第188話 【個別エンディング ルカ】 私の妻にして娘
「ああっ……ついにこの日が来たんだねっ……!!」
「ルカ、落ち着きなさいまし」
「だってだってっ……!! 待ちきれないよっ……!! どれだけこの日を待ったと思ってるのさっ!!」
ルカは室内をウェディングドレス姿で落ち着きなくうろうろとしていて、そんな姿を列席者の私達が呆れた半分微笑ましさ半分って感じの目で見ている。
そう、今日はこのルカが新たな妻を迎える結婚式の日なのだ。
「いやはや、我が妻ながら本当にロリコンさんですよね~」
「まったくですわっ。このロリコンめっ」
我が子の手を引きながら、シンシアとクラリッサがルカの頬をプニプニつつく。
「いいんだも~ん、好きになった子がたまたまロリだっただけだも~ん」
「いやそれよく言ってるけどルカの場合は完全にただのロリコンだからね?」
ルカは卒業後にクラリッサ、シンシアと相次いで結婚してそれぞれと子供をもうけていた。お胸がロリなクラリッサと、お胸以外がロリなシンシアはルカの好みにジャストフィットしていたらしい。
しかしそうなると私はどうなんだ?
「でも、お嬢様って全然ロリじゃありませんよね?」
「それはそうなんだけどさ」
エメリアからそこを突っ込まれたルカがポリポリと頭をかく。
「こう、アンリはそういうとこを超越して好きって言うか、アンリは私の王子様だから」
「なんか久々に聞いたわそれ」
「だって、私が負けたらヤキュー部の先輩の彼女になるって賭けをしてたときに、私を渡すまいと獅子奮迅の働きをしてくれたんだもん。そりゃ惚れるよね」
「あ~そう言えばそんなこともあったねぇ」
その時にルカからキスされて、それがこの世界でのファーストキスだったんだっけか? 実に懐かしい話だ。
「そんなアンリの娘と、今日結婚できるんだもん……!! もう嬉しくって嬉しくって」
――そうなのだ、ルカが誰と結婚するかというと……私の娘であるナデシコとなのである。本当はルカ的にはもっと早く結婚したかったらしいんだけど、ナデシコが十分成長するまで待ったと言うわけだ。
とは言ってもホムンクルスだから見た目的にはそこまで大きくなっておらず、そこがまたたまらないと真正のロリコンであるルカはのたまっていた。このロリコンめ!
「しかしルカも嫁が4人かぁ……よく魔力容量足りたね」
4人というのは、私、クラリッサ、シンシア、そしてナデシコで、嫁を新たに迎えるにはそれ相応の魔力量が必要となり、それが4人ともなれば相当なものなのである。
「私も一応ユリティウスを卒業した魔術師なんだけど……」
ルカが言う通り、この世界においてユリティウスを卒業したと言うのはそれだけで1流の証とも言えるのだ、だが……
「いや、なんかこう、ルカって脳筋って感じでどうにもそっちの印象がね……」
「ひっどーい! ちゃんとプロでも活躍してるのにぃ!」
その言葉通り、ルカの所属するヤキューチームは毎年優勝争いの常連であり、それにはルカの働きあってのことというのは誰もが認めるところである。
「あ、そう言えばさ、私アンリの妻なわけじゃん?」
「うん」
「でも、今日アンリの娘のナデシコとも結婚するわけで……こうなると私、アンリの妻なの? 娘なの?」
う~ん、確かに、そう言われるとなかなか複雑なことになっているなぁ。自分の妻が自分の娘と結婚するなんて体験、そうそうした人はいないだろう。
いや、そうそういてたまるかって話だけど。
「じゃあ、私のこと今日からママって呼んでもいいよ?」
「アンリママっ!」
ノリがいいなぁおい。
「えへへ。なんかこう、これはこれで興奮するよね」
「そこになおれヘンタイ」
ルカはどうしてこうなったのか。出会った頃はボーイッシュなスポーツ少女だったと思うんだけど何がどうなってこんなロリコンのヘンタイに……
まぁ私の可愛い妻であることには疑問を挟む余地もないんだけど。
そうこうしていると、ドアがノックされて――
「えへへ、来ちゃった」
「おっ、ナデシコ」
――開いた扉からナデシコが姿を現した。
そのナデシコのウエディングドレス姿は美しい……というよりはやっぱりどう見ても可愛い系でまだまだ幼い、いかにもルカ好みの女の子って感じだ。
いや、シスターノーラとかを嫁にした私が言えた話じゃないけど、それにしたってつくづくロリコンねぇこいつ。
「ナデシコーーーー!!」
そんなウエディングドレス姿のナデシコに興奮したのか、ルカがナデシコに飛びつこうとしたところを、
「はい、おさわりはまだよ~」
と襟首をつかんで止める。
「ええええええ!? 私の花嫁なんだよ!?」
「まだだぁめ、ちゃんと式を挙げてからにしなさい。ただでさえまだ早いかなって思ってるくらいなんだから」
ルカはナデシコがもっと小さいころから「嫁にしたい嫁にしたい。キスしていい?」ってロリコン的発言をしていたんだけど、私は母親としてそれを断固として認めてこなかったのだ。
だって絵面的にアカンでしょ? さっき出てきたシスターノーラは見た目こそアカンものの、実年齢は立派な成人女性だ。
それに対して我が娘ナデシコは見た目も幼ければ実年齢はさらに幼い。だってルカ、まだ2歳とかのナデシコにはぁはぁしてるんだもん。やべーってものじゃない。
なので、ナデシコがある程度大きくなるまで一切手を出さないって契約させて、それが守れたら結婚してもいいことにして――それを見事に果たして今日に至ると言うわけである。
いや、ほんとよく我慢したねルカ。
「うううう~っ」
「ほらほら、もう少しだけ我慢よ? 式のクライマックスでキスするんだからそれまで待ちなさい」
「む、むぅぅぅ……まぁこれまで我慢したんだし、あと少しだよねっ、うん」
「そうそう、頑張れ頑張れ」
花嫁にキスをしたくてたまらないって感じのルカを「どうどう」となだめる。まぁ今となってはキス位させてあげてもいい気もするけど、私の娘を貰っていくのだから母親としてちょっとくらいいじわるしても許されるだろう。
「ああっ……早くナデシコとの子供が欲しいなぁ~」
そんな私の内心をよそに、可愛らしいナデシコの姿を見ながらうっとりした感じで自分のお腹を撫でるルカに、私達妻は若干引いた。
「そ、そっちなんですのね……」
「我が妻ながら何と言うか……」
「ルカらしいけどねぇ……」
数年前から首尾一貫してるのはある意味あっぱれである。しかし……
「でも心配だな~。私達とルカの娘もロリコンになるんだろうか……」
「大丈夫だって、ロリコンじゃなくて好きになった子がたまたま――」
「それは聞き飽きたぞ、ルカよ」
そして私の愛しい妻であるルカは、愛しい私の娘を嫁にして今日この日、私の娘にもなったのだった――