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第07話 可愛いなぁ! もう!

 私は机に突っ伏しながら先ほどの彼女――クラリッサのことを考えていた。

 結構親しげだったし、最後に会ったのが2年前いうことはそれまでは多分友達として過ごしていたのだろう。


 でも彼女は私――アンリエッタのことを好きになってしまい、そして思いの丈を私にぶつけ、振られた――そんなとこだろうか。

 恐らくだけど、昔の私は女の子を恋愛の対象として見ていなかったんだと思う。そうでもないとあんなにも可愛い子を振るなんてありえないもの……なんと勿体ない……うごごごご。


 それもただ可愛いだけじゃない。必死に勉強して愛しい人を追ってきたという健気さ、そしてメイドのシンシアとやりあっている時の楽しそうな笑顔……

 うん、あの子絶対いい子だよ。

 さらにあの気品! 前世のハーレムにも名家のお嬢様達は大勢いたけど、あそこまでの高貴さを持つ子はいなかった――あれこそがまさに本物の貴族令嬢というものなのね。


……そんな高貴な女の子と恋人同士になれたら、私の腕の中でどんな顔を見せてくれるのだろうか――楽しみでしょうがない。

 私はくるりと振り返り彼女と目が合うと、微笑みかけながらひらひらと手を振った。


「っ……!?」


 予想外だったのか、クラリッサはボッと頬を染めると慌てて教科書で顔を隠してしまった。

 かーわいーい。


 これからの学生生活でまず1つ目標を見つけたことに頬を緩ませていると、教室の扉が開いて先生が入ってきた。

 彼女はカツカツとパンプスを鳴らし教壇まで歩いていくと、


「えーっと、入学おめでとうございます。これから3年間、このクラスの担当をするアリーゼ・アントロープです。専門は基礎魔法学、アリーゼ先生って呼んでくださいね」


 鈴を転がすような声で自己紹介をした。


……おお、これはなかなか……

 ふわふわっとしたブラウンの髪にこれまた柔らかい印象の目が印象的で、綺麗な大学のお姉さんって感じの女性だ。胸もなかなかにお見事でいらっしゃる。

 眼福眼福……じいっと上から下まで眺めていると、アリーゼ先生が落ち着いた口調で話し出す。


「今日は午後から入学式がありましたので、あとは今後の流れをざっと説明して本日は終了です。まずはこの学校で学べる科目ですが、魔法生命学、魔法工学、魔法薬学、基礎魔法学、魔法スポーツとなっていますね。これを2年間まず一通り学んでもらいます」


 この辺りはエメリアに聞いた通りみたいね。


「で、それぞれの簡単な説明ですが、まず魔法生命学、これは動物や植物、人間など、様々な生命に関連した科目ですね、具体的には医療とか畜産、農業に関わってきます」


 ふむふむ、これがエメリアの言ってたやつね、なんかエメリア、目をキラキラさせながら聞いているし。

 

「次に魔法工学、これは様々な魔道具を生み出すための科目で、魔法薬学は文字通り魔法薬全般に関わってきます。こちらは魔法生命学と関りが深いですね。魔法スポーツは……魔力を使ったスポーツを教えてるんじゃないですかね」


 ん?なんか魔法スポーツのとこ、微妙にトゲがあったような……

 そして、と前置きして、


「基礎魔法学! これは文字通り魔法の基礎となることを勉強します! いかに魔力を効率的に練り上げられるか、魔力容量を増やすか、体を強化できるか等々ですね。これがうまくいかないと他の魔法学もうまくいかない、まさに基本中の基本なんですよっ」


 やや興奮気味にしゃべるアリーゼ先生。やっぱり専門だからだろうか、ちょっと意外だけど。


「というわけで、最初の方は基礎魔法学中心の授業になりますね、もちろん基礎は大事なので卒業までみっちり教えますよ」


 そしてぐるっと教室全体を見回す。


「では何か質問はありますか?」

「はいっ!!」


 良く通る元気な声と共に勢いよく手を挙げたのは、前の方の席に座るややボーイッシュな感じの子だった。

 手を挙げた拍子にふわりと揺れたポニーテールが可愛らしく、制服の上からでも引き締まったいい体をしているのがわかる。たぶんスポーツを熱心にしている子なのだろう。


「はい、ではルカさん、どうぞ」

「アリーゼ先生! 彼女はいるんですか!?」

「ええっ!?」


 いきなり無関係なのぶっこむなぁ~~ぐっじょぶよ。

 それにしても彼女はいるのか、と、それくらい女同士が当たり前なんだなぁと実感する。……いいところだなぁここ。


「え、ええと、そのっ……」

「教えてー!」

「聞きたーい!」


 この辺まさに女子高のノリよね。もちろん私も聞きたいけど。


「い、今はいません……っ」

「じゃあ私なんてどうですか? 自分でいうのもなんですが、将来有望ですよっ」

「も、もう……先生をからかっちゃいけませんよっ」


 ぐいぐい行くわねこの子。でも嫌いじゃないわそういうの。

――先生はなんとかルカをあしらい、その後いくつかのやり取りがあって今日の授業が終わった。

 放課後になったしどうしようかなと考えていたら、エメリアが声をかけてきた。


「お嬢様、お疲れ様でした。ではお部屋に参りましょうか」

「え、ああそうね」


 2人でこれから過ごすことになる寮に向かう。部屋は2人部屋で、エメリアが家に仕えていることもあって同室にしてもらったのだ。


「どうですか?学院の印象は?」

「ん~そうねぇ、まだ来たばっかりでなんとも、ただ結構楽しそうなところね。面白そうな子もいたし」

「クラリッサ様や、ルカさんのことですか?」

「そうね、あとメイドのシンシア。先生もいい人みたいね……エメリアは? 楽しめそう?」

「えっ、あっ、はい。私もこれから楽しみで……でも」

「ん?」

「私はお嬢様と隣の席になれたのが一番嬉しかったです……」


 きゅっと袖を摘まんでくる。

 ああぁもう可愛いなぁ! もう! もうっっっ!!


 寮に向かう廊下の途中で人目もいっぱいあったので、頭を撫でてあげるだけにしておくけど、ほんとはぎゅっとしてあげたい。早く部屋に着かないかな。


「えへへ……」


 目を細めながら、私にぴたっと寄り添ってくる。これくらいなら周りもそこまで注目しないだろう。

 廊下はわいわいと賑やかではあったけど、不思議と私達2人だけで歩いているような心地がした。

 そして長いようなあっという間のような廊下を抜けて部屋に入った私は、


「エメリアっ……」

「あ……っ」


 彼女をぎゅっとしてあげた。


――そっと目は閉じてくるし、いい匂いはするし、むにゅりと押し付けられたお胸の感触は堪らないしで、ベッドに押し倒したくなるのをこらえるのは物凄~く大変だった……


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