第163話 改めてなかなかに感慨深いものがある
「こ、コーデリア殿下……!?!? なぜここにいらっしゃるのですか!?」
案の定というか、帰省時の恒例となっている顔合わせの際に、一目見て王族の姫だと気が付いた母親達が仰天する。
帰ってくるたび嫁が増えている私にすっかり慣れ切っていたところへの不意打ちは相当効いたらしく、今まで見たことないほどの慌てぶりだった。
うむ、ドッキリ大成功である。
「いかにも、コーデリアである」
学園を離れたものの、コーデリアは姫としてではなくあくまでも一学生として――なかなか慣れないようではあるけれど――振舞っている。
しかしながらその風格は流石のもので、やっぱりお姫様なんだなと改めて認識するのに十分なほどだった。
「え、ええと……アンリエッタ? コーデリア殿下がこちらにいらっしゃるということは、つまり、その……まさか……」
「あ、うん、そういうこと」
私がこくりと頷くと、母親達は改めて驚愕した。
「なんとまぁ……まさか王女殿下まで……」
「我が子ながら恐ろしいですね……一体何がどうなっているんです?」
目を見開いている母親達をしり目に、コーデリアはカラカラと笑う。
「まぁ端的に言うとじゃな、姉上……女王陛下の百合ハーレムに入って姉上の子を産むのがわらわの役目じゃったんじゃが、それよりも燃えるような恋とやらをしてみたくての。それで噂のアンリエッタ……先輩に会いに行ったんじゃ」
そういえば噂っていったいどんなものなんだろうね。ちょっと気になるんだけど……
「天下のユリティウスで歴史上稀に見るほどのハーレムを作っていると聞いておったしの、その者となら燃えるような恋を経験できるのではないかと思ってな」
すでにコーデリアには結婚を誓い合った幼馴染専属メイドのディアナがいるけれど、それは燃えるような恋というよりずっと一緒にいたからこその穏やかな愛であって、それはそれとしていいもののまた違った経験もこのお姫様はして見たかったらしい。
「それで、ユリティウスに……?」
「うむ、試験はまぁまぁ大変じゃったがの」
母親からの問いにコーデリアは笑顔で答えているけど、ユリティウスの中途入学は半端な難易度ではない。それを平然とまぁまぁなんて言うあたり流石は魔法王国の姫だけのことはある。
「それで噂のアンリエッタ先輩に会いに行ったらの? ……その」
「コーデリア?」
コーデリアはモジモジとしながら私の腕をぎゅっと抱きしめた。
「…………一目惚れ、してしもうての」
かーーわーーいーーいーーーー!!
何この可愛いの! 嫁にしたい! いや、もう未来の嫁だった。
「初めてじゃったぞ、会って即、「この者の子が欲しい」なんて思ったのは」
い、いやぁその、12歳の女の子からそんなこと言われると、すっごく照れると言うか背徳感満載というか……
いや、まだ手は出していないからセーフ!!
「ま、まだ何もないからね!!」
「わらわとしては、直ぐにでもわらわを食べて欲しかったんじゃがのう」
「そ、そうは言っても……」
だってこんな小さい子、倫理的にアウトでしょ。それはあかんて。
「それに、わらわが先輩に会いに来なければ、わらわは今頃姉上に抱かれて子を宿しておったと思うぞ? 姉上のことは好きじゃがの」
改めて聞くとホント凄まじいね。実の姉のハーレムに入ってその姉の子を産むとか、異世界万歳よまさに。
「まぁそういうわけでの、先輩とは学生恋愛を楽しんで、その後に嫁にして貰うという事になったのじゃ」
「そ、そういうわけなんですよ」
そうして何年かすれば、私の罪悪感も多少は薄れるだろう。少なくとも今はあかんて。
「はぁ~~」
説明されてもまだ呆然としている母親達である。無理もないけど。
「で、このわらわの愛しのメイドであるディアナも一緒に嫁にして貰うことになっておっての」
コーデリアはそう言いながら手にしていたリードをくいと引くと、それが繋がった先のディアナが嬉しそうにニッコリとほほ笑んだ。
「はい、私もアンリエッタ様のものにしていただきます」
「その前にわらわが頂くんじゃがの!!」
それだけは私に渡さないとばかりに、コーデリアが主張する。
「そうは言いますけど殿下、未だに私にお手をお出しになって下さらないじゃありませんか~」
「うっ、ま、まぁその、なんじゃ……わらわもそういうこと未経験じゃからの……自分からはなかなか、の」
「私からして差し上げましょうかとも言ったのに……まぁ私も未経験ですけど」
「いやじゃ!! あくまでわらわからしたいんじゃ!!」
キマシタワーなケンカを繰り広げる2人である、いいぞ、もっとやれ。
「……ごほん、まぁそういうわけでの、将来的にアンリエッタ先輩の嫁となるわけじゃ、よろしく頼む」
そう言いながらわざとらしく咳払いをした後、コーデリアは母親達に対してニコッとほほ笑んだ。
「ええ、ええ、こちらこそよろしくお願いいたします」
まだ混乱している風ではあったけど、どうにか返答を返す母親達だった。
「それで、その……アンリエッタ? その子は……」
母は話題を変えようとしたのか、さっきから気にしている様子でもあった新顔のメイドの子のことに話を振った。その子とはエメリアの妹、サリッサである。
「ああ、えっと、エメリアの妹のサリッサよ」
「そうよね、前に一度会ったことがあるし……え、でもここにいるって言う事はその子も?」
「はい、アンリエッタ様のお嫁にしていただきましたっ」
元気な声でサリッサが答える。
「まぁまぁ、ほんとエメリアそっくりねぇ」
「よく言われます」
にこやかに笑いながらサリッサが返す。
確かに外見はもの凄く似ているけど、中身はだいぶ違う。というか伊達にずっと姉に百合子作りを迫っていただけのことはあって、真正のシスコンである。
私が夜に部屋に招くときは必ず姉と一緒がいいとお願いしてきて、終わった後は「アンリエッタ様のお嫁になれて私本当に幸せです」っていつも言っていた。
どんだけ姉が好きなんだこの子。まぁでも結果的に半分は望みを叶えたわけだしなぁ。やるものである。
「もうアンリエッタ様のお子も頂戴したんですよっ」
「まぁまぁ、それはそれは素晴らしいわねっ。元気な娘を産んで頂戴ね」
「もちろんですっ」
腕まくりをして、サリッサはグッとポーズを決める。意外とお茶目な子なのである。この辺も真面目なエメリアと違う点だ。
「でも、一番に私の子を宿してくれたのはエメリアだけどね」
「えへへ~」
私はそう言いながら隣のエメリアの頭を撫でる。エメリアはもうさっきからずっと幸せそうに自分のお腹を撫でていた。
「で、結局何人と百合子作りしたの?」
「13人です」
「じゅ……!?」
予想はしていただろうけどそれでもとんでもない数だったのか、両親は再度仰天する。いやそりゃそうよね、私でも凄い数だと思うし。
「前の帰省時に紹介した9人の彼女達に、新たに加わった彼女達の中から今年卒業予定の子が3人、そしてこのサリッサで計13人です」
「なんともはや……」
「凄いですね……」
ほとんど呆れるような口調だ、無理もないけど。
しかし卒業時には私は大勢の子の母親になるんだなぁと思うと、改めてなかなかに感慨深いものがあるのだった――
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