走った」


 そして私たちはブツクサ言いながらもグラウンドを走り出す。そしてしばらく走っていると――


「テッサ先生、アリーゼ先生と何かあったね、あれは」


 隣についた子から話しかけられた。たしかアリーゼ先生に色々ぶっこんでいたポニテの子……ルカって言ったかな?


「え?そうかな?」

「絶対そうだって! だってアリーゼ先生、魔法スポーツのこと喋るときだけなんか変だったでしょ? そしてテッサ先生のあの態度……これはずばり色恋沙汰と見たね!」

「色恋沙汰?」

「そうよ、間違いない!」


 ポニテを上下させながら、全く息も切らさず楽しげに話しかけてくる。

 恋バナとかが好きな子みたいね。私も好きだけど。


「あ、ごめんごめん、急に話しかけて、私ルカ、ルカ・リンゼット。よろしくね!」

「アンリエッタ・クロエールよ。よろしく」


 お互いにぎゅっと握手をする。手にタコがある、スポーツを頑張ってきた子の手だ。


「推薦なんだよね? さっきの授業凄かったじゃん!」

「いえ、それほどでも……そ、それより、走るの得意みたいだけど、何かやってたの?」

「ん、まぁね! 去年の国王杯ジュニアの部では結構いいとこ行ったんだよ~」

「ご、ごめん……私あんまりそっちは詳しくなくて……」


 スポーツ以外にも何も知らないんだけどね。


「そっか! まぁそんなわけでさ! プロ入りしたくてユリティウス来たんだよね。やっぱり魔法スポーツと言えばここだしね」

「そうなんだ。えっと……それまでは魔法じゃないスポーツだったの?」

「そりゃそうでしょ。魔法をちゃんと学ばないと魔法スポーツはできないし、危ないからね」


 そうなのか……普通のスポーツと、魔法ありのスポーツですみ分けできてる感じなのかな?

 というかスポーツのプロって。そういうとこ随分進んだ国なんだろうか。

 

「普通のも楽しいんだけど、やっぱり一番人気があるのは魔法ありのルールだからね! ヤキューは!」


 野球? いや、たまたま同じような名前のスポーツなんだろう。珍しいこともあるものだ。


「えっと、それどんなスポーツなの?」

「えええ!? 知らないの!? 結構人気競技だと思ったんだけど……まだまだなのかな……」

「い、いや、私が全く詳しくないだけよ! 多分!」


 ちょくちょく記憶が無いのが足かせになるわね。もっと気を付けないと……


「そうかな。えっとね、ここ数年で広まった凄く新しい球技なんだけどね?」

「球技」

「攻撃と守備に分かれていて」

「ふむふむ」

「トーシューの投げた球を」

「ん?」

「ダシャーが打って、それを繰り返して点数を競うんだよ。魔法ありなら250キロは出るからね! 燃えるよ~」



「……野球じゃないの!?」

「だからヤキューだってば」


――いやどう聞いても野球でしょ!? どうなってんの!? こんな偶然ある!?


「え、えっと……新しい競技って言ったわよね?」

「そだよ? 数年前だったかな? 新しいスポーツだって誰かが広めていったみたいで……そして爆発的に人気が出て、最近プロもできたよ」

「数年前?」

「うん」


……えっと、これはつまり、あれなのかしら?

 私以外にも転生してきた人がいる? そうでもないとこんな偶然あるわけないし……そしてその人があっちの知識として野球を広めた? いやでもなんで野球??

 野球が好きだったんだろうか……いや私も好きだけどね? 野球。


「……んんんん??」

「どうかした?」


……そういえば他愛のない雑談の中で、私が野球を好きだって遥に話したことがあった。


『だったら一緒に行きませんか? お姉さま』


 そして二人でデートの時に見に行ったんだっけ……あの時の遥はとても楽しそうだった。


――私の意識が目覚めたのは昨日だったけど……もっと早く目覚めることがあったとしても不思議ではない。

 それこそ数年前に目覚めて、そして現代知識を広めていった……?


……もしかして来ているの?遥……

 

 強引すぎるし、遥だという確証は全く無いけど……それでも誰かがこちらに来ているのはほぼ確実のようだ。

 まさかこんなことで手がかりが掴めるとは思っていなかったけれど。


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