第04話 はしたないですっ……
学園に向かう馬車に揺られながら、私はこれからのことに思いを馳せていた。
なんの因果かはわからないが、こうしてまた女学園に通うことになったのだ。せっかくだから楽しまねば!
というわけで――
「……いやぁ絶景ねぇ」
窓の外には見たこともないような、異国情緒あふれる田園地帯が広がっている。
だが私はそれには目もくれずに、向かいの席に座るエメリアのミニスカート――本来の制服はロングスカートだったけど、折り返してミニスカートにしてある――からのぞく、しなやかで美しい生足を眺めて楽しんでいた。
下着が見えないように足を閉じ、短さを気にしてぎゅっとスカートのすそを掴んでプルプルと手が震えている姿もまた愛らしい。
「これなら旅路も全く退屈しないわ――むしろいつまででも見ていたいくらいよ」
私の視線を感じてもじもじとするエメリア。やっぱり女子高生はミニよね! 高校じゃないけど。
「ああっ……あまり見ないでくださいっ……恥ずかしいですっ……」
こんな長さなんてはしたないと真っ赤になっていやいやをしたけど、「馬車の中だけでいいから!」「私だけしか見ないから!」「私もするから!」「可愛いわよ!」とどうにかこうにか拝み倒してミニにしてもらった。
現代で女子高校だった私には当たり前の長さだけどね。
それでも普段は地味なロングのメイド服で、生足なんて晒したこともないエメリアである。これだけでも物凄~く恥ずかしいらしい。
「あら。こんな可愛いエメリアを見るなだなんて、酷なことを言うのね」
「か、かわ……も、もう……おからかいになって……」
「からかってなんかいないわ。本気よ? こんな可愛いミニスカートのエメリアを見れるのは今この世界で私だけ……なんて贅沢なのかしら」
「はうっ……」
2度も可愛いと言われ、一層真っ赤になってしまうエメリア。もう耳まで真っ赤だ。
「ういやつういやつ」
靴と靴下を脱いで、その足でエメリアのふくらはぎ辺りをすりすりとさすり上げる。生足の感触がたまらない。
「ふあっ……あっ……」
私の足で撫でまわされるたび、ピクッと震えて甘い吐息を漏らす。
そして私はピタリと閉じた2本の足をこじ開けるように足を差し入れ、くるぶしからふくらはぎへと上にゆっくり上げていき――
「あっ!ダメッ、それ以上はっ……!!」
――膝に達したところですっと足を引き抜いた。
「ふふっ冗談よ、冗談」
だってこれ以上やってたら、馬車の中だというのに押し倒したくなってしまうもの。
さすがにそれはまだ早い。出会ってまだ数時間しかたってないし、もっとじっくり相手のことを知ってからの方がこういうことは楽しいと決まっているのだ。
「も、もう……はしたないですっ……」
火照った顔に汗をにじませ、やや荒い息を吐きながらエメリアがむくれる。
とは言いつつも私は、はしたないと抗議するエメリアがその視線を私の足にちらちらと向けていることに気付いていた。
気付かれないようにしているつもりなのだろうが、その熱っぽい視線ではバレバレである。
「んっ……と……」
試しにわざと足を組み替えてあげると、キャッっと声をあげ、慌てて目を逸らすけど、しばらくするとまた視線は戻ってくる。私の生足から目が離せないらしい。
う~ん楽しい。意外とむっつりねこの子。からかいがいがあるというものだ。
――とはいえ遊んでばかりもいられない。学園に着くまでにできるだけ情報収集もしないといけないのだ。
日記は持ってきたけど、私はこの世界のことはまだほとんど知らないのだから。
ピンクな空気を換えるために一つ咳払いをする。
「え~っと、ユリティウス学園ってどんなこと教えてるんだっけ?」
「もう……あ、アンリエッタ、推薦だからってろくに調べてなかったですもんね……いいですか? ユリティウスは3年制の学校で、主に魔法生命学、魔法工学、魔法薬学、基礎魔法学、魔法スポーツを教えています」
若干あきれ顔だけど、真面目な雰囲気になったことに安堵したような、少し残念なような感じが伝わってくる。
「ふうん、色々あるのねぇ、でもなんか最後だけ異色なような……」
「それはあれです。魔法スポーツで活躍を目指す学生が入ってくるんですね。強いんですよ、ユリティウス」
魔法スポーツ、どんなんだろう? 火の玉を打ち合ったり、ほうきで競争したりするんだろうか。
「2年生まではまんべんなく勉強していって、3年で自分の興味がある専攻を決める感じですね。スポーツ希望の学生だけは基本的にスポーツばっかりやってますけど」
聞いた感じ高校より大学の方が近いような感じみたいね、どうにも。
「専攻か……エメリアは何かもう希望はあったりするの?」
「私はやっぱり……魔法生命学ですね」
「なんで?」
「え!? いや、ほらそれはあの……」
なにかまずいことを言ったかのようにエメリアが慌てる。これは怪しい。追求せねばなるまい。
「教えて教えて? 知りたいな~」
「え、えっと、でも……」
しばらく押し問答を続けて、ついに根負けしたのか長い息を1つはきながらチラと私の方を見る。
「……女の子同士で赤ちゃんが作れるようになったのも、魔法生命学の発達のおかげですから……やっぱり一番興味があります……」
顔から湯気を噴き上げながら、消えいるような声でつぶやいた。
……は? ……今なんて言った? 女の子同士で? 赤ちゃん!? マジで!!??
…………魔法ってすごい、心からそう思った。




