第31話 この展開。天国かな?
「あ~でもやる気と言えばさ、ご褒美とかあったらもっと頑張れるのにね」
ルカがぐでーっとしながら私にもたれかかる。
「ご褒美、ですか? 例えばどんな?」
エメリアが首をかしげて、「そうだなぁ……」とルカがしばし考える。そして何か思いついたように、顔がパッと明るくなった。
「あ、じゃあ、アンリ、私アンリからのご褒美欲しい! ご褒美出るなら私、超がんばるよ!!」
私があげるのか。いやまぁいいけど。
「え、例えばどんな?」
「ん~そうだなぁ、じゃあ私が全教科の赤点回避したら~」
「ハードル低すぎませんこと?」
クラリッサからのツッコミ。まぁもっともではあるけど、ルカの成績考えたらまずまずの目標でもある。
「いいんだよ! これでも私的には結構きついんだから!」
「はぁ……あとでお勉強見てあげますわ」
こういうところがクラリッサのいいところである。ところでご褒美はなんだろう。
「じゃあ改めて」とゴホンと咳ばらいをして、ルカが切り出した。
「私が全教科の赤点回避したら、あ、アンリに……またキス、して欲しいっ……」
キス!? え、いやでも、またというか。
「ルカさんっ!! またと言いますけど、あれはルカさんからの不意打ちですよね!?」
「そうですわ!! あれは抜け駆けというんですのよ!! わたくし忘れていませんからね!?」
案の定エメリアとクラリッサから待ったがかかる。
「いや、だからこそ、今度はアンリからして欲しいな~って、だって1回するのも2回するのも同じでしょ? あれ? そういえば1回もしてない子もいるんだっけ?」
煽る煽る。ふふん、と2人を焚きつけるような顔をしているし。
「うっぎぎぎぎ……」「ぐぬっぬぬぬ……」と、2人が歯ぎしりしているし。
「お嬢様!! じゃあ私もご褒美欲しいです!! 私が全部平均点以上取ったらご褒美下さいっ!!」
その勝負買った! とばかりにエメリアも参戦してきた。ルカにだけリードを許すわけにはいかないという目をしている。
平均点以上とはなかなかハードルを上げてきたものだ。
「いいけど、エメリアもキス?」
「ふぇっ……!? え、いや、そ、それは、そのっ……!! ま、まだ心の準備ができてないと言いますか、そこまではっ、えっと……」
「ヘタレですねぇ~エメリアは」
「うっさいですよっ」
抱きつかれたままのシンシアにエメリアがデコピンをかました。「ぴゃんっ」って変な声を出していたけど、それでも離れる気はないらしい。
「…………お、おでこにちゅーして、そのあとまた舐めて欲しいんですっ……」
あれか。すごい喜んでたもんねぇエメリア。
「うわぁ~何かヘンタイちっくなお願いですね~。でも大丈夫ですよ~。私はエメリアがヘンタイでも友達ですから――ぴゃうっ」
またデコピンされたシンシアから再び変な声が出る。
「いたたた……では私も平均点超えたらご褒美をおねがいしますかね~」
「え、シンシアも私からご褒美欲しいの?」
「私は貰えるものは貰っておく主義ですので」
「こういうちゃっかりした子なんですの……まぁそこも可愛いんですけど」
隙あらば惚気てくるわね、この主従。
「では~う~ん…………あ、じゃあ、首筋に噛みあとが付くくらい噛んでください」
ぶーーっ! っとクラリッサがお茶を吹きだす。
「な、なんてこと言いますの!? そんなハレンチな子に育てた覚えはないですわよ!?」
「だってわたし、こういう俺様っぽいの憧れるお年頃なので」
俺様系なんだろうか、それ。なんか違う気がする。というかこの世界にもその概念あるのか。
「それに、私アンリエッタ様の事けっこう好きですから。お嬢様の次くらいですけど」
「そうなんですの!?」
「そうなの!? シンシア!?」
クラリッサとエメリアが驚く。私も驚いた。
「あ、エメリアはその次ですね~ルカさんはさらにその次です」
「その順位なのは喜ぶべきなのかどうなのか……」
ルカが判断に迷っている。エメリアはちょっと照れてた。
そしてシンシアがニィッと笑う。あ、なんだろこのイヤな予感。
「……それに、好きでもないと2人っきりで体育用具室に付いて行きませんよ。ましてやあんなことまでするなんて、とてもとても」
今度は私とエメリア、それにルカがお茶を吹きだした。いきなり爆弾投下するのやめて!
「お嬢様!?!? 私というものがありながらどういうことですか!?」
「アンリ!! どういうこと!?」
2人が詰め寄ってくる。これはまずい、弁解しなければ――
「アンリエッタったら、この子を体育用具室に連れ込んで、いかがわしい服を着せて、いかがわしいポーズをさせて写し絵を取ってましたの。ハレンチですわ、まったく」
おいいいいぃぃ!? 誤解だって説明したよね!? さては根に持ってるな、こいつ!?
「お嬢様……?」
「アンリ……?」
ひぃぃぃぃぃ!! 目がマジだ!! 怖いぃぃ!!
「ち、違う!! 誤解なの!! 仕立屋の店長さんから新作を貰って、それでたまたま会ったシンシアに試着してもらってただけなの!! 写し絵も店長から頼まれて!! そうよね!? クラリッサ!?」
ウソである。写し絵とか頼まれてないし、純粋に私の欲望からの行動なのだ。
「さて、どうだったかしら……」
「説明したでしょぉぉぉ!? ほ、ほらこれ!!これが証拠!!」
私は大慌てで証拠の品であるブルマと写し絵を提出する。だが逆効果だった。
「こ、こんないかがわしい下着を着せて……!! お嬢様のえっち!! 言ってくれれば私が着ましたのに!!」
「それ下着じゃないの!! ブルマって言う運動着なの!! 断じて下着じゃないのぉ!!」
あ、でも着てくれるのね。それは嬉しい。こんど着てもらおうと考えていると、ルカが私をじっと見ているのに気が付いた。
「……ねぇアンリ、私がこれ着てるとこ、見たい?」
「えっ? いやそれは見たいけど……」
「じゃあ着る!」
え、着てくれるの? いいの?
「だって運動着なんでしょ? すっごく動きやすそうじゃん! それに普段着てるあのダサい運動着より断然可愛いし!」
あれがダサいってのはこっちの世界でも共通認識だったのか。いわゆる芋ジャージ的なモノだしなぁ。
「で、でしょ~?」
「……ルカさんが着るのなら私も着ます!! 運動着なら恥ずかしくないですし、何よりお嬢様が喜ぶのでしたら!」
どうやら負けず嫌いな性格をしているエメリアの対抗心に火が付いたらしい。ルカ!ナイスよ!
「な、ならわたくしも着てあげてもよろしくてよ? 運動着ですし、別におかしくないですわよね」
えっ? クラリッサまで? マジで?
「じゃあ私も~前に着てますし。運動着ですからね~」
そう言って、全員がブルマに着替えてくれた。何この展開。天国かな? ついでに私も着替えたけど。
「ど、どうですか……? お嬢様っ……ご満足いただけてますか?」
「どうですか~? 私は2回目ですけど~」
「どう? 私のお尻っ。結構いい形でしょ~」
「と、特別なんですからねっ……わたくしのお尻、ありがたく拝むといいですわっ」
エメリアを含め4人が立ったまま振り返って、ブルマに包まれた可愛いお尻を私へ向けてくれている。
赤、紺、赤、紺……今死んでも悔いは無いなぁ。それほどの幸福感を感じながら、私は4人のお尻を見続けた――




