第194話 【個別エンディング ミリーその2】 お母さんだよっ
病院の一室で、私とミリーはそれぞれ赤ちゃんを抱いていた。この双子ちゃんはつい先日、ミリーが産んでくれた我が娘達だ。
「ほ~ら、おばあちゃんですよ~」
「違うからね~、私はお母さんだよ~」
ミリーが抱いた子を私に見せつけながらからかってくる。
「え~? でも、アンリエッタママって戸籍上は私のお母さんでもあるんだよ? という事は、そのお母さんの娘である私が産んだこの子はアンリエッタママの孫にも当たるんじゃない?」
「いや、でもその前にミリーは私の妻だから。だからやっぱり娘でいいんだよ」
「え~そうかなぁ~」
ミリーはくすくすと笑いながら、抱いた子をあやしている。何度も見てきた光景だけど、やっぱりこう、我が子を産んでくれたばかりの妻の姿って言うのは何とも神々しいもので、お母さんになったって感じが体から溢れていてとても美しい。
「ありがとね、ミリー」
「え? 何が?」
「私の子供を産んでくれて」
「それはこちらこそだよ、ママ」
いたずらっぽい目をしながら、ミリーはいまだに効果抜群の呼び方をぶつけてくる。その呼び方されると、この子が私の娘だって事実を突きつけられてその……ドキドキしちゃうのよね。
「いや、だからママはそろそろ……ね?」
「だぁめっ、だってこう呼ばれた時のママ、すっごく可愛いんだもん」
「むぐぐぐ」
「それにぃ、ママもママって呼ばれるの実は結構好きでしょ?」
「そ、そうだけどさ……その、私にも世間体ってものがね?」
だってこの子、入院中にお医者さんや看護婦さんのいる前でも私のことママって呼ぶんだもん! ていうかわざと言ってたよねアレ、絶対。どう考えても私の反応を楽しんでたもん。
「だけど娘と結婚するって、そう多くは無いけどそこまで珍しくもないでしょ?」
そう、そこまで珍しいことでもないって言うのがこの世界の凄いところなんだよね……
入院中に知り合ったママ友さんだけでも、私と同じように結婚相手の娘を嫁にして子供をもうけたって人もいたし、実の母娘で事実婚して子供をもうけた人さえいた。
もうこの世界には多種多様な百合百合が満ちているのである。
「義理の娘との結婚なんてよくあるよくある」
「そ、そうかなぁ」
「だって、これからママはロゼッタとの結婚も控えているんだよ?」
「そうだけどっ……!! それはそうなんだけどっ!!」
ロゼッタって言うのは、アリーゼとテッサの娘で、このミリーの妹のことで、ミリーと婚約する際にまだ赤ちゃんだったロゼッタとの婚約も同時に結んだんだよね。
アリーゼ曰く「私達の中でこの子だけアンリエッタと結婚できないってのも可哀そうよね」って……まったく、見事なものだよほんとに。
そのロゼッタもだいぶ大きくなってきて、ミリー以上にアプローチが積極的なのが最近の悩みの種だ。いや、決して悪い気はしないんだよ? だってロゼッタも母親に似て物凄く可愛いし。
……でも、かなりロリ気味なんだよね……
その超かわいいロリっ子が、自分が可愛いってことを自覚したうえで小悪魔的に私を誘ってくるんだから、私は毎日自制心との戦いを強いられることになり、そのたびに「ルカになってはいけない、ルカになってはいけない」と呪文を呟いて必死に耐えている。
ルカってば我が妻ながら本当にロリコンなんだよねぇ……
「おっす! アンリ! ミリー」
――とか考えていたら病室の扉が開いてそのロリコンルカと、その妻で私の娘でもあるナデシコが入ってきた。
「おっす~」
「ママッ」
私を見つけたナデシコが猛然とした勢いで私に抱きついてきた。気持ちは嬉しいけど、そのお腹はかなり大きくなっており保護魔法で守られているとはいえ少々不安になってしまうほどの勢いだ。
「よしよし、ねぇルカ、ナデシコももうすぐだよね?」
「そ、ミリーとの赤ちゃんを見がてら定期健診にね」
「私、もういっぱい産んでるし慣れたものだよっ」
そう言うナデシコだけどその外見はホムンクルスのため未だにロリロリ体形であり、ギャップがあって実に背徳的である。
「ミリーの赤ちゃん可愛いねぇ~」
「ありがとナデシコっ。私達の娘も絶対に可愛いよっ」
「えへへ~」
ナデシコは頬をかきつつ、その大きなお腹もゆっくりと撫でる。そのお腹にいるのは、私と結婚すると同時にナデシコとも結婚したこのミリーとの子供だ。
「ルカも、ナデシコ独り占めできなくなって寂しいんじゃない?」
「そりゃぁ寂しいけど、私には妻がナデシコを合わせて4人と娘も大勢いるからねっ、全然大丈夫だよっ」
何気に私のハーレムメンバーの中で、一番多くの相手と結婚しているのがルカなんだよね。今更確認するまでもないけれどその相手って言うのは私、クラリッサ、シンシア、そしてナデシコの4人のことで、私以外はどこかしらロリ要素がある。このロリコンめ。
「大丈夫って言われるとちょっと傷つくんだけど~」
「あ、いや、そ、そう言う意味じゃなくてね!?」
「いいもんっ、この子達を産んだらまたミリーと百合子作りするからいいもんっ」
「ええええ!? そんなぁ!? 次は私とって言ってたじゃん!!」
「ふ~んだ」
「なでしこぉ~~~愛してるっ!! 愛してるからぁっ!! だからお願いっ!!」
「ど~しよっかなぁ~」
こらこら、人の病室でいちゃつくのは止めなされ。というかルカ、もうそろそろナデシコとの娘が2ケタ行くと言うのに、もうこっちが恥ずかしくなるくらい未だにラブラブだなっ。
「いいなぁ~。ねぇママ、私も2人を見てたらイチャイチャしたくなっちゃった……」
「み、ミリー……」
「私、もっといっぱいママとの赤ちゃん欲しいなっ……」
いちゃつく2人をみて羨ましくなったのかミリーがじっと上目遣いになって、私を熱っぽい瞳で見つめてくる。これがこの子の必殺技で、何度この目でうんと言わされてきたことか。しかも自分で効果ばっちりだとわかっているのが何ともしたたかなのよね。
しかし今はあかんでしょ、今は。
「誘惑するのはダメよ~。ここは病院だからね」
「でもぉ~」
「退院したら、いっぱい可愛がってあげるから、ね?」
「はぁ~い。我慢しま~す」
「いい子いい子」
私から頭を撫でられたミリーが、嬉しそうに目を細める。こういうところはまだまだ子供だなって思うけど、それでもその腕には私との娘を抱えているという事実とのギャップが何ともたまらないよねっ。
「えへへっ、ママ、今私、最っ高に幸せだよっ」
「私もだよっ」
そして私は腕の赤ちゃんの重みを感じつつ、ミリーと一緒にいる幸せを噛みしめたのだった――